#57 案外普通な日と、記念配信の話
ふわり、と風を使って玄関前に着地。
空を飛ぶのってすっごく便利だね……。
あまりやろうとは思わないけどね、結構怖いもん。
「はふぅ……うぅ、まさかクラスメートに会うなんて……だけど、すぐに逃げたから大丈夫のはず……」
霊術使っちゃったけど……。
まあでも、ドラマの撮影か何かだと思われるよね!
「ただいまー」
そう言って中に入っても特に返事がない。
お姉ちゃん、本当に重症なんだね……。
「ともあれ、ちゃっちゃと作ってあげないとね」
僕はレバーを持って台所に。
ご飯も炊いて、お味噌汁とあとは……サラダも欲しいよね、となると簡単な物も作って……。
そうして、慣れた手つきでお姉ちゃんのためのレバニラ定食を作る。
正直、耳と尻尾があって毛が入らないように気を付けないといけないけど……はぁ、いつ戻るのかなぁ。
溜息を吐きつつ、お盆にお料理を載せてお姉ちゃんのお部屋へ。
コンコン、と扉をノック。
「お姉ちゃん、大丈夫……?」
「へ、へへ、な、なんとかね……そ、そう言えば、し、椎菜ちゃんは、収まった、のかい……?」
「う、うん、その、本当にご迷惑をおかけしました……」
「い、いいっていいって……へへ、私から、あれはご褒美過ぎて死にかけただけ、だからね……うへへ……」
本当に重症だよ……。
「お姉ちゃん、お腹空いてない? 僕、お姉ちゃんのためにご飯を作って――」
「よっしゃバッチコイ! 貧血状態なんて知らねぇ! 早く早くぅ! あ、けど、さすがの私でも今は動くことが出来ないので、是非とも椎菜ちゃんからあーんをっ……!」
さっきまでの弱った感じのお姉ちゃんはどこへ行ったんだろうと言わんばかりの、いつも通りの言葉が返ってきました。
「あ、う、うん、それはもちろん! お姉ちゃん好きだもんね?」
「ヤッタァァァァァァァ!」
お姉ちゃん、結構余裕がある……?
とりあえず、大丈夫そうなら早く入ろう。
「じゃあ、失礼します」
ガチャ、と扉を開けて中に入ると、最初に視界に飛び込んでくるのは僕の写真が大きくプリントされたタペストリー(お姉ちゃんお手製で、前に学園祭で着たメイド服Ver)で、辺りを見回すと僕の写真とか僕の写真とか、前に僕がお遊びで作った僕とお姉ちゃんをデフォルメしたぬいぐるみが置かれていたり、神薙みたまのポスターとかまたタペストリーとかぬいぐるみとか……なんというか、その、僕関連の物が多く設置されています。
お姉ちゃんと暮らし始めてから割とすぐにこんな感じだったのでもう慣れてます。
というより、世の中のお姉ちゃんはこれをするのが普通なのかもしれません。
むしろ、初めて見た時はちょっと嬉しかったしね……こおう、それくらい僕を好きでいてくれてるんだ! って。
今でも恥ずかしいけど嬉しいし。
ちなみに、僕とお姉ちゃんをデフォルメしたぬいぐるみ以外は全部お姉ちゃん作です。
しかも本当にクオリティーが高いので、お姉ちゃんって本当に多才だと思います。
「――お、この匂いは、レバニラ炒めだね!? いやぁ、丁度血が足りてなかったから助か、る…………?」
「あ、お姉ちゃん、えっとこの姿なんだけど……ね? あの、その、お姉ちゃんにすっごく迷惑を掛けちゃったから、お詫びも兼ねて、その、め、メイド服を着てお世話を……」
「し、椎菜ちゃんが、こ、この私のために……?」
「う、うん、だって、その、僕も憶えてるし……」
「あっ」
「だからあの、お世話させてくださいっ!」
「( ˘ω˘)スヤァ」
「あれぇ!? どうしたのお姉ちゃん!? なんで倒れちゃうの!? 起きて! 起きてお姉ちゃーーーーーーーん!?」
お姉ちゃんを起こすのに一分かかりました。
◇
「あぁっ、椎菜ちゃんの作るレバニラ炒めが美味しいっ……! お味噌汁もほっとする! サラダも美味しい!」
あーんをしたそばからお姉ちゃんがぱくぱくとお料理を食べていきます。
すごい食欲……。
「美味しい?」
「シチュエーションも相まって最高です!」
「そ、そっか……えへへ」
