#31 お店は順調、知り合いが来店
それから一時間以上経つと、ちらほらと人が入り始めてきました。
「お帰りなさいませ! お兄様方っ!」
「「「え、つよっ……!」」」
「奥の席へご案内いたしますっ!」
そうして、三人くらいの男性のお客さんを案内した直後に、新しく二人の女の人がお店にやってきました。
「お帰りなさいませ、お姉様方っ!」
「え、天使……?」
「待って待って? 軽い気持ちで入ったのに、とんでもない美少女が出て来たんだけど? え? 夢?」
「あの、大丈夫ですか……?」
「あ、い、いえ! なんでもないあります! あ、二人です、入れますか?」
「はいっ! それではこちらへどうぞ!」
一度やってしまうと案外慣れるみたいで、なんかもう羞恥心が無くなってきました。
……元々、神薙みたまで色々やってたからね……。
そう言えば、僕が接客する度に、顔が赤くなる人が多いんだけど……どうしてだろう?
「こちら、メニューですっ! お決まりになりましたらお呼びくださいっ!」
「あ、は、はい」
メニューを渡してから、キッチン側へ。
基本的に僕の役割は接客6割の調理が4割です。
負担大丈夫!? って聞かれたけど、今は体力もある方だし、お料理は普段から慣れているから全然疲れないしね!
「こっちは大丈夫~?」
「あ、椎菜ちゃん! うん、全然! やー、あらかじめ下準備をしておくとあんなに楽なんだねぇ」
「オレも助かったぜ。ってか、桜木のおかげで料理が上手くなったしよ! マジ感謝だって」
「そう? それならよかったよ~」
チリーン
「あ、お客さんだ。ちょっと行ってくるね~」
どうやらお客さんが来たみたいで、フロアの方へ移動。
「椎菜ちゃん、一応人がいるんだし、無理しなくていいんだよ?」
「ううん、だいじょーぶ!」
そう言いながら誰が来たのかなぁ、なんて行ってみると、そこには寧々お姉ちゃんに藍華お姉ちゃん、千鶴お姉ちゃんに、ミレーネお姉ちゃんがいました。
「あっ! みんなー!」
「やっほー! 椎菜ちゃん! 遊びに来たぞー!」
「ん、久しぶり」
「へ、へ~! ず、随分可愛い、んじゃない!?」
ちなみに、ミレーネお姉ちゃんは、準備期間の途中に、折角だからと招待しました。
「来てくれたんだねっ、ミレーネお姉ちゃんもっ!」
実はというか、ミレーネお姉ちゃんからは、敬語じゃなくていいと言われまして、あれからずっとため口になっています。
というより、他のらいばーほーむの人たちからも、敬語じゃなくて、普通に話してほしい、って言われているので、今後はそう言うことになりました。ちょっと、気恥ずかしいけど。
「え、えぇ、ほ、ほら、一応誘われたしっ? だから、まあ」
「ん、校門前でちょっとうろうろしてたところを私たちが見つけて、気になって話しかけたら反応で色々察した」
「そ、そんなことないけどっ!?」
「それで、千鶴お姉ちゃんは――」
「――ふああぁぁぁぁぁぁぁ~~~~!?」
「ふわぁ!? ち、千鶴おね――んむぅっ!?」
「可愛いっ! 可愛いですよぉ~~っ!」
さっきまで、ずっと無反応だった千鶴お姉ちゃんが突然豹変したように僕を思いっきり抱きしめてきました。
ま、またっ!?
あうぅ、い、いい匂いがするし、すっごく柔らかいしで……はぅぅぅ~~~~!!
「お、おい、桜木がなんかすげぇエロい大人のお姉さんに抱きしめられてるぞ!?」
「どういう状況なんだあれ!?」
「よく見たら他の三人もすっごい美人じゃない……?」
「い、一体どんな関係……!?」
「ぷはっ! はぁ、ふぅ……い、いきなり抱き着かないでよぉっ……!」
「あらあらぁ~、ごめんなさいねぇ~。そこに可愛らしいメイド服の椎菜ちゃんがいたものですからぁ~」
「もぅっ、するならするって言ってくださいっ! あと、するなら、人目のない所でお願いしますっ!」
(((マジでどういう関係!?)))
「椎菜ちゃん、その言い方は誤解を生むぞ!?」
「ん、色々とまずいと思う」
「そ、そうよっ? さ、さすがにその言い方はも、問題しかないわっ!」
「ふえ? 問題? あの、何かおかしい、かな? あ、会うたびに抱き着かれてるのは本当だし……」
よく見たら、クラスのみんなも驚いているような……?
