#55 暴走椎菜ちゃん、死体追加でーす

 一歩間違えたら、ノ○ターン行きの回です。

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「えー、はい、まずは言わせてください。……本当にッ、来てくれてありがとうッッッ……!」


 未だおかしくなった椎菜にべったりくっつかれている愛菜だが、それよりも先にとばかりに四人に心の底からの感謝を述べていた。


「あ、あの愛菜さんがここまでの感謝を……!?」

「や、槍でもふ、降るんですかぁっ……!?」

「ん、軽く恐怖。あと、椎菜のことを放置しながらの感謝は天変地異」

「あぁ、これには私もおどろ通り越して薄ら寒く感じるよ」

「君たち明け透けに言うねぇ!? だけど、私は本当に助か――」

「ちゅ~……」

「んごっふぁぁぁ!」


 びしゃぁっ!


 ものすごく甘えて来る椎菜が再び頬にキスをしたことで、すごい勢いで愛菜の口から血が吐き出された。

 明らかに大丈夫じゃないし、どう見ても致命傷だろう。

 実際、この四人が来るまでに、愛菜は何度も血反吐を吐いたし、鼻血を吹き出した。

 その結果、家の中がちょっと……というか、かなり鉄臭い。

 なので、つい先ほどミレーネが玄関に置いてあったファ○リーズで室内をファブっていた。

 血とファブリーズの匂いが混じると言う、なかなかカオスなことになっているが。


「で、何があったんだい? というか、椎菜ちゃんのその状態は一体?」

「……わ、私の推測ごふっ……なんだけがふっ……た、多分、生理中にんぐふぅっ……み、みたまちゃんモードになったげはあぁっ!」

「血反吐吐くか説明するかどっちにしてくれないかい?」


 途中で血反吐を吐きながら説明するが、血反吐を吐くせいで話が進まず、皐月がそう指摘をする。

 外道である。


「皐月さん、それは多分酷だと思います」

「だ、大丈夫、です、かっ?」

「はぁっ、はぁっ……で、た、多分、へ、変身したことで、は、発情期的な状態にはいんごはっ……ごふっ……ったんだと、お、おも、思いがはっふぅっ……!」

「ん、絶対危ない。どんどん青白くなってる」

「どう見てもこれ、輸血が必要なレベルでしょ……」

「し、失血死はく、苦しそう、ですよねっ……! ぜ、絶対に嫌なし、死に方ですぅっ」

「恋雪。多分、愛菜さんなら椎菜さんが原因で失血死するのは割と本望だと思ってると思う」

「へ、へへへ……と、当然ごぱぁっ!」


 もはや血反吐を吐き過ぎて愛菜の体は血まみれである。

 外傷はないはずなのに服は真っ赤だし、机の上なんて血だまりが出来て収まりきらなかった部分がぽたぽた、ではなくだらだらと床に流れている。

 この状況で会話が出来てるこの五人は絶対おかしい。


「とりあえず、発情期になっちゃったのわかりましたけど……それ、戻るんですか?」

「生理が原因でこうなってるなら、生理が終われば戻るはず」


 ミレーネの疑問に藍華が淡々としながら答える。


 まあ、正解である。


 現在の椎菜の状態は、愛菜の推測が当たっており、発情期に入ってしまっているのだ。

 みたまモード時の椎菜の体は、一般的な人間のそれとは違い、狐の要素も入ってしまっているのである。

 とはいえ、通常であればここまで酷くなることはなかったのだが……問題だったのはみたまモードの要素である狐とは、野生の狐などではなく、神の使い的なあれだったのである。

 そして、みたまモード中の椎菜の体は普通の人間ではなく、半分神に近い物となっており、人間としての部分、狐の部分、そして神の部分が生理という物が原因で様々なバランスが崩れた結果、発情期に入ってしまったのである。


 つまるところ、戻るにはみたまモードを解除しなければいけないのだが……。


「はぁ~~っ♥ はぁ~~っ♥」


 ひたすらアレになってしまった椎菜にまともな思考ができるわけもなく、このままになってしまっているというわけだ。


 そして、椎菜がこうして甘える(発散)する相手と言うのは別に愛菜だけというわけではない。

 条件が当然存在しているのだが……最悪なことに、この場の全員がそれに当てはまってしまっていたのである!


