#42 あと片付けと、閉会式

 翌日。


 今日は今日で、学園祭のお片付け+閉会式があります。

 開会式はなかっただろ? って思うかも知れませんが、閉会式だけはあるんです。

 とは言っても、閉会式っていうのは半ば建前で、その内容は各部門の一位~三位を発表して、表彰するのがメインなんだけどね。

 ちなみに、一位を取ると、そのクラス、もしくは出店に参加した人全員にクオカードが配られます。


「なぁ、せっかく作った机とか椅子をばらすの、もったいなくね?」

「だなー。折角だしこれ、学園に寄付でもする? だって、出来メッチャいいし」

「和浦はどう思うよ」

「俺としては、残してくれた方が精神的にいい。俺の力作だぞ?」

「だよな! んじゃ、これは寄付ってことで」


 と、和浦君がデザインして、主導して作った机や椅子は学園に寄付することになりました。

 お片付けとは言っても、結構やることはそこまで多くないです。

 飾りを外して、調理器具等を調理室に戻して、それがあらかた終わったらお掃除をして、最後に空き教室に入れた平常時に使っている机や椅子を戻す。

 これがお片付けの流れです。


 僕の担当は調理道具のお掃除ですね。

 当然洗わなくちゃいけないので。

 調理室で黙々と洗って、教室に戻って来ると大分綺麗になっていて、あとちょっとで終わり! というところでした。

 早い。


 まあでも、僕たちのクラスって、飲食店だったから、そこまで大掛かりじゃなかったので、そんなにお片付けが大変じゃないのかも。

 お化け屋敷をやったクラスはすっごく大変そうだったし、コーヒーカップをしていたクラスなんて、分解作業もあったみたいだからね……。


 あと、一番大変なのって、多分だけど校庭でやってたあの大掛かりなお化け屋敷だと思います。

 二クラス合同での物だから、人手は多いのかもしれないけど、それでも大変そう。


 そうして、午前中で何とか無事にお片付けは終わり(終わってないクラスもあるけど……)、一旦閉会式になりました。


「はーい、みなさん集まりましたね? 集まりましたよね? ではでは! 姫月学園学園祭の閉会式を始めまーす!」

『『『Yeahhhhhhhhhhhhh!』』』


 閉会式のテンションじゃないと思います……。


 と、これがこの学園の普通らしくて、去年は驚いたものです。


 というより、この学園ってイベント系は本当にテンションが高くて、やる気いっぱい! って感じで、このほかだと体育祭や球技大会とかもすっごく騒がしくなります。


 球技大会はもう終わっちゃってるけど、体育祭は十一月上旬くらいにあるし、多分そこでも色々ありそう……。

 あ、その前に修学旅行もあったような……。


 あれ? もしかして、二学期ってすっごく多忙になる予定ですか? なっちゃう予定ですか? 僕。

 だって、学園祭、体育祭、修学旅行、中間テスト、期末テスト、リアルイベント…………あっ。


 本当に気を付けよう……特にテスト。

 成績を落としちゃったら大変だもん。


「まずは、今年度の各部門の最優秀賞を発表していくぞーーー!」

『『『Yeahhhhhhhhhhhhh!!!』』』

「まずは、屋台部門! こちらは、クラスでの出し物以外のお店が対象ですね! 主に、校舎の外の道での屋台や委員会、部活動の出し物が含まれております。こちらの評価は全て売り上げ+アンケート基準です。ではでは、第三位から行きましょう! まずは、第三位!」


 と、環先輩がそう言うと、体育館内にドラムロールが流れ始め、ステージの壁にはスクリーンが降ろされていて、そこにはカウントダウンが映し出されていました。

 毎年こんな感じです。


「野球部のファストフード屋台、甲子園です! おめでとうございまーーーす!」

「だぁぁぁ! 三位かぁ!」

「結構売り上げよかったのに、くっ、来年頑張るぞ!」

「「「うっす!」」」


 発表されると同時に、野球部の人たちの声が聞こえてきました。

 あ、言っていなかったんですが、この閉会式に参加する際、クラスごとという決まりはなくて、自由に好きな場所で参加することが出来ます。


 ちなみに、近くには柊君と麗奈ちゃんがいます。

 それから、こういった屋台部門は各参加者の代表、もしくは部長や委員長が前に来るように言われてます。


 クラスの場合は、実行委員だね。

 もし選ばれた場合、僕か柊君が前に出ることになってます。


「えー、甲子園に来たアンケートを見ますと、『野球ボールを模したおにぎりが結構おいしかったです』『なんか、バットみたいな形をしたホットドッグが面白かった』とのことです! あー、そう言えばあのホットドッグすごかったですよねぇ。なんでも、パンは手作りとか! いやはや、さすがですね。ではでは、第二位!」


 再びドラムロールが流れて……


「かき氷屋、氷室です! おめでとうございまーーーす!」

「よっしゃ!」

「マジで!? 私たち二位じゃん!」

「いやぁ、頑張ってよかったっ!」

「えー、氷室に来たアンケートを見ますと『暑かったので非常に助かりました』『氷自体が甘くて、しかも手作りのシロップが美味しかったです』『やっぱかき氷しか勝たん』とのことです。私も食べに行きましたが、とても美味しかったですねぇ! この方たちは一年生とのことなので、是非とも来年も頑張ってほしい! ……さてさて、ではでは、屋台部門の第一位の発表です! 第一位は!」


