#75 二日目のお風呂、仲睦まじい母娘(?)

 それからみまちゃんが起きて、先生が色々としてくれたのかみまちゃんの分のご飯も用意してもらいまして、みんなでご飯を食べました。

 ちなみに、二日目の夜ご飯は各部屋で食べることになっています。

 なので、みまちゃんが一緒の所は見られてないです。


 そして、夜ご飯を食べた後と言えば……。


「おかーさん、おふろ」


 当然、お風呂の問題があるわけで……しかも、みまちゃんはお風呂に入りたがっていて……その上一緒に入る気満々。

 僕のことをおかーさんだと思ってる以上、仕方ないとは思うんだけど……う、うーん……。


「椎菜ちゃん、さすがに今日は逃げられないよ?」

「で、デスヨネー……」

「おかーさん、おふろ……や?」

「あ、う、ううん、嫌じゃない、んだけど…………うぅっ! み、みまちゃんのためならっ……! い、一緒に入ろっか……!」

「わぁい」


 うぅ、恥ずかしいし罪悪感はあるけど……み、みまちゃんのために、我慢……というか、慣れなければ……!


「椎菜ちー、もしかして既に子煩悩化してる……?」

「え、早くない? まあでも、みまちゃん可愛いし、わからないでもないけど……」

「けど、あれで椎菜ちゃんが女湯に入ることに慣れてくれればいいよね」

「「たしかに」」


 と、とりあえず、お風呂、行かないと……。



「~~~♪」

「みまちゃん、嬉しそうだね?」

「……おかーさんといっしょなら、どこでも、うれしい」

「そ、そっかっ」


 うぅ、小さく笑みを浮かべながらそう言われると、なんだかこう、妙な気分に……。

 けど、可愛い……。

 あと、僕と一緒ならどこでも嬉しい、というのは言われてるこっちが嬉しくなりそう……というかなってます。

 可愛いです。


 けど、みまちゃんのお着替えどうしよう……あ、たしか子供サイズの浴衣があったはずだし、とりあえずそれでいい、よね。

 うん、それでいこう。


 と、そうしているうちにお風呂に到着。

 昨日とは違って、みまちゃんがいる関係上逃げられない……だから行かなきゃいけないわけだけど……うぅ、それでも自分から入るのは恥ずかしいよぉ……。


「椎菜ちゃん、早く入らないと。ほら、みまちゃんがすっごいキラキラした目を向けてるよ?」

「あぅっ! うぅ~~~~! じゃ、じゃあ、いきますっ!」

「いやそんな死地に向かうような意気込みで言わなくても」


 僕にはそれくらいのことなんです! 瑠璃ちゃん!

 けど、さすがにずっとそうしているわけにもいかないので、僕は、意を決して、ええいっ! と扉を開けて中に。

 そこには、当然服を脱いでいる女の子がいるわけでっ……あぅぅ~~~! やっぱり罪悪感がぁ~~~っ!


「あれ? あ、椎菜ちゃん! そう言えば昨日は来なかったけどどうした…………の?」

「え、なになに? 椎菜ちゃん来たの? って、え?」

「どーしたーん……はい?」

「……?」


 僕が来たことを知るなり、女の子たちがどこか楽しそうな表情でこちらへ来て……それで僕に抱き着いたままのみまちゃんを見るなり、表情が固まりました。

 その視線はみまちゃんに向けられていて、みまちゃんはその光景がよくわかっておらず、こてんと小首をかしげていました。


「「「何その可愛い女の子!!!???」」」


 そして、爆発したかのように、みまちゃんを見た女の子たちが声を揃えてそう言いました。


「あ、あー、え、えっと、この娘は……」

「……おかーさん、この人たち、だぁれ?」

「「「おかーさん!!!???」」」

「え、えーっと、僕が通ってる学校の同じ学年の人……つまり、同い年の人、かなぁ」

「……なる、ほど。じゃあ、みまから見たら、おねーさん?」

「うん、そうだね」

「神薙、みま、です……よろしくおねがいします……!」


 一度僕から離れると、みまちゃんはとてとてと集まってる女の子たちの前に歩いて行き、自己紹介をしながら可愛らしくぺこり、と頭を下げました。


「「「アッ―――!」」」


 バターンっ!