「んぐっ……ふぅ、耐えたぜ……」
「あ、お水いる?」
「ありがとー。ごくごく……はぁ。それにしても、まさかバグで戻らなくなるなんてねぇ。けど、衣装は変えられるんだね?」
「衣装だけはね。ただ、前にわたもちおかぁたまが見せてくれた案と同じような衣装にしかお着替えできないけど」
「へぇ~、その辺り何か縛りがあるのかもね?」
「多分?」
かなり不思議な物だし、何より全てを把握してるわけじゃないからね。
「あ、はい、あーん」
「あむっ……はぁ、いやぁ、このレバニラ定食のおかげで、私の体が血液を増産しまくってるのを感じる……おかげで、貧血も飛んだし、調子もいい! やはり、貧血の時には椎菜ちゃんのレバニラ炒めが一番!」
「えへへ、そう言ってもらえると嬉しいなぁ」
お姉ちゃんの言う通り、さっきまで青い顔をしていたのに、今はすごく健康的な状態に。
お姉ちゃんの体質というか、昔から貧血時に僕が作ったレバニラ炒めを食べると、すぐに回復します。
すごいよね!
「けど椎菜ちゃん、その姿大丈夫なの?」
「大丈夫……じゃないかなぁ。お買い物に行くのも一苦労だったから……」
「え、待って? その格好で外出たの!?」
「う、うん。お姉ちゃんのためにレバーを買いに……」
「あー、なるほどねぇ……んまぁ、大丈夫かなぁ……で? 戻る感じは?」
「今のところはないかなぁ……もしかすると、一日だけかもしれないし……」
「現実的に考えるとそうかもね。けど、明日って栞ちゃんと出かけるんだよね?」
「う、うん。東京の方にちょっと……」
「なんだか二人、結構仲良くなってたもんね。まあ、肝心の栞ちゃんはみたまちゃんな椎菜ちゃんに襲われたけど」
「あぅ……」
うぅ、明日改めて謝ろう……。
「ふぅ……ごちそうさまでした! いやぁ、体調も万全! すっかり治った! ありがとう、椎菜ちゃん!」
「も、もとはと言えば僕が悪いから……」
「いいのいいの! あんなの私からすればご褒美で……ぐへへ……」
お姉ちゃん、すっごく悪い顔してる……。
「まあ何はともあれ! 椎菜ちゃんが正気に戻ってよかったよ~」
「あ、あはは……今度からは、絶対に変身しないようにするね……」
「それがいいと思う」
珍しくお姉ちゃんが真顔で賛同しました。
「あれはもう、人死にが出るなんてものじゃないからね……多分、千鶴ちゃんだったら本当に死んでたよ」
「それ、らいばーほーむのみんなに言われてたよ……」
「みんなよく理解してるねぇ……」
千鶴お姉ちゃんへの理解度みんな高いよね……。
◇
「……で、これを掃除する、と」
「はい……」
本当に万全状態になったお姉ちゃんと一緒にリビングへやってきました。
そこに広がる惨状を見て、僕とお姉ちゃんは苦い顔をする。
なんと言いますか……下手な殺人現場よりも殺人現場してると思うんです、リビング。
本物を見たことはないけど……。
まず、壁の至る所に血が付着してるし、床も赤くないところがほとんどないくらいに赤いし、テーブルも真っ赤、カーペットは血に染まってるし、他にも……うん、すごいことになってます……とりあえず、殺人現場みたいな惨状はどうにかしないと、だよね……。
「で、どうやって掃除しよっか?」
「うーんと、もういっそのこと色々楽をしちゃおうかなぁって」
「ほほう? それはどんな方法で?」
「うんっと、こうしてみようかなって」
そう言って、僕は霊術でお水を生み出しました。
「あっ、なるほど、それをぶちまける感じ?」
「ううん、撒くんじゃなくてこれを操って汚れてるところを拭く、感じかな?」
そう言って、僕は水を動かして血で汚れているところを雑巾で拭くようにお水で包んでいきます。
すると、みるみるうちに汚れが取れていきました。
「おー、椎菜ちゃんがファンタジーを使いこなしてる!」
「なんとなくでやってるんだけど……」
「いやいや、才能があったってことだよ! っていうか、本当に綺麗になってる……!」
「みたい、だね」
正直、やった僕も驚いてます……。
けど、すごく便利……!
