#66 修学旅行当日、平穏な移動
それから翌日の早朝。
時間は午前四時半。
かなりの早起きだけど、昨日はかなり早く寝たからね、平気です!
……ちょっぴり眠いけど……。
朝ご飯を軽く作って、僕とお姉ちゃんの二人分。
僕は作ったらささっと食べる。
お姉ちゃんの分は、ラップして冷蔵庫の中に入れて、冷蔵庫に『朝ご飯が入ってます! 修学旅行、楽しんでくるね! あ、不摂生はダメだからね!』と書いておいて、僕はお着替えをして、荷物を持って出発!
十月の朝、それも五時台ということもあって、辺りはまだちょっと暗くて肌寒い。
けど、こう言うのって怖いよりもわくわく感の方が勝る気がします。
ちなみに、今の荷物は大き目の肩掛けカバンが一つだけ。
衣類が入った大き目の荷物等は、先に郵送という形で送ってあって、今日の荷物自体はかなり少ないです。
集合場所は東京駅です。
僕は柊君と麗奈ちゃんと一緒に東京駅に行く予定です。
一人で行くのもちょっと寂しいので……。
それに、どうせなら二人と一緒に行きたいもん。
というわけで、待ち合わせ場所の美月駅前に到着すると、そこには僕たちと同じようにお友達と待ち合わせをしている人たちがちらほらと見受けられました。
ただ、眠そうにしている人が多かったかなぁ。
朝早いもんね。
僕は元々寝る時間が早いのでその辺りは問題ないです。
いつもよりちょっと眠いかなぁくらいで済んでるからね。
「えーっと柊君と麗奈ちゃんは……まだ来てない、ね」
どうやら、僕が一番乗りだったみたいです。
とりあえず、ベンチに座って待ってよう。
んっしょ、とベンチに座って一息。
周囲にいる同級生の人たちはみんなわくわくとした、楽しみなことが伺える表情を浮かべています。
やっぱり、学校の行事の中で修学旅行は一番特別な催しだよね。
学校に在籍していて一度しか行かないんだもん。
それに、旅行、だからね。
京都……行くのは二度目だけど、それでも楽しみなことには変わりないです。
なんて、一人今日から三日間滞在することになる京都のことを思っていると、二人が着ました。
「悪い、待たせたか?」
「椎菜ちゃん、待たせちゃった?」
「ううん! 大丈夫! それにしても、二人で来たんだね?」
「あぁ、ばったり出くわしてな。それで」
「うん、丁度いいから一緒に行こーってなったんだよね」
「そっか。じゃあ、僕たちもそろそろ行こっか! 時間に余裕はあるけど、不測の事態があったら大変だもんね」
「だな」
「よーし、しゅっぱーつ!」
東京駅に向けて、僕たちは改札を通って、電車に乗る。
幸いなことに、乗り換えがなくてとても楽です。
あと、早朝だからということもあって、席はガラガラ。
とは言っても人が全くいないわけじゃないんだけど。
それでも、三人とも並んで座れるくらいにはガラガラで、余裕があります。
「とりあえず、椎菜は端だな」
「だね」
「いいの?」
「あぁ。というか……椎菜は小さいからな。混みだしたら色々と大変そうだし」
「だねぇ。ぎゅうぎゅうになっちゃったら大変そう。それに、胸も大きいしね?」
「ふぇ? 胸?」
「……朝霧、椎菜は純粋なんだ。それじゃわからないぞ」
「おっとそうでした! まあ、椎菜ちゃん自身はあまり気にしなさそうというか、何がいいのかわからない! って感じだとは思うけど」
「……まあ、そうなるだろうな」
「???」
二人は何のお話をしてるんだろう?
ちょっと気になるけど……まあ、いっか。
二人はとても仲良しさんだもんね、きっと楽しくおしゃべりをしてるだけだよね!
うんうん、仲良しなのはいいことです!
