番外編#1-6 配信前。平常1に緊張1に普通が1

 短いです!

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 そんなこんなで平行世界からやってきた者たちは自由に各々で過ごし……。


「うわぁ、本当に出来上がってるぅ……」

「マジかー……のう、おぬしらの知り合い、技術とかどうなっとんの?」

「まあ、女委はちょっとおかしいから……」

「わたもちママ、こんなにすごかったんだなぁ……」


 三人は椎菜の部屋に集まっていた。

 そして、パソコンに表示されている二つのモデルを見て依桜とまひろの二人は揃って苦笑い。

 まひろに至ってはあまりにも早すぎる完成に呆れを通り越して少し恐怖気味だ。


「いやぁ、いいねいいね! これ今日は素晴らしい配信が見れそう! お姉ちゃん楽しみぃ!」

「お姉ちゃん、あの、本当に三人でやるの……? というか、事務所はいいって言ったの?」

「え? 当然だよね? むしろ、是非やれ! って言ってたし?」

「なんで!? お姉ちゃんなんて言ったの!?」

「えーっと『超可愛い平行世界から来た女の子二人がいて、更に他の平行世界の方とわたもちさんが協力して一日でこんなモデルを仕上げました! 三人で配信してもOK?』って」

「それでよく信じてもらえたね!?」


 愛菜、まさかのドストレートに事情を説明した挙句、そのまま信じられた挙句許可されたらしい。

 もはや何でもありである、このシスコン。


「というわけで! 私はこれで失礼するねー」

「え、もう行っちゃうの?」

「だって、これから三人で打ち合わせでしょ? だったら私はいない方がいい! というか、ネタばれは嫌だっ! 私は椎菜ちゃんが他のTSっ娘二人と楽しそうに配信する姿が見たいんだいっ! だから私はおさらばぁ! じゃ、頑張ってね☆」

「あ、お姉ちゃん!? 本当に行っちゃった……」


 ドタバタガチャッ! バタンッ!

 と、駆け去っていく音と、扉を開けて家を出ていく愛菜。

 姉が去った後の空間を見つめ、椎菜は茫然と呟いた。


「なんというか、愉快な姉上じゃのう」

「あ、あはは、本当に楽しいお姉ちゃんだよ……」

「でも、すっごく愛されてるんだね?」

「過保護なくらいだけど、それでも大好きだよ」


 えへへ、とはにかむ椎菜。

 なんだかんだ言っても、姉は大好きなので。


「それにしても……これを、儂らがのう……依桜よ、おぬしはこういうのはどうなんじゃ?」

「うーん、アイドルをやったことがあるし、あと声優もあるし……それに比べたらマシ、かな?」

「「えぇぇ……」」


 この人、何回爆弾を落とすんだろう、そしてあといくつの爆弾を持っているんだろう、と椎菜とまひろは思った。

 何でもあり過ぎる人物である。


「とはいっても、VTuberはやったことがないし、緊張はするけどね。というわけで、よろしくお願いします、先輩!」

「ふぇ!? せ、先輩っ!?」

「おぉ、たしかにそうじゃのう! ならば、儂からもよろしく頼むぞ、先輩殿よ」

「ふぁぁ!? ま、まひろ君まで!? あ、あのっ、ぼ、僕だって始めたばかりなんだよっ!? せ、先輩だなんて……あの、恥ずかしいので……」

「ふふ、冗談だよ。だけど、先輩であることに変わりはないよね」

「じゃな。儂としても、是非とも頑張らせて欲しい。というか……ここまでの物を用意されて、失敗など……あの二人に申し訳ないしのう」

「「だね……」」


 まひろの言葉に苦笑い交じりにそう返す椎菜と依桜。

 二人の頭の中には、椎菜が学園から帰って来た際に届いたメールの内容が浮かんでいた。

 その内容は……


『な、成し遂げた、ZE……我が魂と血と汗と吐血と鼻血の結晶……う、受け取ってくだちぃ……ガクッ P.S.うちも女委ちゃんも精も根も尽き果てたので、しばらく寝ます……うへへぇ、配信が始まったら絶対見るぜぇ……』