「ごふっ……あっ、やばい、視界が…………ご、ごめん、あとはた、頼んだ……ぜ…………☆」

「愛菜――――――――――――!」


 そうして、短時間に多量の血液を流してしまった愛菜は、遂に意識不明となってしまった(尚、一時間もすれば戻る模様)。

 いい笑顔で倒れてしまった愛菜を見た発情モードの椎菜はと言えば、とろ~んとした顔でこてんと小首をかしげる。


「うわぁ……マジもんの地獄になってるんだけど……というか、愛菜さん、よく耐えたわね……」

「す、すごくいい、笑顔です、けど……だ、大丈夫、なんでしょうかっ……?」

「ん、絶対安静。とりあえず、放置。多分戻ると思うし」

「あぁ、藍華君の言う通りだね。とりあえず、私たちはあの椎菜ちゃんを元に戻さなければ――」

「……はれぇ……? みなしゃんがいましゅ~~……」

「「「「――ッ!!」」」」


 今の今まで愛菜にべったりで自分たちの存在に気付いていなかった椎菜が嬉しそうに呟くと、まるで肉食獣の如き目で四人を見つめだした。

 その瞬間、四人にはゾクゾクッ! と背筋に寒気が走る。


 ここにいたら何かが不味い気がする!


 そう思い、この場から退避すべく、逃げの体勢に入る。

 全員が一斉にダッシュ!


 だがしかし、相手は理性という名のタガが外れてしまったみたまモードの椎菜。

 バトル漫画のキャラクターのようなあり得ない動きを持って回り込む!