「それにしても、現地集合ってちょっとやだなー、なんて思ったけど、結構楽しいね?」
「まあ、小学校と中学校の頃は、学校に集合してそのままバスか集団行動で、って感じだったしな」
「そういえばそうだね。小学校の頃は箱根と鎌倉だったよね。中学校は京都だったけど」
「あれ、じゃあ二人は被り?」
「まあ、そうなるな。とはいえ、あそこは何度行ってもいいものだ。というか、関東圏に住んでるとこういう時じゃない限りは行くこともないだろ?」
「そうだね。僕も京都は楽しみ! 神社とかいいよね」
「あはは、椎菜ちゃん結構神社とか好きだよね?」
「うん! よくわからないけど、落ち着くから」
「……まあ、今は推定神様から何か貰ってるしな」
「あ、あははは、そうだね」
多分、小さい頃に助けてもらったのかも、っていう出来事がきっかけだとは思うんだけど。
でも、すごく落ち着くよね、神社って。
なんというか、空気感とか?
神社ってこう、場所によってはすごく澄んだような空気があって、それが一番落ち着く理由になってるのかも。
「ちなみに、椎菜ちゃん的に今回は何が楽しみ? やっぱり、昨日言ってた食べ物?」
「それもあるけど……宿泊場所の旅館の温泉かな!」
「あぁ、そういや前に言ってたな。たしか、肩凝りだったか?」
「うん。どういうわけか、この体になってから肩凝りがすごくて……だから、温泉に浸かれば治るかも! って思って!」
((まあ、その胸じゃなぁ……))
女の人って肩が凝りやすいって聞いたことあるけど、みんなこうなのかなぁ?
それかもしくは、僕がまだこの体に慣れてないからって言うのもあるのかも。
慣れ親しんだあの体じゃないわけだし、いくら二ヶ月以上経ったとは言っても、それでもまだまだ女の子歴としてはすごく短いもん。
男でいた時の方がもっと長いわけで……。
早く慣れるといいなぁ。
……あの苦しみだけは慣れそうにもないけど。
「そういえば、宿泊場所の旅館って、かなり有名な老舗旅館って話だよね? うちの学園ってお金あるんだねぇ」
「あぁ、それに関してはなんでも、学園長がそこの経営者と知り合いらしい。なんでも友人だとか」
「へぇ~、そうなんだ。柊君、よく知ってるね?」
「前にどっかで聞いてな。まあでも、うちの学園長は割と顔が広いらしいし、それが理由で学園祭のビンゴ大会でもかなりの豪華景品が出せたわけらしいし。それに、イベントごとが多いしな」
「んまぁ、お金がある=イベントが多い、って図式で成り立ってるのかもね、姫月学園」
「あはは、そうかもね~」
そんな、他愛のないお話をしながら、電車に揺られること一時間以上。
目的地である東京駅に到着。
そこでは既に先生たちが待機していて、僕たちよりも早く来た人たちが通行人の人たちに邪魔にならないようにお話しているのが見えました。
とりあえず、僕たちも到着したことを田崎先生に報告に。
「おはようございます、田崎先生!」
「「おはようございます!」」
「お、桜木たちか。早いな。まだ時間はあるんだぞ?」
「電車移動は何があるかわからないので」
「はは、いい心掛けだ。よし、三人到着、っと。とりあえず、お前たちは適当に話していていいぞ。どうせ、まだ集まらん。とりあえず、集合時間の五分前くらいになったら番号順で並んでくれ」
「「「はい」」」
「じゃ、適当に過ごしててくれ」
そう言われて、僕たちは少しだけ離れた所でお話。
「ねぇ、椎菜ちゃん」
「ん、なぁに?」
「あたし、ふと思ったんだけど……椎菜ちゃんって推定神様から物を貰ったんだよね?」
「うん、そうだね?」
「あれって、お狐様がモチーフだったと思うんだけど……神社に行ったら何か起こったりしないのかな?」
「ふぇ? あはは、さすがにそれはないと思うよ~。たしかに、あの姿だとすっごくファンタジーになっちゃうけど、さすがにそう言うことはないと思うよ? 貰った理由だって、僕があの神社に通ってたからだと思うし」
手紙の内容も、なんとなく僕への感謝? みたいな感じの内容だったし。
「正直、TS病にその組み紐っていうファンタジーがある以上、100%存在しないわけじゃないとは思うし、その確率も本当に極小だとは思うんだが……最近の椎菜を見てると、それがあり得るんじゃないか、と思ってしまう辺りがなぁ……」
「さ、さすがに何もない……はず、だよ?」
けど、既にファンタジーを二回も経験しちゃってるし……TS病とこの組み紐……だからこそ、完全に否定はできないわけで……うぅ、楽しみなのに、本当に何か起こるかも? って心配になって来ちゃったよぉ……。
「まあ、仮に何かあっても、椎菜の性格上全く問題はないと思うがな」
「ふぇ?」
「いやほら、椎菜は基本的に性格がいいからな。むしろ、プラス方向に進みそうだし」
「あー、それわかる。なんだかんだ悪いこともプラスになっちゃいそうだよね」
「そ、そう、かな?」
「あぁ」
「うん」
「そ、そっか……」
けど、二人がそう言ってくれるとまだ気は楽、かな。
もちろん、まだそう言ったファンタジーに遭遇すると決まったわけじゃないし、うん、大丈夫!
