#22 翌朝と、帰ってきたお姉ちゃん(暴走車Ver)
柊君との通話を終えて、ささっとお風呂に入り、三人の所へ。
「あ、椎菜ちゃん、電話はもういいの?」
「うん、大丈夫! 三人は酔いは醒めたの?」
「ばっちり!」
「問題なし」
「大丈夫ですよぉ~」
「それならよかったよ。じゃあ、もう今日は寝るの?」
「だねー。なんだかんだ疲れたし」
「正直眠い」
「私もですねぇ~」
「そっか。じゃあ、僕も自分のお部屋に――」
「へっへーん、そうはさせないぜー!」
「ふぇ? ひゃあ!?」
今日はもう寝ると言うことで、自分のお部屋に戻ろうとした瞬間、寧々お姉ちゃんが素早い動きで僕の体を捕まえると、お布団に引きずり込みました。
え、ど、どういう状況!?
「どうせだったら一緒に寝よ! 椎菜ちゃん!」
「ふえ!? あ、あの、で、でも、い、いきなり一緒に寝るのは……!」
「大丈夫。何もしないから」
「それ僕側が言う事じゃないんですかっ!?」
「あらぁ~、それじゃぁ椎菜ちゃんが何かするかもしれないって言う事ですかぁ~?」
「ふぇ!? ち、違いましゅっ! あぅぅぅぅぅ~~~~~……!」
ニマニマとした顔でからかって来る千鶴お姉ちゃんの言葉を否定しようとしたら、また噛んでしまって顔が一気に熱くなる。
うぅ、意地悪だよぉ……。
「折角だから、ね? 一緒に寝よ?」
「大丈夫、怖くない怖くない」
「うふふぅ~、それにしても、椎菜ちゃんは暖かいですねぇ~……なんだか、眠くなっちゃいますよぉ~」
「ひあああ!? だ、抱きしめないでくだしゃい~~~~っ!」
む、胸が! 千鶴お姉ちゃんのおっきな胸が当たってるからぁ~~~!
「ふふふふー! 今のうちに女の子に慣れておいた方がいいぞー」
「な、なななっ、慣れないよぉっ! ぼ、僕、ちょっと前まで男だったんだもんっ! だ、だからっ、はぅぅぅぅ~~~~~っ!」
(((可愛い……)))
同い年や一つ上くらいの人だったら抱きしめられたことはあるけど、お、大人の女の人たちに抱きしめられるのは慣れてないから、恥ずかしいよぉ~~~~っ!
「往生際が悪い。今日は一緒に寝る。大丈夫。眠れる」
「あぅぅぅ~~~~っ、き、緊張して眠れないよぉ~……」
「う~ん……それでしたらぁ~、私が頭をなでなでしてあげましょぉ~」
「そ、それで眠くはならない、と思う……よ?」
「うふふぅ~~、私の添い寝なでなではぁ~、確実に眠れると、好評なんですよぉ~」
「で、でも……」
「はぁ~いぃ~、なで~なでぇ~」
「あ、ふぁ……んんぅ、きもちぃ……」
有無を言わさずに頭を撫でられ始めました。
けど、千鶴お姉ちゃんはすっごく頭を撫でるのが上手で、たしかに気持ちよくなっちゃうんだよね……。
優しく、優しく、頭を撫でてくれて、なんだかとろんってしてくる。
「ん、ふあぁ~~……んぅ、なん、だか……ねむ…………く……すぅ……すぅ……」
「うふふぅ~、おやすみなさぁ~い~」
意識が落ちる直前、千鶴お姉ちゃんの言葉が聞こえたところで、完全に意識は堕ちました。
◇
翌朝。
目が覚めると……
「……んぅ?」
目の前が真っ暗でした。
妙に柔らかくて、いい匂いがするけど……。
なんだろう、と思ってもぞもぞと起きて、最初に視界に入ってきたのは、すやすやと安らかな寝息を立てながら眠る、千鶴お姉ちゃんたちでした。
「あれぇ……? なんで、三人が…………あ、そうだ……たしか、寧々お姉ちゃんが僕を引きずり込んで、千鶴お姉ちゃんが頭をなでなでして来て……それで……」
と、昨夜あったことを思い出し、みるみるうちに顔が熱くなっていく。
ぼ、僕、お、大人の女の人と一緒に寝ちゃったぁぁぁぁ~~~~っ!