「なに!? どういう動きだいそれは!?」

「ひぃっ! なんだか怖いですよぉ~~っ!」

「あっ、ちょっ、何盾にしようとしてるの!?」

「ん、こういう時は先輩が後輩を守るべき」

「藍華さん!?」

「はぁ~~~、はぁ~~~~~……んくっ、ふぁあ……」


 相変わらず呼吸が荒い椎菜に、四人は後ずさる。

 膠着状態となったが……その状態にはすぐに壊される結果となった。


「えへぇ……」


 と、椎菜が可愛さと妖しさが見事に融合したような笑みを浮かべたかと思えば目の前から消えた。

 一体どこに、と疑問に思った直後、


「ひあぁぁぁぁ~~~!?」


 背後から恋雪の悲鳴が聞こえて来た。


「こゆきおねぇちゃぁ~ん……しゅきぃ~……♥ んちゅ……」


 後ろを見れば、恋雪が椎菜に襲われていた。

 突然抱き着かれた恋雪は、元々運動が出来る方じゃなかったためにすてーん! と倒れ込んでしまった。

 幸いなことに後ろはソファーだった(愛菜が座って無い方)ので怪我はなかったのだが、抱き着いた椎菜がうさぎの頬にキスをし始めた。


「はぅぅぅぅぅぅ!?」

「ん、ふ……えへぇ~……こゆきおねぇちゃん、やわらかくて……あったかぁい……」

「しょ、しょしょしょんなことはぁっ……!?」

「ぺろ……」

「あひぃ!?」


 噛みながらも否定する恋雪だったが、直後椎菜がぺろりと恋雪の首筋を可愛らしい舌で舐め、変な声を出していた。


「はむ……ぺろ……んんぅ……おいしい……」


 恋雪の上に寝転ぶ椎菜が、小さな舌を出しながら上目遣いで恋雪を見つめて、そう零す。

 その瞬間である。


 ぶばっ! と、恋雪は見事なまでに鼻血を吹き出した。


 尚、椎菜にかけまいと、ぎゅんっ! と顔は横に向けたが。

 地味にすごいことをしている。


「あっ、これは、死んじゃいまふぅ~~~~……きゅぅ……」


 そうして、年下に攻められた成人女性24歳は目を回して気を失った。


「こゆきおねぇちゃん、ねちゃったぁ……はぁ~~……んっ……じゃぁ~…………」

「ま、まずいっ! 生贄がやられてしまったわ!」

「ミレーネ君、君なかなか酷いことを言うね!?」

「早く逃げないとまずい。逃げるが吉――」

「あいかおねぇちゃん……」

「は、速いっ!?」


 今度の標的は藍華だった。

 ターゲットをロックオンした椎菜は、すぐさま藍華に接近しぎゅっ、と思いっきり抱き着く。


「えへへぇ……あいかおねぇちゃんもすきぃ……♥ ぺろ……」

「んっ……!」


 次なるターゲットである藍華に、椎菜は抱き着きながらなぜかお腹を舐め始めた。

 まさかの箇所を舐められ、藍華はぴくんっと反応する。


「ぺろ、ぺろ……えへぇ~……」

「ぐっ、お、恐るべし、椎菜っ……! ――あふんっ!?」


 いつものノリで言葉を発した直後、ツー……と、背中をなぞられてへにゃり、と座り込んでしまった。

 お互いの目が合う。

 となるとどうなるかはお察しである。


「ちゅ……」

「アッ――」


 頬にキスされるのである。

 しかも、首に手を回して正面からぎゅっとする形で。

 おかげで椎菜の大きく主張する胸が藍華の胸に当たり、ドギマギする。

 まあ、藍華も大きいのですごいことになっているが……。


「おねぇちゃぁ~ん……だぁ~~~いすきぃ……♥」

「ごふっ……」


 耳元で大好きと囁かれ、藍華、死亡(ちゃんと生きてます)。

 動かなくなった藍華から離れると、次なる獲物を見定め始める椎菜。

 相手は……。


「あ、あたしぃ!? さ、皐月さん助けてぇ!?」

「いやこれはもう諦めた方がいいと思う! とりあえず、私は更なる応援を呼ぼうと思う。いやまあ、道連れとも言うが……」

「あ、それいいですね――きゃぁ!?」

「みれーねおねぇちゃん……んふふ…………」


 話している最中に椎菜がミレーネを襲う!

 普通であれば抱き着かれただけではあるが、相手はみたまにおぎゃった女!

 抱きしめられた瞬間、


「みたまママっ……!」


 一瞬でおぎゃった。


「えぇぇ……」

「ふぁっ……えへへぇ~…………ぎゅぅ~ってして、あげましゅ……♥」

「ヤッタァァァァァァァ! あたしの年一の癒しィィィィィィ!」


 ぎゅっと頭を胸元に抱き寄せられ、ミレーネはテンションが上がった。

 それでいいのか21歳。

 これには皐月も困惑である。

 決して引かない辺りがらいばーほーむしていると思う。


「みれーねおねぇちゃんはぁ……がんばってましゅからぁ……ごほうびぃ~……ちゅ、ぺろ……」

「尊死ッ! ごほぁっ!」


 ミレーネ、おでこにキス+頬ぺろで無事死亡。

 おそらく最速で死んだのではなかろうか、と皐月は冷静なのか気が狂ってるのかわからない思考をしていたが。


「ハッ! もう私一人しかいない!?」


 気が付けば皐月一人になっていた。

 シスコンは出血多量で気絶し、恋雪は年下の攻めに目を回し、同期の藍華は囁きボイスに持っていかれ、ミレーネはおぎゃった。

 残るは皐月ただ一人である。


「くっ、こうなったら他のメンバーの応援を呼ばねばっ……!」


『すまないっ! これはもう私たちの手に負えるようなものではない! 他にもおうえn――(ここでメッセージは途切れている)』


「さつきおねぇちゃん……」

「な、なにかなっ!?」


 ゆらり、と体を揺らしながら椎菜が近いて来て、目にも止まらぬ速さで抱き着く。

 皐月的に初めて椎菜に抱き着かれたが、その柔らかさと小ささ、温かさにまるで雷を打たれたが如き衝撃を受けた。


(なっ、こ、これが椎菜ちゃんっ……!?)


 抱き着かれただけで意識が持っていかれそうになるくらい、破壊力が凄まじかった。

 普段のあのほわほわとした雰囲気を持った椎菜が、積極的に抱き着いてくる……これだけで萌え死にしそうである。

 がくり、と思わず膝をついてしまう。


「さつきおねぇちゃぁ~ん…………んちゅ……ぺろ……はむ……」

「~~~~っ!」


 膝を屈した皐月に追い打ちをかけるかのように、椎菜は頬にキスをして舐めて、耳を甘嚙みした。

 傍から見たらかなりヤバイ絵面である。


「あっ、や、やめっ……そ、そこはむりんんっ!?」

「はむ、はむ…………んん……れろ……」

「ひぅぅぅぅ!?」


 甘噛みからの耳舐めのコンボに、皐月がやたらと可愛らしい悲鳴を上げたッ!

