#53 非現実的状況と、心を抉る文字列

 初のキャラ崩壊! あと、なんかとんでもねぇことになってるけど、この作品はノリで出来てるよ!

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 コラボ配信を終えて、再び月曜日。


 僕のクラスではらいばーほーむを見る人がかなり多いらしいです。

 個人的に、あの時の配信は色々とあり過ぎてその、あまり感想を訊きたくないと言いますかっ……!

 あと、しれっと僕の謎の特技が出ちゃったのもあるし……柊君と麗奈ちゃん以外にはまだバレてないけど……。


 ギリギリだとは思うけどね!


 あと、コラボ配信の翌日に神薙みたまの姿になる条件を色々と調べた結果、言葉の間が十秒以内なら機能する、ということがわかったので、僕はその事実を頭に叩き込みました。

 あれは本当に見られちゃだめっ……!


 ただ、その過程で色々とわかったこともあって、実はあの発光現象……消せるみたいでした。

 それ、もっと早く教えてほしかったよね、という気持ちが強くなりました。


 ちなみに方法としては至ってシンプルで……単純に光りたくない、そう思いながら変身するだけというか、なんて言えばいいんだろう……その辺りの設定が出来るみたいでした。

 イメージ的には電化製品が近いかもしれないです。


 あらかじめこういう風にしたい! って思いながら一度変身すると、それ以降それで固定されるようで……お姉ちゃんにお願いされて、色々実験しました。

 それこそ、魔法少女風の変身から、特撮のヒーローみたいな感じのことまで色々。

 最終的には、ぽんっ! という軽い音と一緒に煙が出る、という演出に変わったけど。


 なんというか、自由度がすごいです……。

 けど、これで変身の時にいちいち目立たなくなります……。

 まあ、あまり変身する機会もないと思うんだけど……。


 閑話休題。


 お話を戻して、僕のクラスのこと。

 らいばーほーむを見ている人が多い関係上、僕のことも見ている人が当然いると言うか……実際にバレそうになった時、その、すっごくテンションも高かったし、ね……。


 ちなみにと言いますか、千鶴お姉ちゃんとの配信や、あの全員コラボ配信を経て、僕たちらいばーほーむみんなの登録者がすごく増えたそうで……その……一番すごかったのはお姉ちゃんと僕といいますか……お姉ちゃんはなんと100万人を超えました。


 他にも栞お姉ちゃんは配信前は78万人だったのが、今では95万人に。

 皐月お姉ちゃんは98万で、俊道お兄ちゃんは91万人。


 二期生だと、ミレーネお姉ちゃんが83万人で、杏実お姉ちゃんが80万、冬夜お兄ちゃんが79万人、恋雪お姉ちゃんが86万人に。


 僕たちの方は……寧々お姉ちゃんが39万人で、藍華お姉ちゃんが34万人、千鶴お姉ちゃんが38万人、それで、その僕が、ね…………なぜか、あの、すみません………………105万人ってなにぃ!? え、何あれ!? どーゆーことなのーーーーー!?


 何をどうしたら、80万人も登録者が増えるの!? ねぇ!? 怖い! 怖いよぉっ!

 だからもう、色々と僕が言うのはすっごく変だし、似合わないし、その、キャラが違うとは思うけど言わせてください!


 ――そうはならんやろ!


 って。


 おかしいっ、た、たしかに全員コラボの時、最後の同時接続数は100万人を超えて、その更に先の人数になってたけどっ!

 具体的には150万人くらいっ!

 何をどうしたら、その内の五割強が登録する事態になるの!?


 怖いよぉっ……インターネット怖いよぉっ……な、なんで僕のチャンネルがそんなことになってるのぉっ……僕死ぬの? 死んじゃうの!?


 一人で戦々恐々としていたら、マネージャーさんが、


『まあほら、神薙みたまってその、万人受けする可愛さですし、というか知ってます? あの配信で一番目立ったの、何気にみたまさんですよ? というか……もともとみたまさん自体、視聴を敬遠されていた理由がですね『間違いなく沼るから』だそうでして。ですが、前回は初の全員コラボということもあり、見逃せなかったわけです。その結果……全員沼りました。あと、あれですね、最後の『魔法少女だぞ☆』が効きました』


 というお話が来まして……沼るって……何?


 もうわからない……僕はVTuberがわからないよ……。

 動画配信者って、夢がある、ってよく言われるけど……ここまで来ると、夢を通り越して悪夢だよぉ……。


 も、もちろん、嬉しくないわけじゃないけど、その……だって、みんなの方が僕よりもいっぱい配信してるのに、なんで僕がこんなに突き抜けちゃったの……?