う~ん?
「……椎菜ちゃんにそういうことを教えるべきか、たまに迷う時があるぞ」
「ん、でもこの方が魅力的だから、言わない方がいい」
「そ、そうねっ。そ、そもそも、椎菜さんに教えるのはなんだか、気が引けるしっ?」
「ですねぇ~……それに、無知シチュの方が美味しいですしねぇ~」
「千鶴さん、それを言うのは場所を考えよう?」
と、四人は何かを話しているみたいだけど……よくわからない。
なんだろう?
「あの……?」
「あらぁ~、ごめんなさいねぇ~。え~っとぉ~、ともあれ、四人だけど大丈夫かしらぁ~?」
「あ、う、うんっ! あ、じゃなかった……んーっと、お帰りなさいませっ! お姉様方っ!」
「「「「―――」」」」
いつも通りに接していたけど、不意に今はお仕事中だったことを思い出して、お店で決まった接客のセリフと一緒についつい5割増しくらいの笑顔で言うと、なぜか四人が固まっちゃいました。
「あれ? どうしたの?」
「「「「はっ! なんか一瞬天国が見えた……!」」」」
「ふえ!? 大丈夫なの!?」
あと、なんで天国!?
「ご、ごめんごめん。つい」
「ん、可愛すぎたから」
「正直ここで死んでも本望ってくらいですねぇ~。あ、写真撮っていいですかぁ~?」
「……ママぁ……」
「ふあ!? へ、変なことは言わないでね!? と、とりあえず、こちらへどうぞっ! あと、千鶴お姉ちゃん、写真は後でならいいよっ!」
なんか恥ずかしいことを言われてるし、ミレーネお姉ちゃんが結構ギリギリなことを言い出したので、誤魔化すように席に案内する。
ママはさすがに……!
「こちらがメニューです! ご注文がお決まりになりましたら、お呼びくださいっ! それでは!」
そう言って、僕はみんなの所を離れました。
「ねね、椎菜ちゃん椎菜ちゃん!」
「あ、麗奈ちゃん。どうしたの?」
「あの美人さんたちと知り合いなの!? どういう関係!?」
どこか興奮した様子の麗奈ちゃんが寧々お姉ちゃんたちのことについて尋ねてきました。
ど、どう答えればいいかなぁ……。
う、うーんと……。
「えっと、お、お姉ちゃんのお知り合いで、それであの、仲良くなった感じ、です」
「へぇ! そうなんだ! みんなすっごい美人だからびっくり! あれ? でも、どこかで聞いたような声と話し方な気がするけど……」
「き、気のせいじゃないかなぁっ?」
も、もしかして麗奈ちゃんも見てたりする、のかな?
身バレしかけた時は、あんまり麗奈ちゃんは積極的じゃなかったけど、どうなんだろう……?
「そうかなぁ。特にあの、薄桃色の髪のお姉さんとか、聞き覚えしかないんだけど」
ち、千鶴お姉ちゃん、普段と変わらないもんねっ……!
で、でも、お姉ちゃんにかかわりがないと言えば嘘になるし……だ、大丈夫、大丈夫……!
