#26 夜ご飯とお風呂

 色々と見て回って来てクラスに戻った後は、メニューの続き。

 色々と改良を考えて、インターネットでいろんなレシピを見て、比較して、試しに作って……そんな風に調整を重ねていく。


 当然、一度作った物は試食。

 余った物は……内装担当のみんなに感想を聞くために食べさせて、反応を伺って、改善点があれば改善、それを繰り返すと、もうすぐ夜ご飯の時間帯に。


 基本、調理メインの人がメニューを担当しているけど、基本的にレシピ作りはほとんど僕がやっています。好きなので!

 あ、もちろんワンマンっていうわけじゃなくて、他の人たちにも色々と意見を聞いて、色々反映させてるので平気!


 と、夜ご飯の時間帯になったので、僕はせっせとあることを始める。


「んー、簡単に鮭、エビマヨ、あとは梅かなぁ」


 今いる人数が大体二十人ちょっとだから……一人二個と仮定して、数は五十個もあれば十分かな? あ、でも、男子はいっぱい食べるかもだし……もうちょっと作ろう。

 ついでに、お味噌汁も作って……うん、決まり!


「じゃあ、ちゃちゃっとやっちゃお!」


 僕は鼻歌交じりに、夜ご飯を作り始めました。



 それから一時間ほどでクラスのみんなの分のご飯が完成。

 ワゴンに乗せて、クラスに運ぶ。


 道中、すっごく見られたけど……あれかな、食べたかったとか?

 でもこれはクラスのみんなのだからね! あげられませんっ!


 なんてことを思いながらクラスに到着。

 ガラッ! と扉を開けて、ワゴンを押して入る。


「みんなー、ご飯ですよー」

「「「どゆこと!?」」」

「「「あぁ、あれか!」」」


 クラスのみんなの反応は二パターンでした。

 片方は状況がわからなくて驚いている人たちと、もう片方は去年の僕の行動を知っている人たち。


「おー、待ってました! 椎菜ちゃん、今日は何々!?」

「うんっとね、おにぎりとお味噌汁! あ、欲しい人は並んでねー」

「なに!? ってことは、桜木の手作りか!?」

「椎菜ちゃんの手作りおにぎり!?」

「味噌汁付きだとぅ!? 絶対に食わねば!」

「今年もやってくれるとかマジ感謝しかない!」


 などなど、好意的に受け止めてくれたみんなは、我先にとばかりに僕の前に並びました。

 ちなみに、柊君と麗奈ちゃんはしれっと先頭にいます。


「ご注文をどうぞ!」

「ご注文て。椎菜お前、ノリノリだな?」

「えへへー、楽しいからね~」


 苦笑い交じりに言う柊君に、にっこりと微笑みながら僕はそう返す。

 僕はこういう時、ちょっと遊びを入れます。

 だって、その方が面白いもん!


「そうか。……んで、何があるんだ?」

「鮭おにぎりと、エビマヨおにぎり、梅おにぎりに普通のお塩のおにぎりもあるよ~。あ、お味噌汁はわかめと油揚げだよ~」

「え、メッチャ家庭的……」

「ってか、普通に色々あんだけど」

「去年がよかったから、今年も期待できるわね!」

「数はいくつ頼めるんだ?」

「んっと、一応最初は一人二個! お味噌汁はいっぱいあるから、いくらでも! あっ、でも独り占めしようとする人はダメだからねっ! 喧嘩しないで、仲良く食べることっ!」


(((言い方可愛よ……!)))


「それで、柊君は何にするの?」

「あー、鮭と塩。味噌汁もくれ」

「は~いっ! おにぎり二つと、お味噌汁ですねっ! 合計三百円になります!」

「「「金取るの!?」」」

「なーんて! えへへー、無料だから安心してね~」


 みんなからツッコミを受けて、僕はぺろっと舌を出していたずらっぽく笑う。


「「「ぐふぅっ!」」」


 すると、クラスのみんなのほとんどが胸を押さえだしました。

 何人かは鼻を押さえているような……?

 どうしたんだろう。


「あ、はい、柊君!」

「おう、ありがとなー。んじゃ、食べさせてもらうよ」

「うん、いっぱい食べてねっ! 次の人~」

「あたし、エビマヨと梅! 味噌汁も!」


 次に貰いに来たのは麗奈ちゃんでした。

 すごくにこにこしながら注文してくれて、こっちも嬉しくなります。


「は~い! どうぞ!」

「わーい! あ、あとスマイル一つ!」

「ふえ!? す、スマイル!?」


 麗奈ちゃんにスマイル一つと言われて、びっくりしてしまう。

 は、初めて言われた……。


「うん、スマイル! ほらほら、本番当日に、もしかすると言われるかもしれないじゃん? だから練習を兼ねて! ね?」


 な、なるほど、当日を想定して、ってことだね……!