今度からお掃除はこれを……って、ダメダメ! それはなんだか、負けた気がします!
それに、家事に関してはプライドというか、なるべく甘えたくないと思ってしまう。
だから、今日みたいな惨状じゃない限りは使わないようにしよう。
そう思いながら、霊術を使ってリビングのお掃除を終える。
他のお部屋……お風呂場とか階段とか、廊下とか、そう言った場所にも血があったのでそこも同じようにお掃除。
おかげで、血で汚れる前よりも綺麗になった気がします。
「……これ、洗剤が入ってるわけじゃないと思うんだけど……」
明らかにおかしい気がする……。
もしかすると、神様パワーのような何かが混じってる……のかも?
でも神様……どうしてあんな状態になっちゃったんですかぁ……うぅ、ただ苦しみを軽減しようとしただけなのに……辛さはなかったけど…………あ、でも……。
「椎菜ちゃん? どしたの?」
「あ、え、えっと、その、ああなっちゃった時に、そう言えば別の意味で苦しかったなぁって……」
「ん? どういうこと?」
「あ、え、えと、その……僕もよくわからなくて……その、ね? 下腹部の辺りが――」
「OK色々理解したからその先は言わんで!?」
「ふぇっ? お、お姉ちゃんはあれが何かわかるの……? その、すごく、きゅんとするというか……」
「あーあー! 聞こえなーい! 椎菜ちゃんが階段を上っちゃいそうだけど聞こえなーい!」
……どうしたんだろう? そんなにこの話題はしちゃいけないのかなぁ……。
うーん……麗奈ちゃんに訊いてみようかな……?
「それに、その、体が熱くなって、ぼーっとして、すごくもじもじして……」
「いやもうほんとにお願いだからっ、その話題はやめてっ!?」
どうしよう、お姉ちゃんが本気で止めに来てる……。
色々と気になるけど、知らなくていいのかも。
「う、うん、わかったよ」
「ほっ……」
「それにしても……はぁ」
「どうしたの? 椎菜ちゃん」
「あ、うん……その、三日間も学園を休んじゃったし、配信もできなかったしで申し訳なさがね……」
「あー、そっか。本来だったら水木金のうち二日はやる予定だったもんね今週は」
「うん……たしか、お姉ちゃんが代わりに配信できないことを言ってくれたんだよね?」
「まあねー。とはいえ、私も配信できなかったけどね……」
「本当にごめんなさい……」
「いやいやいいのいいの!」
「でも……」
「本当に気にしなーいの! そもそも、私たちは姉妹。あの程度じゃ迷惑の内にも入らないし、迷惑をかけてなんぼでしょ、姉妹だし」
にこっと笑って励ますようにそう言ってくれるお姉ちゃん。
「お姉ちゃん……」
「それにさ、こうして椎菜ちゃんが配信者になったのは私がきっかけでもあるんだし、椎菜ちゃんのサポートをするのは当然。それにほら、私は椎菜ちゃんが大好きだからね! だから、いくらでも迷惑をかけてもいいし、気にしなくてもいいの。それに、あの程度私にとって迷惑にすら入らないからね。だから、椎菜ちゃんは気にしないで、いつもみたいに笑顔でいてくれると、お姉ちゃんは嬉しいかな!」
「ありがとう、お姉ちゃん」
うぅっ、お姉ちゃんが優し過ぎます……。
こういうことを素で言ってくれるからお姉ちゃんは大好きです。
お姉ちゃんみたいなお姉ちゃんができて、本当に幸せなんだと思います。
「うんうん、やっぱり椎菜ちゃんは笑顔が一番! っと、そうだ。昨日マネージャーから連絡があったんだけどね? 椎菜ちゃんと私って、チャンネル登録者数が100万人を超えたよね?」
「う、うん、お姉ちゃんはともかく、僕の方はなぜか……」
「いやいや、むしろ行かなかったのがおかしいんだから」
「で、でも僕まだ初めて二ヵ月も経ってないよ……?」
「日本は人口が少ない分、一発でドカンと行きにくいだけ! 海外だったらおかしくないって!」
「ここ日本だよ……?」
たしかに、海外ならあるのかもしれないけど……。
「それにね、椎菜ちゃんって実は海外でもちょっとずつ人気が出て来てるみたいだよ?」
「なんで!?」
「可愛いからだよ?」
「ふぇっ」
「いい? 椎菜ちゃん。可愛いというものの前では言語の壁なんて発泡スチロールも同然なんだよ」
「何を言ってるのかわからないです……」
「つまり! 椎菜ちゃんはたとえ言語がわからずとも! ひたすらに可愛いということ! というか、私の野望としてはいつか椎菜ちゃんのチャンネル登録者数が一億人行くのを見届けること!」
「それは絶対に無理だよ!?」
どう考えても無理だと思いますっ!
