#65 修学旅行の前日、お買い物!

 ここから本編!

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 皐月お姉ちゃんとの配信を終えた日(最後の方の記憶がないけど……)から数日が経って、修学旅行の前日になりました。


 その間と言えば、いつも通りの日常を過ごしてた……はずです。

 多分きっと。


 と、そんなことはよくて、今日は前日ということもあり、二年生の授業は午前で終了。

 午後は最後の準備とか、忘れ物が無いようにするための確認をするようにと言われています。

 あ、ちなみに今日は木曜日です。

 金土日で修学旅行なので。


「というわけだから、午後にお買い物に行かないかな?」

「あぁ、いいぞ。朝霧も行くだろ?」

「そりゃもう! でも、何を買いに行くの? 椎菜ちゃんってこういうのは早めに終わらせてそうだけど?」

「あ、うん、おやつ買って行こうかなぁって。あとは、日用品が心許なかったので……」

「なるほどねー。じゃあ、午後に行こっか! あ、お昼はそっちで食べる?」

「そうだな。いいと思うぞ」

「僕も賛成!」

「じゃあそうしよう! それじゃ、また後でねー」

「うん!」

「あぁ」


 と、そんなこんなで三人で午後にお買い物に行くことになり、あっという間に一日の授業が終わって放課後になりました。

 中には部活動に行く人もいるみたいだけど、大体はそのまま帰るか、学食や購買部でお昼を買って適当に食べながらお話しする、みたいな人もいるけど、大体の人はそのまま帰宅。

 一度お家に帰って着替えてから待ち合わせ場所であり、ショッピングモール内のフードコート付近へ。


「あ、いたいた、柊くーん!」


 待ち合わせ場所へ行くと、そこには柊君が壁に背中を預けてスマホをいじっている姿が見えて、僕は声をかけながらとたた、と駆け寄りました。


「早いな、椎菜」

「柊君の方が早いよ?」

「まあほら、さすがに俺が一番最後って言うのも外面がな」

「???」

「あぁ、気にしなくていい。ただ、あれだ。俺は椎菜なのことは男として見てるが、見た目は女子だろ?」

「そ、そうだね」


 さらっとそういうことを言ってくれるのが柊君のいい所だと思います。

 モテモテなのもわかります!

 でも柊君、年上の人が好きだけど。


「で、朝霧も女子なわけだ。女子二人に対し男一人で、その男が最後とか……俺の胃が死ぬ」

「そ、そういうものなの?」

「そういうものなんだ。世の中、結婚する気がなく、恋人を作ろうとしない人は増えてはいるが、それでも可愛い女子を二人も侍られせてれば、そりゃあ嫉妬も買うってもんだよ」