 そして、あまりにも強すぎる刺激に……


「かはっ……」


 吐血した後意識を手放した。

 結果、桜木家のリビング内は酷く静かになり……そして、そこには死体と血だまりだけが残った。

 傍から見たら、ケモっ娘幼女が猟奇殺人をした後にしか見えないのが酷い。

 ある意味殺人かもしれないが……。


「はぁ~~~……ふぅ~~……んん……もっとぉ……」


 五人を襲ってもまだ足りないと呟く椎菜はふらふらぁ~、としながら死体と化した姉にくっついて寝息を立て始めた。



『すまないっ! これはもう私たちの手に負えるようなものではない! 他にもおうえn――(ここでメッセージは途切れている)』


「……うち、ちょいと行って来るわぁ」

「……あたし、すっごく嫌な予感がするぞ、栞先輩」


 星波大学の中庭にて、二人の女性が話していた。

 寧々と栞である。

 二人は同じ大学であることが発覚してから、よく一緒に過ごすようになった。

 ここに冬夜も混じる場合がある。


「うち、心配になってしもうてなぁ。そもそも、あの皐月が途中のメッセージを送るなんてよっぽどや。なら、友人としていかな」

「そ、そっか。わかったぞ! じゃあ、何かあったらあたしを呼んでね!」

「ありがとなぁ。じゃあ、行って来るわぁ」


 そう言って、栞は大学を出て桜木家へ向かった。

 栞自身、今日の講義がたまたま休みになったので、元々行こうとは思っていたのだが、皐月のあのメッセージを見て心配になって見に行くことにしたのである。

 やや急ぎ足で桜木家へ向かい、到着。

 インターホンを鳴らしても誰も出ず、首を傾げたが中に入ればわかるだろうと、栞は桜木家の中へ入って行った。

 そこに、最強の狐っ娘がいるとも知らずに……。



「……ん? なんやぁ……?」


 足を踏み入れた栞が真っ先に感じ取ったのは、強烈な血の匂いだった。

 それはもう凄まじい何かだった。

 だが、なぜだろうか、それ以外の不思議な匂いも感じるような……?

 と、血の匂い以外にも感じる、何かがわからず、栞は首を傾げる。

 そして、靴を脱いで家に上がり、リビングへ向かい……。


「……し、し……死んどる!?」


 リビングに横たわる五人の死体を見て驚きの声を上げた。

 だが、これが行けなかった。

 この場にいるのはその死体を作り出した張本人の、お狐様ロリ!

 新たな獲物がやって来たとばかりに、むくりと起き上がると……


「――しおりおねぇちゃぁ~んらぁ~……」


 とろ~んとした笑みでそう呟くのだった。



 その後、案の定というか、栞も椎菜に襲われる羽目になった。

 しかも、他の五人よりも酷かったため、それはもうえらいことになった(一応健全の範囲です)。


 ちなみに、栞が一番酷かった理由は、単純にコラボの時に仲良くなってしまったこと、さらには百合百合なことをしてしまったこと、それと背丈がほとんど変わらなかったためである。

 そして、その後特攻しに来た寧々も音信不通になった栞を追ってやってきたが……結果はお察しである。


 ただ、寧々を襲ったところで疲れてしまったのか、椎菜は眠ってしまい、その間に復活した愛菜が死んでいた六人をなんとかそれぞれの家に送り届けた後、期間が終わる数日間、一人で頑張った。

 それはもう、頑張った。

 魔王にたった一人立ち向かう勇者の如き頑張りだった。


 文字通り死線を彷徨い、吐血しながらも愛菜はなんとか椎菜が落ち着くまで一人で抑え込んだ。

 その雄姿を知った他のライバーたち(特に被害に遭った六名)は、こう話す。


『『『愛菜(さん)(先輩)マジパネェっす……』』』


 と。


 あと、普通に敬礼した。

 そして、皐月たちはいい焼き肉屋に連れて行こうと思ったそうな。


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 いやもう、何この……何? 自分でも何を思ってこんな頭のおかしい話を書いたのかわからん。若干深夜テンションだったかだろうか……うん、酷い!

 あと、椎菜のキャラ崩壊感が凄まじかった……いやまぁ、これはこれで書いてて楽しくはあったけども。

 念押ししておきますが、栞は健全な範囲内で襲われました。椎菜って知識とかないからね。知識があったらヤバかったけど……。

 一人で頑張ったシスコンに、敬礼!

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