むしろ、そこまで行っちゃったらその……怖いです!
「あはは、まあ一億人は冗談だとしても、1000万人は案外行けるんじゃないかなぁ」
「それでもさすがに無理だと思うよ……?」
「いやいや、わからないよ? 日本にだって、1000万人超えた人だっているんだし」
「それはそうだけど……」
僕なんかがそこまで行くとは思えないんだけど……。
お姉ちゃんとしては行って当然、みたいに考えてるみたいだけどね。
「っと、話が逸れた。で、その100万人を突破した記念配信なんだけど」
「あ、うん、そうだよね、記念配信はしないとだよね」
本当は、20万人を突破した記念をやろうかなぁって思っていたのに、やる前に100万人行っちゃったからね……どうしてこうなったんだろう。
「最初は個別で! って思ってたんだけど……ほら、私たち姉妹じゃん?」
「そうだね」
「だからいっそのこと、姉妹で記念配信をやったらどうか、って打診が来てねー」
「あ、そうなの?」
「そうなんです。それに……前に一度やった私と椎菜ちゃんのコラボ配信は大受けだったからね。それも見越して、いっそドカンと一発かましてこい! って言ってた」
「な、なるほど……」
ドカンと一発って何だろう……?
たまにらいばーほーむの人が言うことはわからないです……。
「というわけで、いつやる?」
「んっと……いつにしよう?」
「今日が10月7日で……椎菜ちゃん、次の配信っていつやるの?」
「うんと……多分、平日のどこか、かなぁ。あのコラボ配信以降まだやってないし……」
「そっかー。平日って言うのもありと言えばありだけど……んー……折角の記念配信だし、やっぱり週末辺りがいいよねぇ……椎菜ちゃん、金曜日とかはどう? 夜の……そうだね、21時くらい」
「うん、全然いいよー」
「じゃあ、日時はそれでOK。あとは……あー、これは私たちというより椎菜ちゃんに対してのらいばーほーむからの指示……というか、お願いなんだけどね?」
「お願い? なんだろう」
僕……というより、あんまりライバー宛にお願いが来ることなんてほとんどないって前にお姉ちゃんから聞いてたけど……なんだろう?
「ほら、椎菜ちゃんも100万人行ったでしょ?」
「うん、そうだね?」
「基本的に、私たちって何らかの個性……というより、特徴となる配信を持ってるわけよ。私だったらイラスト配信だったり妹自慢配信だったり」
「あれ、今おかしな配信が聴こえなかった?」
「たつなちゃんなら歌配信。リリスちゃんはロールプレイにちなんだ配信を。刀君は全力朗読。いくまちゃんは恋愛ゲー配信。うさぎちゃんは鬼畜ゲー縛りプレイ配信。暁君は刀君と同じで全力朗読。デレーナちゃんはお悩み相談。はつきちゃんはクソゲー配信。いるかちゃんは歌配信+声真似配信。ふゆりちゃんは幼女教室配信。こんな風に、それぞれが自分の看板とも言える配信を持ってるんだけどね?」
千鶴お姉ちゃんだけよくわからなかったんだけど……。
あと、ツッコミがスルーされました。
「で、椎菜ちゃんだけど……椎菜ちゃんって基本的に雑談配信メインだよね? というか、それ以外はゲーム配信の時と、コラボ配信の時くらい……いや、よくよく考えたら椎菜ちゃんっていつぞやの記念配信の時以外、ずっと雑談だよね? 可愛すぎて忘れてたけど」
「う、うん、その、何をすればいいのかなぁってなって……」
「まあ、椎菜ちゃんはまだ初めてばかりだし、そもそも入るつもりで! っていうわけじゃなかったしねー。そりゃぁ看板なんて考える暇ないよね」
「あ、あははは……」
最初は困惑しかなかったけど、今は入れてよかったと思うくらいには楽しいと思えているしみんないい人だからね、すごく嬉しいです。
変なことを言うとちょっとアレだけど……その、正直みんな綺麗な人ばかりで僕としてはドキドキすると言いますか……うぅ、年上の人が好みだから余計にその、ね……?