 このことをみんなに相談したら、


『『『妥当。むしろ遅いくらい? あ、100万人おめでとう!』』』


 って言われましたぁ……。


 すごくいい声でいい笑顔だったのを覚えています……しかも、本当に嫉妬とかないんだもん、なんで……本当になんでぇ!?


 ……まあ、はい、その、神薙みたまはそんな状況になりました……。


 僕って、本当に死ぬのかなぁ。

 そんな心配を抱えつつ、学園へ向かいました。



 学園にはかなり時間をずらして到着。

 時間的には、始業ギリギリだけど……。


 いつもなら遅くもなく早くもない、丁度いい時間帯に入ってくる僕だけど、今日は珍しく遅刻ギリギリとまではいかずとも、遅い登校だったのでかなり視線を集めちゃったけど、配信の感想等を聞くよりはマシっ……!


 そうして、何とか無事になんてことないHRを終えて、一時間目~四時間目の授業を終えて、お昼休み。

 柊と麗奈ちゃんと僕の三人で一緒にお昼を食べます。

 場所は、窓側の一番後ろの席で、丁度前の席が柊君の席なので、麗奈ちゃんが近くから椅子を引っ張って来て三人で食べる。


「それで? 今日遅く来た理由は?」

「……な、なんの、ことかなぁ~~っ……?」

「あたし、ここまでバレバレな誤魔化しをする人、二次元以外で初めて見た」

「椎菜は嘘が苦手だからな……」


 よくおわかりです……。


「で? 何があった」


 改めて柊君に訊かれて、僕はあっちを見たりこっちを見たり、天を仰いだり、そんな風に四方八方に視線を彷徨わせて、俯きながらスマホの画面を点けたまま、スッと二人の前に置きました。

 ちなみに、周囲の人たちがこっちを見ていないことは把握済みです。


「ん? スマホで、これは―――ッ!?」

「――ッ!?」


 単純に気になると言った表情を浮かべる柊君と、なになにー、と好奇心でいっぱいの麗奈ちゃんの二人の表情は、目を限界まで開いて驚きに満ちた表情をしていました。


 あ、この表情、僕が男だった時に学園祭で着るナース服をお部屋で試着していた時に、突然入って来たお姉ちゃんが僕を見た時の顔と同じ……。

 ちなみに、その後お姉ちゃんは気絶しました。


「はい、あの……なぜか、その、すごいことになりまして……」


 まるで事情聴取を受ける人のように縮こませながら、僕は呟くようにそう言いました。


「――ハァ~~~~~~……いや、まあ、一昨日のアレ、すごかったからな……」

「だ、ね……というか、全員揃うと、あそこまで酷くなるのか~っていう気持ちと、もっと見たいと言う気持ちと、え、こわ、っていう気持ちの三つが出て来たくらいだし……」

「正直俺もあれは腹抱えて笑ったが……実際、あのうちの二人が知り合いどころか、片方親友で、片方がその姉と思うと、複雑だったが……というか椎菜、お前あの特技披露したのかよ」

「え、えへへ、頼まれまして……」

「まったく……あれ、マジでヤバいんだからな? 食べたことがあるから言うが、マジで兵器レベルだしな」

「え、なになに? 高宮君ってあれ食べたことあるの?」

「……まあ、な。俺の時は饅頭味のサバの味噌煮だった……」

「うわぁ……」

「あ、あははは……」


 遠い目をしながら語る柊君からは、なんとも言えない哀愁が漂っていました。

 あの時大変だったもんね……確か当時は、柊君と別のお友達の権田藁君が一口食べてダウンしたもんね……。


「なぁ、一昨日のらいばーほーむのコラボ配信見た?」

「見た見た! いやぁ、マジで面白かったよなぁ!」

「……!」

「お前ら推し誰?」

「たつなさん」

「俺はふゆりん」

「は? みたまちゃん一択だが?」

「ぐふっ!」


 クラスメートから僕の分身が好きと言われて、思わず吐血しそうになりました。


「し、椎菜! しっかりしろ!」

「椎菜ちゃんから聞いたことない声が聞こえたよ!? 大丈夫なのそれ!?」

「だ、大丈夫、です、ち、致命傷……」

「いやそれ絶対大丈夫じゃない」

「うん」


 ふぅ、ふぅ……お、落ち着こう、僕……大丈夫……みんなが好きなのはあくまで僕じゃなくて、僕が演じる神薙みたまだから……あれ? でも今の僕って神薙みたまの姿になれるから……うん、気のせい!