「な、なる、ほど?」


 男の人の世界は大変なんだなぁ……って、僕も男ではあるんだけど……心は。

 体はもう違うけど……。


「お待たせー。って、あらら、あたしが最後か。待たせちゃった?」

「あ、麗奈ちゃん。ううん、全然! 僕も今来たところだから!」

「それならよかった! それにしてもー……高宮君の私服姿とか初めて見たけど、結構お洒落さん?」

「そうでもないと思うが」


 そう答える柊君と言えば、Tシャツに薄手のカーディガンとスキニーパンツ、あとシルバーのネックレスをつけてました。

 柊君ってイケメンって言われるタイプだから、すごくカッコいい……うぅ、僕がこう言うのを着ても似合わなかったからなぁ。


「そう言う朝霧も随分と似合ってるな」

「そう? ありがとー」


 麗奈ちゃんの方は、ブラウスにパーカー、それからジーンズを穿いていました。

 うん、すごく似合ってる。

 元々、モデルさんみたいにスタイルいいもんね、麗奈ちゃん。


「でも……椎菜ちゃん、そう言う服着るんだね?」

「あ、あはは……お姉ちゃんがこれを用意してまして……」


 そう言いながら僕は自分の服装を確認。

 今日の僕の服装。

 フリルが多めにあしらわれた桜色のワンピースです。

 その、見た目は確かに可愛いとは思うんだけど……なんだか恥ずかしい……。


「あの人は相変わらずだなぁ……」

「でも、すっごく似合ってるからヨシ!」

「う、うーん、ちょっと複雑……っと、じゃまずはお昼食べよっか! 何にするー?」

「そうだな、フードコートでもいいが……金銭面に余裕があるのなら、一階のレストラン街でもいいと思うぞ」

「お、いいねー。あたしは余裕あるし! 椎菜ちゃんは?」

「僕も余裕がある……というか、余裕しかないので、うん、それでいいよ」

「椎菜ちゃんに金銭面を聞くのは意味がなかったか。稼いでるもんね?」

「あ、あははは……」


 その稼いでいるお金が入ってる口座番号のカードと通帳は金庫の中だけどね……。

 と、そんなわけで早速一階へ。


「さて、何を食べるかだが……何がいい?」

「そうだなー。お腹は空いてるし、ガッツリ! って感じなんだけど、何がいいかって聞かれると……んーって感じ。椎菜ちゃんは?」

「僕は……あ、そう言えば串揚げ屋さんがちょっと前にできたよね? そこに行くのはどう? ちょっと高いかもしれないけど……」

「あぁ、いいぞ。ランチなら夜ほど高くはないだろ」

「だねー。じゃ、そうしよっか!」

「うん!」


 食べる物が決まったら早速目的のお店へ移動。

 最近できたばかりというのと、姫月学園の二年生は午前中で終わりということもあって、ちらほらと同級生の人たちを見かけます。

 多分、食べに来たんだと思う。

 というより、たまにショッピングモール内ですれ違ってたしね。

 ただ、柊君が苦い顔をしていたけど……。


 目的の串揚げ屋さんはそれなりに並んでいたので、名前を書いて並ぶ。

 それから十分ほど待って中に案内されました。

 とりあえず、90分コースのドリンクバー付きにして、早速食べたいものを取りに。


「ふぅむ、こうも色々あると迷うな……」

「だね。とりあえず、豚肉、エビ、イカに……んーと、玉ねぎ、レンコン……あ、チーズもいいね。それからヤングコーンかな」

「初手からかなり持ってくな、椎菜」

「えへへ、せっかくだからいっぱい食べたいので!」

「はは、そうか」

「それじゃあ、僕は先に戻って麗奈ちゃんと変わって来るね」

「あぁ、そうだな」


 食べたいものを取ってから席に戻って来る。


「麗奈ちゃん、取りに行って来ていいよ~」

「はいはーい! って、椎菜ちゃん結構取ったね?」

「いっぱい食べるつもりです!」

「あはは、そっか! 椎菜ちゃんは食べるのが好きだもんね。じゃ、あたしも行って来まーす」


 楽しそうに笑ってから麗奈ちゃんが自分の分を取りに行きました。

 一人で食べ始めるのも気分的にちょっとアレなので、二人が戻るのを待って、戻って来てから食べることに。

 やっぱりみんなで食べたいので。


「ん、なんだ、先に食べ始めててよかったんだぞ?」

「うんうん、待っててくれたの?」

「えへへ、一緒に食べたいから」

「そうか」

「ぐふっ、やはりはにかみ顔は凶器かッ……!」

「麗奈ちゃん?」

「あ、なんでもないよー」

「……朝霧も大分あの人に近づいてる気がするな……」


 一瞬表情を歪めた麗奈ちゃんだったけど、すぐにいつもの笑顔に戻った。

 何かあったのかな?


「さて、集まったし……食べよっか!」

「あぁ」

「うん!」

「「「いただきます」」」


 というわけで、各々で取って来た物を目の前のフライヤーで揚げていく。

 こうやって自分でやる串揚げってお家じゃやらないから楽しい。


 そう言えば、卓上フライヤーとかあるみたいだし……今度買ってみようかな? あ、配信のネタにもいいかも……複数人でコラボする時とか。

 こう、パーティーみたいな……。


 もしそれをやるならやっぱり、三期生のみんなでやりたいなぁ……お鍋もいいし、焼肉も結構あり? あ、お好み焼きとかも……うーん、やってみたことがいっぱい!