三期の三人は慣れてるけど、他の一期や二期の人たちは慣れないので、未だに会うとドキドキするもん……明日は栞お姉ちゃんとお出かけだけど。
……あれ? そう言えば、二人きりでお出かけってデート……?
……はぅ!?
「椎菜ちゃんどうしたの!? 突然顔を真っ赤にして!?」
「あ、え、えと、う、ううん!? なんでもにゃいよ!? あっ……」
「ぐっ……あ、危なかった……この数日間で新たな耐性を得ていなかったらまた血反吐を吐いているところだった……」
「お姉ちゃん、お掃除したばかりだから控えてもらえると……」
「生理現象だから仕方ないかな」
「血反吐は生理現象じゃないと思うよ!?」
「いやほら、案外血反吐吐く人って多いし……」
「多くな……いとは言い切れないかも……」
普通に三期のみんなもそうだし、その、僕が暴走していた時だって、皐月お姉ちゃんやミレーネお姉ちゃん、恋雪お姉ちゃんに、栞お姉ちゃんたちもその、すごかったもんね……あれ? もしかして、血反吐って普通なの……?
「そういうことー。で、だけど、椎菜ちゃんに何か看板となるような配信を考えてほしいんだって」
「なるほど……」
たしかに、そろそろ考えた方がいいのかも。
100万人もいるみたいだし、新しい試みは欲しい、よね……?
「そこで、私は考えました」
「ふぇ?」
「先週の全員コラボの時、リリスちゃんが言ってたよね? 出張みたま家事サービス」
「そう言えばそんなようなこと……」
「で、その時のみたまちゃんはこう言いました。たまにならしてもいいかな、と」
「あ……」
「おそらくだけど、らいばーほーむ内において、一番家事が上手なのはみたまちゃん! つまり、みたまちゃんは家事の方面を活かした配信をすればいいと思うんだよッ!」
「な、なるほどっ!」
たしかに、看板を作るのなら、僕が得意とすることをやるのがいいのかも……。
ゲームはあまりやらないし、歌もそんなに歌ったことがない(というより、人前は恥ずかしいです……)し、声真似ができるわけでも、朗読が出来るわけでもないわけで。
それなら、僕が普段する得意な家事をするのがいいのかも!
「それに、ほら、最近コラボ配信が多いでしょ? だから、結構いい企画なんじゃないかなーって。で、どう?」
「うんっ! すごくいいと思う!」
それに、看板にしたいかもってあの時思っていたからね。
「うん、じゃあそうしよっか! それに、家事以外でも料理が出来るんだもん。それを活かした配信もできるよね」
「そうだね! また罰ゲームのお料理みたいにするのもありかも」
「たしかに。それはいいかもいいかも! 調理風景とかは出すの?」
「ふぇ? それってありなの?」
「問題ないよ? というかうち、別に実写系とか禁止されてないよ? まあ、外部が実写をするのはダメだけど、当人たちがやりたがった場合は別に問題ないって言ってるし」
「そ、そうなんだ」
実写をしてるのを見たことがないからてっきりダメなのかと……。
「ただまぁ……栞ちゃん、冬夜君、寧々ちゃん、椎菜ちゃんの四人を除いた社会人組は最悪身バレしても大丈夫だけど、学生でバレるのって椎菜ちゃん的にどうなの?」
「嫌、というより……単純に恥ずかしい、かなぁ……」
だって、おにぃたまやおねぇたまって言うんだよ?
それをしていることを知られたら……ね?