「いやまぁ、みたまちゃんが可愛いのはわかる。だが、あれはもうなんつーか……正直絶対不可侵領域だろ」

「……柊君、僕って、何?」

「哲学か?」

「自分自身を証明する方法はないと思うなぁ」


 ……僕、クラスメートから絶対不可侵領域って思われてるの……?


「あ、じゃあ、あれは? ひかりん」

「シスコンはなぁ……」

「シスコン大魔王だしなぁ……」

「いやむしろ邪神だろ」

「それ、配信中に視聴者に言われてたが、邪神殺すって言ってたぜ」

「あぁ……あれだろ? みたまちゃんが狙われるかもしれない→なら邪神は敵→殺さねば! みたいな」

「「「あぁ~~~!」」」

「……柊君、僕のお姉ちゃんって……」

「言うな、あの人は最初からおかしい」

「高宮君、何気に酷いこと言ってるよ?」


 ……僕のお姉ちゃん、実際の所どう思われてるんだろうね……。

 知りたいような、知りたくないような……。


「は~、何度見ても面白いなぁとは思ってたけど、全員コラボは圧巻だったよねぇ」

「わかるぅ~、もうほんと面白かった」

「私、刀君の暁君の絡みで最高にハイになった!」

「あぁ、あの罰ゲーム料理の時のねぇ~。あれすごかったよねぇ~。即落ち二コマだったし!」

「でもやっぱり、みたまちゃんが可愛い」

「「「それな」」」

「ごふっ」

「椎菜!? 大丈夫か!?」

「明らかにまずくないそれ!? というか、そういうのは色物の人たちの反応だよね!? 主に、あの、お姉さんとか! 例のお友達とか!」

「朝霧、お前も地味に酷いこと言うな……」


 あぅぅ~~~~~、は、恥ずかしい……本当に恥ずかしいよぉ~~っ!

 寧々お姉ちゃんは、よくお友達とお話している時に心の中で自慢してるって言っていたけど、僕には無理だよぉっ!


 そもそも、どうして僕はVTuberをしてるんだろうね……楽しいのは事実だし、たくさんの人が笑顔になってくれるのはすごく嬉しいけど……元々僕、人前に出て来るようなタイプじゃないよぉ……。


「でも、最後のオチはすごかったよね!」

「ああ、あれね!」

「正直あれがいっちゃん面白かったよな!」

「それな!」

『『『みたまちゃんの無差別殺人オチ!』』』

「( ˘ω˘)スヤァ」

「あぁっ! 椎菜がやたらいい笑みで逝ったぁぁぁぁぁぁぁ!」

「椎菜ちゃんしっかり! 気を強く持って! 椎菜ちゃーーーー――ん」


 この直後、僕はエゴサをして知りました……。

 あの配信がきっかけで僕が、


 ――無差別級人型殺人兵器魔法少女神薙みたま☆――


 と呼ばれていることを。


 あまりにもあんまりなあだ名に、僕の心のヒットポイントはすぐにマイナスに突入して、記憶と意識を彼方に吹き飛ばしました。


 泣いていいですか? いいですよね?


 ……ふぇぇぇぇぇぇぇんっ!


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 無差別級人型殺人兵器魔法少女神薙みたま☆ってなんだ……。

 ネーミングセンスなんてもんは私にはないので、なんか頭の悪い名前が完成してしまった……くっ、ネーミングがほしいっ!

 あと、なんかみたまのチャンネル登録数がえげつないことになってますが、マジです。

 元々みたまは人気がありましたが、なんというか……大半が先駆者たちの言葉により、『あ、絶対にハマるし沼るしでヤバいぞ……?』と思った結果、手を出してきませんでした。主に、他のライバーを見ていた視聴者たちとか。

 だがしかし、今回の全員コラボとかいうとんでも企画且つ、3D解禁ということで結局自制心を制御できず、見てしまったんですね、「魔法少女だぞ☆」というセリフを。

 結果、視聴者たちはその可愛さにやられ、脳死でチャンネル登録ボタンを押していたとさ。

 尚、みたまの配信を見ない理由の一つに、単純にみたま警察の存在とか、18禁を消して回る者たちの存在があるから、というのもあったり……一体どこのシスコンとロリコンとママなんだ……。

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