 麗奈ちゃん、よく考えてるんだなぁ。

 それじゃあ……うん。


「わかりました! それじゃあ……えへっ☆」

「「「アッ―――」」」


 バタバタバタ――――ッッ!


「ふええぇぇぇぇ!? ど、どうしたのみんなぁ!? なんで倒れちゃうの~~~!?」


 なぜか、クラスのみんな(柊君と麗奈ちゃんを除く)がすごくいい顔で倒れて、僕は不安になって大きな声を上げてしまう。

 な、なにがあったの!?


「え、エプロン付きの、ロリ巨乳美少女の笑みは……死ねるッ……!」

「やっぱ桜木ずるいだろ……」

「椎菜ちゃん、無自覚に殺してくる……可愛すぎぃっ……!」

「これはもう、当日は勝ったね……」

「え、えっと……」

「椎菜、気にしなくていい。あいつらはちょっと、そう言う発作があるだけだ」

「どういう発作なの!? みんな倒れたけど!」

「椎菜ちゃん、あれはね、そう言う病気のように見えて、正常だから、大丈夫」

「そ、そうなの?」

「「そうなんです」」

「そ、そっか。じゃ、じゃあ、うん……気にしないでおくね」


 二人が大丈夫って言うならそうなのかも。

 それに、みんなもそんなに辛そうな顔じゃないし……。

 じゃあ、大丈夫だね!

 などなど、そんなことがありつつも、夜ご飯はかなり好評で、何一つ残ることはありませんでした。

 やったねっ!



 夜ご飯を食べ終えたら、後片付けをして、お風呂に。

 お風呂とは言っても、シャワーだけど。

 シャワー室はプールと体育館近くの二ヵ所あって、今日はプール側の方を使用することに。

 日替わりで男女が入れ替わるんです。

 シャワー室へ麗奈ちゃんと一緒にやって来ると、そこにはいっぱい人がいました。


「んー、こりゃ待ちかなぁ」

「だね~」

「そういえば椎菜ちゃんって、去年も泊まってたよね? その時ってお風呂とかどうしてたの?」

「んっと、普通に柊君と一緒に行ってたよ?」

「へぇ~、そうなんだ。……何か男子にされなかった?」


 不意に、麗奈ちゃんの雰囲気が変わった気がしました。

 なんだろう、ちょっと怖い?


「ううん? じろじろ見られたような気はしたけど……柊君が一緒だったし、それに、柊君が何か話してたよ?」

「そっかそっか! ならいいよ! でも椎菜ちゃん、入れる? 大丈夫?」

「……正直、入りたくないです」

「だよね」


 僕の記憶が正しければ、脱衣所があって、その先は個室のシャワーが並んでいてって感じだったよね? だからその先は当然なにも着ていないわけで……あ、で、でも、もしかしたらタオルを巻いてるかもしれないし……!


「あ、ちなみにだけど、誰もタオルとか巻いてないからね?」

「……戻っていい?」

「だーめ♥」

「あぅぅ……」


 すごくいい笑顔でダメと言われてしまいました……。

 僕としては、元男なので、すっごく申し訳ないと言うか……プールの時はなぜかみんなノリノリだったけど、さすがにお風呂はダメそうだと思うし……。

 そ、それなら……。


「じゃ、じゃあ、目隠しで入るのは……?」

「え、目隠し?」

「う、うん。それなら、他の人の体を見なくて済む、し……こ、個室に入ればだ、大丈夫、だと思って……」

「あ、あー、なるほど……うーんでも、危ないし…………よしわかった!」

「ふえ?」

「じゃあ、私が洗ってあげようじゃないかー!」

「……ふえぇ!? どうして!?」

「え? だって、目隠しは危ないし、途中まで人手が必要だよね?」

「そ、それは、うん……」

「けど、椎菜ちゃんちっちゃいし、ふとしゃがんだ拍子に外が見えちゃうよ?」

「ふえ!?」


 あっ、そ、そう言えば、個室って結構扉の位置が高めだった気が……あっ!

 そ、そういえばそうだよっ! 今の僕ってかなりちっちゃいし……ちょ、ちょっと見えちゃうんじゃ……。


「というわけで、私が目隠しした椎菜ちゃんをシャワー室に連れて行って、洗ってあげようかなって」

「ふえっ!? で、でも、あの、麗奈ちゃんは、い、いいの……?」

「全然いいよー。というか、むしろ役得」

「役得……?」

「おっと、こっちの話。で、どうする? 嫌なら嫌で全然いいから!」


 にこっ、と笑ってそう言って来る麗奈ちゃん。

 うぅ~~、と唸り声を出しながら頭を悩ませる。

 で、でも、麗奈ちゃんはお友達だし……だ、だけど、目隠しをしているとはいえ、は、裸の状態で一緒は…………で、でもでも~~~っ!

 うぅぅ~~っ!


「……お、おねがい、します……」


 結局、お願いすることにしました……。


「うん、まっかせてー!」


 頼まれた麗奈ちゃんはすっごく楽しそうな表情でした。

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