「あ、あはは、き、気のせい気のせい……」
「んー……まぁ、それもそっか! そうだよね! ごめんねー」
「う、ううん、大丈夫」
「すみませーん!」
「あ、注文かな。それじゃあ、行って来るね」
「はいはーい」
寧々お姉ちゃんに呼ばれたので、とてて、とちょっとだけ急ぎ足になってみんなの所へ。
「ご注文はお決まりでしょうかっ!」
「私と千鶴さんはオムライス!」
「ん、私とミレーネはキノコのクリームパスタ」
「あ、ドリンクにスムージーを四つくださいぃ~」
「あ、あと、デザートに、パンケーキを四つ」
「かしこまりましたっ! オムライスが二つと、クリームパスタが二つ、スムージーが四つに、パンケーキが四つですねっ! パンケーキは食後にお持ちしますねっ! それでは、少々お待ちくださいませ!」
にぱっ、と笑顔でそう言って伝票を持ってキッチンの方へ。
「あ、注文?」
「うん。あ、でもこれは僕がやるから大丈夫だよ~」
「りょーかい! じゃあ、あたしが代わりに出るよー。どうせ、ちょっとだけ休憩してただけだし」
「うん、ありがとう、麗奈ちゃん!」
「いいよいいいよー」
そう言って、麗奈ちゃんはホールの方に行きました。
僕の方は、みんなの分のご飯を作ることに。
贔屓って言われるかもしれないけど、僕が招待したようなものだし、これくらいはしてあげたい。
あと、折角だから僕が作ったお料理を食べてもらいたいなぁって。
「~~♪ ~~~♪」
「……鼻歌交じりに歌うとか、すっげえ新妻っぽいな」
「わかるー。メッチャ可愛いよね」
「あの美女たちとどういう関係なんだ……?」
◇
「お待たせしましたっ! クリームパスタとオムライス、スムージーになりますっ!」
「「「「おー! いただきますっ!」」」」
みんなの所にお料理を持っていくと、嬉しそうな声と共に食べ始めました。
「んむっ、美味しいぞ! やっぱり、椎菜ちゃんの料理はいいね!」
「ん、美味しい。また作ってほしいくらい」
「ですねぇ~。私、嬉し過ぎて死んじゃいそうですけどねぇ~」
「こ、これが、椎菜さんの料理……え、うそ、美味しすぎじゃない……さ、さすがママ……!」
「えへへ、それならよかったです!」
でも、ミレーネお姉ちゃん、さすがにママは止めて……。
色々ととんでもないことになっちゃうかもしれないから……。
「あ、椎菜ちゃん、休憩時間って何時?」
「一時半ですよ~」
「それじゃあ、もうすぐですねぇ~」
「うん! だから、近くで待っててもらえると助かるよっ!」
「ん、了解。お店の近くで待ってる」
「ありがとうっ! あ、お姉ちゃんもいるけど、大丈夫?」
「問題ないわ。というか、やっぱり来てるのね、愛菜さん」
「むしろ、来ない方が想像できないぞ……」
まあ、うん、そうだね……。
誘っても誘わなくてもお姉ちゃんは来てくれるし、真っ先に僕の所に来るもん。
嬉しいけど、もう少し自分のことを考えてもいいと思うんだけどなぁ。
「じゃあ、また後で! あ、パンケーキは食べ終わった頃に持ってきますねっ!」
「「「「はーい!」」」」
◇
それから四人は綺麗に全部ぺろりと食べ終えて、お店を出ました。
僕の方はと言えば、間もなくして僕のお仕事の時間は終わったので、交代の時間に。
「それじゃあ、行って来るね! あとはお願いっ!」
「あいよ。楽しんできてな」
「ぐぬぬ、私も行きたかった……おのれ先輩めぇ……」
午後からは柊君が担当。
麗奈ちゃんが悔しそうにしているのは……どうやら、部活の先輩にお店を手伝え、って言われちゃったらしくて……。
「あ、明日一緒に回る?」
「ほんと!? 一緒に回ってくれるの!?」
「うん。柊君も一緒に来る?」
「あぁ、いいぞ。折角だしな」
「じゃあ、明日は三人で回ろっか!」
「俺はいいが、愛菜さんはいいのか? あの人、絶対明日も来るだろ」
「あ、あー……それなんだけど……明日はどうしても外せないお仕事があるみたいで……血涙を流してました……」
「うわぁ……」
「あのお姉さん、そんなにすごいんだ……」
「あ、あはは……」
ちなみに、お仕事は配信の方じゃなくて、デザイナーさんのお仕事らしいです。
なんでも、先方がかなり無茶な依頼をしてきて、それをやらなきゃいけなくなったから、みたいです。
とはいえ、さすがに色々と問題があったことと、今までも似たような無茶を言ってくるようなことが多かったそうで、今後は取引をしない、ってことになったみたいだけど……その連絡を受けたお姉ちゃんはすごく、怖かったです……。
ただ、終わるまでには何としてでも仕事を終わらせてこっちに来る! って豪語していたし、多分来てくれるんじゃないかなぁ、と。
「そ、それじゃあ、僕は行ってくるね」
「あぁ」
「はいはーい!」
たたたっ、と僕は軽い足取りでお店を出て、みんながいる所へ向かいました。
◇
「……椎菜の奴、ナチュラルにメイド服で行ったが……大丈夫なんかねぇ」
「大丈夫じゃないかな? それにあたし……エントリーさせちゃったから!」
「……おい、朝霧。まさかお前、椎菜を……」
「だって可愛いし? それに、椎菜ちゃんなら優勝間違いなーし!」
「……はぁ。椎菜に怒られても知らない……いやむしろ、愛菜さんやあの人たちが称賛する、か? とはいえ、勝手にエントリーしたことは、一応謝っとけよ」
「それはまぁ、うん。謝るつもり」
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