「って、ど、どどどどどうしたの!? な、なんでみんな倒れたのぉ!?」

「いや、まあ、そうなるよね……」

「正直、わたしもやられかけたぜぇ……」

「真正面からあれは、ね」


 どうしてこうなったんだろうね……?



 その後、なんとか倒れた人たちを起こして、僕たちもお風呂に。

 幸いなのは、今回はみまちゃんに集中すればいい、ということなわけだけど……それでもみまちゃんは女の子なので……うん……。


「おかーさん、あらってー」

「いいけど……僕でいいの?」

「うん、おかーさんがいい」

「そっか。僕は上手じゃないけど、頑張るね」

「わぁい」


 なんでも素直に喜ぶ姿は、なんと言いますか、大変子供らしくて可愛いと思います。

 正体はよくわからないけど……でも、すごく純粋な女の子で、いい娘みたいだしね。

 うん。おかーさんな理由はよくわからないけど……。


「みまちゃん、どう? 痛くない?」

「んーん、きもちぃ……」

「よかった。あ、目に泡が入ったら痛いからね、ちゃんとぎゅって目を瞑るか、手で隠してね?」

「だいじょーぶ」

「ふふ、そっか」


 どこから来たのかはわからないし、少なくとも耳と尻尾がある以上、人間じゃないとは思うけど……やっぱり、神様とかそっち系の娘なのかなぁ。

 でも、なぜか僕に懐いてるし、一緒に暮らすって約束しちゃった以上、最後まで面倒をみないと、ね。


 …………そう言えば、学校とかどうしよう?

 さすがにこの外見で学校に行ってないのはまずいと思うし……。

 ちょっと訊いてみないと。

 ざばー、とシャンプーを綺麗に洗い流すと、みまちゃんはぷるぷるっ! と頭を振って水を飛ばしていました。


「わぷっ! もぅ、みまちゃん、人が近くにいる時は、そう言うことはしちゃだめだよ? 人に水がかかっちゃうから」

「ごめんなさい」

「うん、ちゃんと謝れてえらいね~」

「えへへぇ……」


 注意をしたらすぐに謝れたので、頭を撫でるとみまちゃんは嬉しそうに笑いました。

 うん、可愛い。


「「「ごふっ……!」」」

「なんだろう? 気のせいかな……?」

「おかーさん……?」

「あ、なんでもないよ~。それじゃあ、リンスをして、体を洗わないとね~」

「うん」


 それからみまちゃんの髪にリンスをして、洗い流してから体を洗って一緒にお風呂に。

 とはいえ、僕もみまちゃんも小さいので、階段に座って浸かることに。


「「はふぅ~~~~……」」


 一緒に温泉に浸かると、揃って同じような声を漏らしました。

 ん~、やっぱり気持ちぃ……。


「おかーさん、やわらかい……」


 僕のお膝に座って僕によりかかるみまちゃんは、気持ちよさそうに呟きました。


「ふあ!?」

「おかーさん、おっぱいおっきい……みまも、おっきくなる?」

「え、あ、あー、それはどう、だろう……?」


 よく考えてみると、僕の体ってよく見るとお母さんよりだけど……みまちゃんも、って聞かれるとなんとも言えない……。


「みまちゃんは、その、おっきくなりたいの?」

「……たぶん?」

「多分って……」

「けど、みまはおかーさんが好きだから、おかーさんみたいに、なりたい……」

「そ、そう、なんだ。なんだか照れちゃうね……」


 正面から好きと言われると、やっぱり気恥ずかしい。


「そう言えば、みまちゃんって何歳なの?」

「……多分、七歳、くらい?」

「くらいなの……?」


 そこははっきりしないんだ……。


「みま、生まれたのはさいきん……でも、ねんれいは、それくらい……」

「そ、そう、なんだ」


 でもそれって……生後間もないって言うことになると思うんだけど……。

 ま、まあ、耳と尻尾が生えてるようなファンタジーな女の子だから、そこは気にしなくてもいい、のかも……?