 って、全部食べものばかりだなぁ……。


 ま、まあ、いっか! うん。


「椎菜? どうした? もう出来てるぞ?」

「あっ、ご、ごめんね、ちょっと考え事……」

「なになに? 悩み事?」

「ううん、そうじゃなくて、こう、お家で串揚げが出来たら面白そうだなーって。その、ネタにもなるしなーって」

「あぁ、そういうことか。……にしても、普段からそう言う発想になる辺り、大分頭が配信者になって来たな」

「うんうん、なんだかプロっぽい! やっぱり環境が変わるとそう言う風になるのかな?」

「そ、そう、なのかな? でも、お姉ちゃんはそういうことを考えてなさそうだけど……」

「いや、あの人は何も考えてないがそもそも普段から自由人だからな、生活自体がネタの宝庫なんだろう」

「愛菜さんだもんね、ありそう」


 ネタの宝庫……お姉ちゃん、そんなこと思われてるよ、柊君から。

 でも、否定はできないよね……。


「はむっ……ん~~~っ、美味しい!」


 お話もしながら、ぱくり、と揚げたてのエビを一口。

 うんっ、美味しい!

 やっぱりおろしポン酢は美味しいよね!


「椎菜ちゃんは美味しそうに食べるよねぇ。京都行ったら何か食べたい物とかあるの?」

「湯豆腐!」


 京都は京都で美味しい物がいっぱいあるけど、湯豆腐は食べておきたいかも。


「あぁ、そう言えば割と有名だったか。まあ、八つ橋とかは椎菜は食べられないもんな」

「甘いものは無理ですっ……!」


 僕、甘いものを食べると、うっ、ってなっちゃうもん……こう、口の中が甘さだけになっちゃうのが嫌というか……一部の甘いものは食べられるんだけど。


「椎菜ちゃん、甘い物のことを話す時って、ちょっとこう、敵意があるような表情をするよね」

「ふぇ!? そ、そんな顔をしてるの……?」


 麗奈ちゃんに指摘されて、ぺたぺたと自分の体を触ってみる。

 当然わからないけど……。


「してるかしてないかで言えば……してるな」

「反対に、好きな物のことを話してる時はすっごく幸せそうな顔だよね」

「あー、それはわかるな。見てるこっちが幸せになるような、そんな表情だな」

「ふえっ!? ふ、二人とも、よ、よく見てる、んだね……?」

「まあな」


 はぅぅ、なんだか恥ずかしいよぉ……。


「っと、話はすっごく変わるけど、明日から修学旅行じゃん?」

「そうだな」

「うん」

「そういえば、来月にも体育祭があったなー、って思って」

「そう言えばそうだね」


 麗奈ちゃんの言う通り、明日からは修学旅行だけど、来月には体育祭があるんだよね……。

 時期的に、十月とかにやりそうだけど、姫月学園は色々あって十一月の上旬。

 まあでも、ちょっと寒いくらいで逆に運動をするには丁度良さそうだけどね。


「なんというか、うちの学園は秋にイベントがぎゅうぎゅうになってるんだよなぁ……二年生なんて修学旅行があるから特にな」

「そうだね……でも、体育祭かぁ……」

「楽しみか?」

「そうだね。今は身体能力も上がってるからね! ……まあ、ちょっと人並み外れちゃってはいるけど……」

「だが、大活躍しそうだけどな?」

「うんうん、優勝とか目指せるんじゃない?」

「あ、あはは、出る種目によると思うけど……」

「まあ、短距離走とかリレーでは間違いなくぶっちぎれるだろうな。だが、椎菜的には気持ち的に出なさそうだけどな」

「そうなの?」

「そりゃそうだろ。椎菜は多分、ずるになっちゃうからそれ以外かな、とか思ってるだろうし。そうだろ?」

「さ、さすが柊君、お見通しなんだね……」

「おー、さっすが幼馴染!」

「付き合いは長いしな」


 本当に、こういう時の僕に対する理解度はすごいと思います。

 けど、柊君の言う通り、僕的にはなんだかずるになっちゃいそうだし、短距離走は多分でないかなぁ、リレーはまだいいけど……。

 結構加減が難しいしね……。