はぅぅ、と、とんでもないことをぉ~~っ!
「と、とりあえず、お、落ち着こう……お、落ち着いて、あ、朝ご飯を作らなきゃっ……!」
気分を落ち着けるため、僕はお布団を抜け出して、朝食作りを始めた。
◇
いざお料理を始めると、気分も落ち着いてきて、こっちに集中する物です。
せっかくみんながいると言うことで、いつもよりちょっとだけ豪華な朝ご飯にするつもり。
今日のメニューは、ご飯、わかめと油揚げのお味噌汁、ほうれん草のおひたし、それから卵焼きに焼き鮭、お漬物です。
いつもだったら、おひたしと卵焼きは無いんだけど、日曜日だし、普段はいない人がいるからね! ちょっとでも美味しい物を食べてほしい!
そんな思いから、メニューを増やしています。
あ、でも、女の人に朝からこれは量がちょっと多いかな……?
ま、まあ、大丈夫だよね!
多かったら自分で食べればいいもんね。うん。
「おふぁよ~……」
「おはよう……」
「おはようございますぅ~……」
と、ここでみんなが起きてきました。
三人ともまだ完璧に目は覚めていないようで、どこか寝ぼけまなこ。
「あ、みんなおはよ~~っ! 朝ご飯、もうちょっとでできるから、顔を洗って、お席に座っててねっ!」
「「「え、新妻……?」」」
「ふえ? 新妻? あはは、まだ結婚してないよ~」
寝ぼけてそう言う冗談でも出てきちゃったのかな?
一応エプロンはしてるけどね。
お料理をする時は、エプロンは必須! だからね。
「じゃ、じゃあ、洗面所を借りるぞ!」
「使わせてもらう」
「使わせていただきますねぇ~」
「はいっ。あ、タオルは引っかかっているものがありますけど、それはさっき僕が使っちゃってるので、嫌だったら新しい物を――」
「「「大丈夫です」」」
「あ、そ、そう? そ、それならいいけど……」
そう言うと、三人はすごくいい笑顔で洗面所へ移動していきました。
なんだったんだろう……。
「あ、焦げちゃう焦げちゃう」
あんまり目を離すといけないからね。
焦げちゃったら台無しだもんね。
と、そんな風に朝ご飯を作り、三人が戻って来てから少しして完成。
「おー、すっごい見事な朝ご飯……!」
「ん、今時珍しすぎるくらい、立派な朝食」
「椎菜ちゃんが作ってくれただけでも十分すぎるくらいですよねぇ~」
「あ、あはは。さ、冷めないうちに食べよっ!」
「「「「いただきます!」」」」
日曜日の朝なのに、僕以外に三つの声があるのがすごくいい……。
基本的に一人でご飯を食べていたから、こうして僕以外の人たちと一緒に食べるのが嬉しい。
でも、もうすぐお姉ちゃんが返って来るから、その寂しさともお別れだよね!