「じゃあ、文字は書ける?」

「ひらがなと、カタカナなら……? かん字はまだちょっとだけ……」

「なるほど……」


 そうなると、やっぱり小学校に行かせるのがいい、よね……?

 出会ってからのことを思い返してみると、みまちゃんって僕を頼りに来たみたいな感じだったし……。

 多分、お友達もいないと思うし……それに、学園に通ってる間はお家にいることになっちゃうから……。


「みまちゃん、僕のお家に行ったら、学校に通う?」

「がっこう……? みまもがっこうにいけるの……?」

「色々としないといけないことはあると思うけど……」

「……うん、いってみたい」

「それじゃあ、帰ったら色々しないとかなぁ……」


 戸籍とかも無いとは思うしね……。


「椎菜ちゃーん」


 二人でお風呂で寛いでいると、麗奈ちゃんがやってきました。


「あ、麗奈ちゃん。どうしたの?」

「椎菜ちゃんとお話したいなーって。もちろん、みまちゃんとも」

「みまと……?」

「そうそう。みまちゃんはどこから来たのかなーって」


 あ、麗奈ちゃんはみまちゃんのことを訊くために一人だけで来たんだね。

 僕としてもそこは気になっていたから、ありがたいかも。


「どこから…………んと、どこ、だろう?」

「わからないの?」

「……宇迦之御魂大神様がいたことはおぼえてる……でも、どこにいたのかは、わからない……?」

「なるほど……ねぇ、椎菜ちゃん、やっぱりみまちゃんって人じゃない、よね?」

「……そう、だね。えと、昨日僕がお風呂に落っこちちゃった時にお話したこと、憶えてる?」

「うん。たしか、白い狐さんにってやつだよね?」

「うん、それです。どうやら、白い狐さんの正体がみまちゃんだったみたいで……」

「……え、ガチファンタジー?」

「耳と尻尾が生えてる時点でファンタジーだと思うなぁ……」

「それはたしかに……」


 みまちゃん、やっぱり存在がファンタジーなんだけど……だからこそ、


「本当にどうして、僕のことをおかーさんって呼ぶのかがわからない……」

「おかーさんは、おかーさん、だから?」

「あはは……まあ、そうだよねぇ……」


 みまちゃん、本当に幼い感じだし、言ってもわからない、よね。

 うーん、だからこそ気になるわけで……でも、あれかな。美月市に戻ったら、あの手紙がまた届くかもしれないし……むしろ、それじゃないとみまちゃんがどういう娘なのかわからなくなるので……お願いしますっ! 推定神様っ! みまちゃんのことを教えてくださいっ……!


「椎菜ちゃん、なんでそんなに祈ってるの……?」

「……い、色々、ね」

「そう? それにしても……見れば見るほど、みたまちゃんと似てるよね……?」

「そうだね……名前も一文字抜けてるだけだし……」

「……みたまちゃんと何か関係があるのかな?」

「それはわからないけど……」


 けど、無関係ではなさそう、だよね……。

 うーん、みまちゃんってなんなんだろう……?