 だった。


 何回『血』の文字が入ったんだろうか、などと思わなくもないが……本当に作ってしまったようである。


「しかし、女委殿は大丈夫なのか?」

「あ、うん、そこは大丈夫。女委、いつもコミケ前の時期になるとこうなるから」

「お、おおぅ、そうなのか……」

「なんだかすごいね……」

「まあ、うん、本当にすごいと思います……って、そうだった。設定とか確認しないと、だよね? 一応今日限りではある、けど……」

「本当に今日限りなるかはわからんがなぁ……依桜が言うには、割とこういうことがあるんじゃろ?」

「うん。しょっちゅうっていうわけじゃないけど、巻き込まれることはよくある、かなぁ」

「もしもまたこっちに来ちゃったら、僕のお家に来ればいいから! その時はまた泊めるよ!」

「うむ、その時はよろしく頼む。とはいえ、そうはならないとは思うが……いやしかし、本当にこっちの世界は心が休まる……帰ったら恐怖の時間がやって来ると思うと……」

「ぼ、ボクも……」

「「帰りたくないなぁっ……!」」


 本当にこの二人に何があったんだろう、椎菜は本気で気になった。

 どちらも遠い目をしているのに、方向性が全く違う気がして。


「と、ともあれっ! 色々確認しちゃお!」

「あ、うん」

「じゃ、じゃな! して……この緑髪が儂で、こっちの蒼い髪が依桜か? なんと言うか……全員狐耳でロリじゃな……」

「よく見ると、椎菜君のあの姿に似てるね?」

「お姉ちゃんが『姉妹コンセプト! 姉妹コンセプトでお願いしますっ! というか、絶対そっちの方が良いってェ!』って言ってまして」

「「な、なるほど……」」


 椎菜の言う通り、愛菜は電話を切った後、一応の要望を伝えていたのである。

 その結果が、姉妹コンセプトだ。

 ちなみに、長女が依桜で、次女が椎菜、三女はまひろである。

 なぜこうなったかと言えば、単純にまひろがぐーたら系で、ちゃっかりしてそうだからである。

 別に身長でこうなったわけではない。ないったらない。


「それにしても……すごく可愛いね?」

「じゃなぁ……」


 目の前に映る自分たちの分身とも言える存在に、二人はどこか嬉しそうだ。


 依桜が使うことになるキャラクターの名前は『神薙いのり』である。

 何の因果か、『いのり』という名前は、依桜がアイドル活動した時に使用した名前と全く同じである。

 デザインとしては、神薙みたまに似てはいるが、みたまを少々大人っぽくさせた感じだ。

 髪の毛は海のように蒼く、瞳も蒼い。

 ふんわりとした笑顔を浮かべた美少女だ。

 尚、胸はでかい。

 服装はみたまのデザインに使われている巫女服とほとんど同じだ。

 とはいえ、色合いは変わっており、みたまの巫女服が青と白が基本なのに対し、いのりのデザインはなぜか黒と赤である。

 依桜的には、割としっくりくるそう。


 続いてまひろ。

 まひろの使うことになるキャラクターの名前は『神薙ゆかり』だ。

 こちらは黄緑色の髪の毛をしており……というか、どう見ても緑茶の色である。

 あと、髪飾りをよく見ると茶葉らしきものがデザインとして使われている。

 眠たげな顔立ちの可愛らしい少女で、柔和な笑みを浮かべている。

 ちなみに、胸はそこまでない。

 巫女服のデザインは二人とほとんどおなじではあるが、やたらだぼっとしており、袖から手が出ていない、所謂萌え袖状態。

 色合いは桜色がメインだ。


「コンセプトとしては……依桜君が僕が心配で一度だけ来ちゃったお姉ちゃんって言う設定で、まひろ君がお世話してくれる人がいなくなったからわざわざ降りて来た末っ子って言う設定だって」

「な、なる、ほど? まあでも、妹が心配な気持ちはすごくわかるかな」

「いや儂のキャラ、ぐーたらしたいから追いかけて来た妙な所で行動力のあるニートじゃね? 大丈夫? 儂、ニートじゃないよ?」

「あ、あはは、でも、そう言う設定なので……一応、今日限りだから、変に設定があるのも変だろうって……」


 もとより、今日一度限りの配信になる予定なので、二人はそう言う設定にしたのだ。

 変に作り過ぎるとまたやるのかも、期待させてしまいかねないことを考慮した結果だ。


「それはそうか……ま、ええじゃろ。これはこれで楽しそうじゃしな! しかし、声はどうすれば?」

「僕はほとんど素の声だよ? まひろ君はそれでも大丈夫だと思うし……あ、依桜君はどうするの?」

「そうだね……うーん、一応声は変えられるけど、そのままでいいかなぁ。その方が良さそう」

「わかったよ! それじゃあ、最後に、今日の流れだけど……えっと、二人の世界には、ましゅまろってあるのかな?」


 と、今日やる予定のましゅまろについて、二人の世界にあるのかどうか尋ねた。


「あるよ。ボクはVTuberはあまり見ないけど、女委とか態徒……えーっと、別の友達が見てて、たまにボクに見せて来るからその時にちょっと」

「儂も旦那の一人が見とるのう。そこでましゅまろに触れておったわい」

「じゃあ大丈夫だね! んっと、今日配信をすることは事前に告知してあって、それなりに来てると思うから、それを読み上げて僕たちがそれに反応する形です」

「なるほどー、ちなみにそれはどうやって選んでるの?」

「ランダムかな? なんとなくでこれ! って感じで選ぶの」

「なるほどのう。何はともあれ面白そうじゃな! まあ、儂ら、この世界の人間じゃないが……」

「答えられない物が来たら大変そうだけど、何とか誤魔化そうね、まひろ君!」

「じゃな!」

「その時は僕もフォローするので……」


 などなど、三人は配信についての打ち合わせを進めていき……。


「うん! じゃああとは頑張るだけだよっ!」

「うわぁ、なんだか緊張してきた……」

「まあ、なるようになるじゃろ」

「まひろ君はなんでそんなに落ち着いてるの……?」

「緊張しにくいんじゃよ、儂」

「羨ましい……」

「ま、まあ、一度始めちゃえば慣れるよ? それに、依桜君だってアイドルさんとか、声優さんをやってるんだよね? だから大丈夫だよっ!」

「う、うん、そうだよね! うん、頑張りますっ!」


 配信前となり、椎菜はいつも通りに、依桜は緊張して、まひろは普通だった。

 そうして色々と話している間についに配信時間となった。


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 色々書こうかと思いましたが、さすがに長すぎなので……うん、ちょっと端折る。

 早ければあと2話で番外編は終わります。

 あと、なんかもう、こいつ本編軸で良くね? とか思ってる。

 一応整合性を取る方法があるし……というか、一名神を脅しただけの奴がいると思いますが、あいつなんでもできるので! 記憶いじれるよ!

 なので、もうこいつは本編軸の話にして、本編では触れないような流れにします。

 あ、見なくても問題はないように終わらせるつもりですので、そこはご安心ください。

 もう少しだけ、私の自己満足にお付き合い頂ければ幸いです!

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