「そっかー。まあでも、この四人の中じゃ一番困りそうだよね、椎菜ちゃん。他の三人は……正直、色々とメンタルがオリハルコン並みに硬いし……というか、栞ちゃんに至っては仮に身バレしても全く問題ないレベルなんだよね」
「そうなの?」
「うん。だってあの娘、実家は京都の老舗旅館だしね。仮に身バレして色々と問題が起こって大学を辞めても実家を継ぐっていう手段があるから」
「ふぇ~~、そうなんだ! 栞お姉ちゃんってすごいんだね?」
「そうだよー。実際、栞ちゃんはすごいよ?」
「でも、冬夜お兄ちゃんと寧々お姉ちゃんは?」
「あの二人はほら、正直身バレとかものともしなさそうというか……」
なんとなくわかるかも……。
「だからまぁ、仮に実写をやるってなった場合、首から下だけでも椎菜ちゃんってバレそうだよね、実際問題」
「そ、そうなの?」
「いやだって、椎菜ちゃんくらい背が低くて、胸も大きいって……特徴あり過ぎだよ?」
「あ」
た、たしかに僕みたいな人ってあんまりいない気が……!
だって、胸が大きくても、千鶴お姉ちゃんや恋雪お姉ちゃんみたいに、背もあるもん!
うぅっ、僕にも身長があればっ……!
「まあでも、実際椎菜ちゃん……というより、みたまちゃんの愛され具合を考えると、案外バレても問題はなさそうなんだよね」
「そ、そうなの……?」
「みたま警察の存在があるから」
「みたま警察ってなに!?」
「それで、みたまちゃんは料理風景とか出すの? というか、実写系でやる?」
またスルーされました……。
「……とりあえずはそれでやってみようかなぁ。なるべく体を映さないようにします」
「おっけー。とりあえず、行く先は……まあ、順当にクジでいいんじゃない? 多分、みんな希望するよ?」
「そ、そうかなぁ……」
「そりゃそうだよー。あの時の罰ゲーム料理以来、みんな椎菜ちゃんの料理を食べたい! って言ってたし」
「そうなんだ。それはすごく嬉しいかも……」
多くの人に食べてもらう機会って、実際の所今まではホワイトデーくらいしかなかったし、そのホワイトデーだって作るのはお菓子だからお料理とはちょっと違うしね。
そう考えると、そうやっていろんな人が食べたいって言ってくれるのはすごく嬉しいし、幸せだと思います。
「というわけだから、このことは一応マネージャーに伝えるようにね?」
「うん! 伝えておきます!」
「よし。ん~~、いやぁ、なんだか眠いなぁ」
「まだ体調がすぐれないの?」
「んー、椎菜ちゃんのご飯を食べて元気いっぱいだけど……多分、疲労があるんだと思うなぁ。ちょっと寝ようかな……」
そう呟くお姉ちゃんの表情は、確かに眠そうでした。
眠いんだ……そっか……。
「じゃあお姉ちゃん、その、い、一緒に、寝る……?」
「え、マジで!? え、いいの!? 夢ではなく!?」
「う、うん、その、お姉ちゃんが嫌じゃなければだけど……」
「全然嫌じゃないですがむしろご褒美ですありがとうございますひゃっふーーーー!」
一応、暴走してる時はずっと一緒に寝てたと思うんだけど……お姉ちゃん、こうして大げさなくらいに喜んでくれるから本当に嬉しいです。
「ささ、寝よ寝よ! 今から寝れば多分……お昼か夕方かな?」
「多分? 夜ご飯の材料もあるから気にしないで大丈夫だよ!」
「さっすが椎菜ちゃん! それじゃあ、ベッド行こっか」
「う、うんっ……!」
なんだろう、改めて言われると照れちゃうし、顔が熱くなっちゃいます……。
「……あれ、なんかこのやり取り、エッチじゃね?」
変な気分になっちゃってお姉ちゃんが何かを呟いていたことに、僕は気付きませんでした。
◇
その後、僕とお姉ちゃんは仲良く抱き合うようにしてお昼寝……でも、時間的には朝だから……んっと、朝寝をしてのんびりと過ごしました。
こういう日ってなんだか温かくてすごく落ち着きます……。
======================================
発情モードのみたまを見たことで変な耐性が付いたおかげで、メイド服バージョンのみたまを見ても死にませんでした。不幸中の幸い。見てなかった場合……死にますね、普通に。
あと、しれっと愛菜の部屋について触れられてましたが、あいつは椎菜だいすき人間ですからね。仕方ないね。仮に部屋中がヤンデレよろしく椎菜やみたまの写真やお手製グッズだらけでもそれはもう一つの愛の形です。
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