「……ところで、椎菜ちゃん」

「あ、うん、なぁに?」

「今目の前にはあたしという裸の女の子がいるわけですが……大丈夫なの?」

「ふぇ…………ふひゃぁ!?」

「ふわっ!」


 麗奈ちゃんに言われるまで気付いていなかった僕は、指摘された瞬間顔が一気に熱くなっていき、気が付くと思わずびっくりして思わず温泉に飛び込んじゃいました。


「あっ、椎菜ちゃん、みまちゃん!?」

「ぷはぁっ!」

「ぷはぁ……」

「あぅぅぅ! す、すっかり忘れてたよぉ~~~~! れ、麗奈ちゃんっ、は、恥ずかしいので、で、出来ればその、こっちを見ないで貰えるとっ……!」

「えー、椎菜ちゃんすっごく綺麗だよ? あと、やっぱり胸がおっきいし」

「ちょ、ちょっと気にしてるんだよぉっ!」

「あはは、でも、こうでもしないと椎菜ちゃんは慣れなさそうだからねー」

「うぅ~~~……」

「おかーさん、どうしたの……?」

「みまちゃんのおかーさんはね、恥ずかしがり屋さんなんだよー」

「そう、なの?」


 麗奈ちゃんに説明されて、みまちゃんは僕のことを見つめながら本当かどうかを訊いて来ました。


「あ、あははは……ちょっとだけ、ね?」

「……おかーさんは、はずかしがりやさん」


 元男だもん……むしろ、この状況で恥ずかしくない、なんて思える人は少ないと思います……。

 僕の他にTS病になっちゃった人は見たことないし……この近辺にはいないみたいだからね……。

 うーん、いつか会ってみたいなぁ、なんて。


「まあでも、まずはあたし一人で慣れよっか!」

「う、うん……ありがとう、麗奈ちゃん」

「いいのいいの! 早く慣れると良いね?」

「そう、だね……あはは……」

「おかーさん、がんばって」

「うん、ありがとう、みまちゃん」


 でも、慣れることが出来るのかなぁ……。

 色々と心配になる僕でした。


 ……ちなみにこの後、お風呂に上がる時にそこら中に赤い何かがいっぱいあったけど……みまちゃんの目を塞いでそのまま温泉から出ました。

 ……だって、すごく安らかな顔で倒れてる人、多かったんだもん……風邪をひかないといいけど……。



 お風呂から上がり、しっかりと体を拭いてからみまちゃんに浴衣を着せてからお部屋へ。

 ちなみに、僕も浴衣です。

 お家だとなにも着ないので寝るので、かなり過ごしやすいんです、浴衣って。

 そうしてお部屋に戻ってくると、


「んん~……ふわぁ~~~……んゅぅ……」


 可愛らしい欠伸をしたあと、くしくしと眠たげな眼を擦っていました。


「眠くなっちゃった?」

「んん~……ねむぃ……」


 そう言うみまちゃんはうつらうつらとしていて、今にも寝ちゃいそうでした。


「じゃあ、早いけどもう寝よっか?」

「うん~……」

「ちょっと待っててねすぐにお布団を敷くからね」


 僕はそう言ってからお布団を取り出して、床に敷きました。

 ただ、四人分しかないので……。


「みまちゃん、僕と一緒のお布団で寝ることになるけど、大丈夫?」

「おかーさんといっしょがいい、から……だい、じょーぶ……」

「うん、ありがとう。じゃあ、おいで」


 僕は先にお布団に入ってから、ぽんぽんとお布団を叩くと、みまちゃんはいそいそとお布団に入って来て……ぎゅっ、と僕に抱き着いて来ました。


「おちつく…………すぅ……すぅ……」

「ふふ、おやすみなさい……」


 僕はすぐに眠っちゃったみまちゃんの頭を撫でると、僕もすぐに夢の世界に落ちて行きました。



「ふぅー、いいお湯だった~、って……んぐっふぅ!?」

「し、椎菜ちー!? どしたん……っておごふっ!」

「二人とも一体何が、ごふっ!」


 椎菜たちが先に部屋に戻ってからしばらくして、麗奈、美咲、瑠璃の三名が部屋に戻って来るなり、三人はその先にあった一つの光景を見た瞬間、吐血した。


「すぅ……すぅ……おかーさん……」

「ん……みまちゃん……すぅ……」


 そこには、みまが椎菜に思いっきり抱き着き、それを椎菜が優しく抱きしめ返し、お互いにすやすやと規則正しい寝息を立てて、安らか~な表情で眠る二人がいた。

 そんなあまりにも尊過ぎる光景を見た三人はとてもいい表情になり、吐血して、そのまま流れるように布団を敷いてから死んだように眠った。

 尚、布団を敷いている時は、全員仏のような表情だったそうな。


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 これを書いている時、「あ、みまの名前、みあにすればよかったっ……!」とちょっと後悔。

 みまよりも、みあの方が可愛くない? みたいな。まあでも、キャラ的には「みま」の方が正しいからなぁ、ってな感じなので、みまのままなんですけどね。

 しかし、半ば勢いで登場させたからなぁ……今後の話が心配だァ……。

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