僕たちが行くのは普通の京都……うん、平穏だし平和だし普通の京都!
大丈夫!
◇
それからしばらくして生徒が全員集まって、軽い注意事項とかこの後の動き方の説明等を受けてから、新幹線に乗るためのホームへ移動すると、既に新幹線がホームに到着していて、順番に中へ。
あらかじめ学園で決めていた座席に座る。
僕と麗奈ちゃんと柊君は丁度三人座りの座席で、僕が真ん中で、麗奈ちゃんが窓際、柊君は通路側に。
「いやー、わくわくするねぇ。あたし、新幹線は乗ったことないんだよね」
「そうなの?」
「うん。基本バスだったから」
「へぇ~。じゃあやっぱり楽しみなんだね」
「まあね! かなり速いのに全然揺れないって聞いてるし」
「あはは、それは本当だよ。すごく静かだし全然揺れないもん」
「そうだな。びっくりするくらい揺れがない。正直、進んでいるのか疑うくらいだなー」
「ほほう!」
なんて、動き出す前にそんなことをお話。
配信活動もいいけど、こういうなんてことない普通の会話がすごくいいよね……体が変わってから色々あったわけだし、それでもこうして接してくれる二人には感謝しかないです。
もちろん、クラスのみんなも奇異の視線で見ることはないし、普通に接してくれはするけど、この二人は色々と手助けもしてもらっちゃってるからね。
本当に二人が一緒のクラスで良かったです。
なんて、そんなことを考えたり他愛のないことを話している内に新幹線が動き出しました。
「お、おー、本当に揺れを感じない! しかも、もうこんな速さになってる! すっごーい!」
「あはは、麗奈ちゃんすっごくはしゃいでるね」
「それはもう!」
「子供みたいだな」
「心はいつでも子供ってもんだよー」
あはは、なんて三人笑い合う。
麗奈ちゃんは窓の外を見て興奮していて、僕はそんな麗奈ちゃんを見て微笑ましい気分になり、柊君は苦笑いに呟く。
うん、やっぱりいいよね。
と、しばらくしてから小腹が空いたと言うことで、お菓子を食べて過ごしたり、雑談をしたりしていると……。
「んっ、ふあぁぁ……んんぅ……」
不意に欠伸が漏れ出ました。
「あれ、椎菜ちゃん眠いの?」
「んん~、ちょっと眠い、かも……?」
寝る時間はいつもより早かったし、起きる時間もいつもより早かったから……多分、起きた時はそこまでのちょっとの眠気しか感じなかったけど、なんだかんだ眠くなっちゃったのかも。
こういうのって、自分じゃ気付かないこともあるもんね。
「ちょっとだけ寝る?」
「うん……そうだね、正直、かなり、ねむ……くて…………すぅ……すぅ……」
うとうととしている内に睡魔がやって来て、僕はすぐに眠っちゃいました。
◇
「ねえ、高宮君」
「なんだ?」
「……椎菜ちゃん、寝顔天使すぎない?」
「……わからないでもないが、鼻血は出すなよ」
「いやぁ、ちょっとこの状況は我慢できないかも……」
「……まあ、頭を朝霧に預けてるからな。だが、さすがに新幹線内を汚すなよ」
「くっ、持ってくれるかなぁあたしの体ぁっ……!」
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ようやく修学旅行の話に入った気がします。
まあ、配信回とか番外編が長かったからなぁ……。
一応の目安なんですが、今日はもう一話投稿しようかなって思います。調子が良ければさらにもう一話出してぇ、って感じですが、まあ、うん、そこはあまり期待しないでいただければ。
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