「まあ、仮装リレーとか借り物・借り人競争とか、障害物競走とか、色物枠もあるし、椎菜はそっち系でいいんじゃないか?」

「あ、うん、そうだね。そっちの方にしようかなぁ。二人は出たい種目とかあるの?」

「俺は……まあ、普通に短距離走でいいや」

「あたしは団体戦かな。個人戦より勝ちやすいし!」

「なるほどー……」

「ま、それよりも俺たちは明日からの修学旅行を楽しむとしよう。どうせ、帰ったら種目決めもあるんだ。その時でいいだろ?」

「うん! そうだね!」

「じゃあ、食べよ食べよ! 時間ももったいないし!」


 と、そんな風に和やかにお話をしながら、美味しい串揚げを堪能しました。



 串揚げを食べた後は、本来の目的であるお買い物。

 とは言っても本当に買う物は少なくて、新幹線とかバスの中で食べる用のお菓子とか、日用品(そっちは麗奈ちゃんについて来てもらいました)とか、あとは、予備の下着とか……そう言った物を購入。


「椎菜、お前随分と買ったな……」

「不測の事態には備えておきたいのです!」

「あはは、そうだね。特に、女の子はねー」

「まあ、椎菜はたまにドジを発揮するからな……何があるかわからない以上、そうした方がいいだろ。というか、俺としては神社が多い京都で、何かありそうだけどな、ファンタジーが」

「さ、さすがにない……と思う、よ? た、たしかに、この組み紐はもしかしたら神様からかもしれないけど……」

「まあ、大丈夫大丈夫! 仮にそうなっても、椎菜ちゃんが可愛くなるだけだと思うから!」

「それはそれで不安だよ!?」


 なんて、こんな風に三人で笑ってお話しながら、僕たちはお家に帰りました。



「ただいまー」

「おっかえりぃ! って、随分買ったんだね?」

「うん、色々と」

「そっかそっか! いやぁ、それにしても……くそぅ! 二日も椎菜ちゃんに会えないなんてッ……! お姉ちゃん死んじゃう!」


 手をぎゅっと握って、この世の終わりみたいな表情を浮かべるお姉ちゃん。


「た、たった二日だから、ね? 日曜日は美味しいものを作ってあげるから、それで許して?」

「じゃあ、椎菜ちゃんお手製のハンバーグと唐揚げとエビフライを所望します!」

「うん、じゃあ帰ったら作ってあげるね!」

「やったぜぇ!」


 作ってあげると言うと、お姉ちゃんはお手本のようなガッツポーズをしました。

 大げさだけど、やっぱり喜んでもらえるのは嬉しい。


「あ、でも、あれだよ? お姉ちゃんのことだから、面倒くさくなっちゃって、カップラーメンとか外食ばかりになっちゃうと思うけど、そういうのは一日一回にしてね? お弁当なら……まだいいけど、極力野菜が多く入っている物を選ぶこと! いい?」

「了解であります! というか……椎菜ちゃん、たまに私のお母さんみたいなこと言うよね……」

「栄養バランスにお母さんも妹も弟も関係ないからね! 僕は、お姉ちゃんには健康でいてほしいから。体を壊しちゃったら心配だもん」

「あはは、いやぁ、愛されてるねぇ、私ぃ! ともあれ、明日は早朝から行くことになると思うからあらかじめ……楽しんできてね、椎菜ちゃん」

「うん! お土産買って来るね!」


 お姉ちゃんに楽しんでくるように言われて、僕はにっこりと笑ってそう返しました。

 明日からの修学旅行、楽しみだなぁ……。


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 はい、本編です。

 なんだかんだ、配信回が長かったし、番外編が長引いたので、なんか、すごい久しぶりに普通の日常回を書いた気がします……なんだったら、柊と麗奈の出番も久しぶりな気が……うん、しばらくは出ずっぱりになってくれるはず! 多分!

 というか、ようやく修学旅行の話しなのか……。

 着々と、らいばーほーむのイベントの話しも近づいてるし……うーん、書くことが多い!

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