 再びドラムロールが流れる。

 一位の発表なので、さっきよりも長いです。


「疑似居酒屋、渓流です! おめでとうございまーーーーーーーす!」

「マジでぇ!? あれで一位取れんの!?」

「やったな!」

「あぁ! うっわ、マジかぁ!」

「えー、こちらの渓流のアンケートには『なんかメッチャ可愛い狐耳のメイドが美味しそうに食べてたのが気になったから行ったら、全部美味かった』『美味しそうにアユの塩焼きを食べるメイドを見て行きました。最高でした』『メイドが可愛かったので』『高校だから無理だけど、酒が欲しくなる味でした。あと、メイド可愛い』とのことですね。ちなみにですが、他のコメントの8割くらいに謎のメイドが書かれてます、さて、一体二年一組所属のミスコンの優勝者の、桜木何さんなんでしょうね」


 それもう言っちゃってるよね?!

 僕だって言っちゃってるよね!?

 しかも、僕がきっかけなの!?


 た、たしかに、あそこのお店の塩焼きは美味しかったし、もつ煮も良かったけど……け、けど、僕が食べてる姿を見ただけでそうなるの……?


「椎菜すごいな、お前」

「福の神だね?」

「やめてっ、僕はそう言うのじゃないからっ……!」


 しかも、ちょっと見られてるもんっ! あ、あの娘じゃね? って言われながら見られてるもんっ!

 うぅっ、恥ずかしいよぉ~~~~っ!


「まあ、私もその光景を見て行きましたが、マージで美味しかったです。普通に魚の質が良くてびっくりしました。……ともあれ! 見事一位となった方はこの後前に来てくださいねー。最後に表彰がありますので。……さて! 次の発表と参りましょう! 続いては、アトラクション部門! こちらはクラス、個人、部活、委員会問わずの物となります! では早速発表と行きましょう! まずは第三位!」


 アトラクション部門の方に代わり、ドラムロールが流れて……。


「三年四組、イライラストラックアウトです! おめでとうございまーーす!」

「やったぁぁぁぁぁ!」

「おっしゃぁ!」

「頑張って煽った甲斐があったぁっ!」

「えー、こちらに届いたアンケートを見ますと、『なんか、メッチャ煽って来る的役がいたけど、ボールをぶん投げたらメッチャスッキリした』『日頃のストレス解消になりました』『ムカついたけど最終的に派手にぶっ飛ばされてくれたので最高でした』などなど、ストレスを溜めて、最後に当ててストレス発散! これがとても好評だったようです! 私も行きたかったのですが、時間の関係で行けなかったですね。あと、普通に人気でしたし。さて! 続いて第二位!」


 そんな出し物があったんだなぁなんて思っている間に次の発表がされる。


「二年五組、人力コーヒーカップ、回転野郎です! おめでとうございまーーーす!」

「あれで二位とかおかしくね?! 提案しといてなんだけど!」

「必死こいて回しまくった甲斐があったな!」

「全身筋肉痛だけどな!」

「名誉の筋肉痛か……」

「いやぁ、このクラスすごかったですよねぇ。届いたアンケートを見ますと、『回しまくってる人たちの気迫がすごかったし、本格的なコーヒーカップで驚いた』『頭おかしいくらいにできよくて笑ったw』『高校やることじゃねぇ!(誉め言葉)』だそうです! いやぁ、私も行ってみましたが、マジモンのコーヒーカップがそこにあって驚きました。しかも、回してる男子の筋肉が実に素晴らしかったですねぇ。……はい、ではアトラクション部門の第一位の発表です! 第一位は!」

「あのコーヒーカップ、俺を敵対視してた気がするんだが……」

「というより、リア充の人相手には本気だったみたいだよ? 男女問わず」

「マジかよ……」

「あ、あはは……」


 あのコーヒーカップ、たしかにすごかったもんね……。

 そう言えば、柊君に対する怨嗟がすごかったもんね、あれ。


「三年二組、三年三組合同による、本格お化け屋敷、呪館です! おめでとうございまーーーーーす!」

「よっしゃあぁぁあああああああああああああ!」

「やっぱ合同にした甲斐があったなァッ……!」

「泣きそう!」

「最後の最後で一位とか、マジ最高!」

「後で胴上げしようぜ胴上げ!」

「賛成!」

「えー、大変盛り上がってますねぇ。さて、こちらのお化け屋敷に届いたアンケートを見ますとですね『めっちゃ怖かった……』『驚かせ方が上手くて、ほんとに怖かったです』『ちょっと泣きそうになりました』『←こいつ泣いてました。私も泣きました』『マジで遊園地で運営しても儲かりそう』『白い着物を着たボロボロの女が一番怖かったです』とのことですね! ちなみにですが、中にはあまりの怖さに泣いた上に、おんぶで出て来たメイドさんもいたそうです! あ、私も泣きそうでした」

「~~~っ」

「椎菜お前……」

「椎菜ちゃん……」

「見ないでっ、生暖かい目で僕を見ないでぇ~~~~っ!」


 だ、だって、本当に怖かったんだもん!

 一人だったら絶対大号泣してたもん!

 うぅ……。


「後で、三年二組と三組の代表者一名ずつ、こちらに来てくださいねー」


 なんだか色々と恥ずかしいです……。

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