「んん~~っ! 美味しいぞ!」
「うまうま」
「あらあらぁ~、どれも美味しいですねぇ~」
僕が作った朝ご飯を食べた三人は、ちゃんと美味しいと言ってくれて、内心ほっとする。
「ふふ、そう言ってもらえてよかったよ~。あ、鮭の方はね、一応骨は抜いてあるんだけど、もしかすると残っているかもしれないから……あの、ごめんね?」
完璧にできてたらよかったんだけど、さすがにそこまでは時間が無くてできなかったからね……。
「え、これ骨抜いてあるの!?」
「う、うん。だって、痛いと嫌かなぁ、って思って……えへへ……」
「……ん、椎菜、お嫁に来ない?」
「ふえ!?」
「あ、ずるいですよぉ~。是非、私のお嫁さんになってくれませんかぁ~?」
「ふあああ!?」
「む! それならあたしの所でもいいぞ!」
「ふやぁぁぁぁ!?」
突然プロポーズ(?)をされてしまい、変な声が出る僕。
お、お嫁さんって……。
ぼ、僕元男だから、あんまりその、素直に喜べない……。
「あ、あああのあのあのあの……え、えっと、い、今はそう言う事を、か、考えられない、のでっ、えっと……ご、ごめんねっ!」
「おっと、フラれちゃった」
「ん、けど諦めない」
「ですねぇ~。あ、このおひたしってまだありますかぁ~?」
「え、あ、ひゃい! ありましゅよ!?」
「「「うぐふぅっ……!」」」
あぅぅぅぅ~~~~っ、は、恥ずかしくて噛んじゃうよぉ~~~っ……!
あ、ああ言ってくれるのは嬉しい、けど、や、やっぱり恥ずかしさの方が先に来ちゃうよぉ~~~~っ!
「や、やはり椎菜ちゃんは破壊力お化けか……!」
「ん、椎菜だし仕方ない」
「うふふぅ~、本当に可愛らしいですよねぇ~……」
この後は、しばらく顔が赤かったけど、それでも楽しい朝になりました。
◇
朝食を食べた後、三人はそれぞれのお家に帰っていきました。
僕はと言えば、昨日の今日なので配信はなく、ちょっとゴロゴロしようかなぁって思ってます。
あ、そう言えばお姉ちゃんはいつ頃戻って来るのかな?
なんて思っていると、スマホが鳴り出した。
ディスプレイにはお姉ちゃんと表示されていて、タイミングがいいなぁ、なんて思いながら通話に出る。
「もしもし? お姉ちゃん?」
『おっはよー! 元気元気ー? 私は元気だよ☆』
「あはは、朝から元気だね、お姉ちゃん」
お姉ちゃんの元気な声を聴くと、自然とこっちも笑顔が浮かびます。
『それはもう! 実は昨日のうちに引っ越しの準備が終わったからね、今日そっちに行くよ!』
「あ、そうなの?」
『うん! いやー、早く椎菜ちゃんと一緒に暮らしたい一心で、お姉ちゃん頑張っちゃったぜ☆』
「ふふっ、そっか。いつ頃来るの?」
『んー、この後すぐ引越し業者が来て、私の荷物をそっちに送るから……まあ、お昼くらい?』
「うん、わかった。それじゃあ、待ってるね!」
『私も楽しみにしてるね! それじゃあ、また後で! バイバーイ!』
「うん、またあとでね!」
通話が終了すると、徐々に嬉しさが込み上げてくる。
大好きなお姉ちゃんと今日からまた一緒に暮らせる、そう思うと気分は自然と高揚してくるし、何より楽しみになって来る。
早く来ないかなぁ、なんて浮かれてしまう。
「……あ、そうだ。折角だし、昨日買ったお洋服でも着ようかな」
きっとお姉ちゃんのことだし、喜ぶよね?
と、そう考えた僕は、昨日買ったお洋服に着替えてお姉ちゃんが帰って来るのを待つ。
今着ているのは襟付きシャツとキュロットスカート。
意外と着心地が良くてなんとなく気に入ってます。
リボンって結構可愛いんだなぁ、って。
…………なんだか僕、かなり心が女の子になって来てる気がします。
いつか、女の子でいることに対する違和感もなくなるんだろうなぁ、なんて漠然と思うよね、本当に……。
それはそれとして、お姉ちゃんまだかなぁ……。
お姉ちゃんが帰って来るのが楽しみすぎて、早く来ないかなぁなんて思ってたら、今日済ませるはずの家事が全部終わっちゃったからね。
おかげで今は手持ち無沙汰になっちゃってて、お家のなかをうろうろと歩き回ってしまいます。
そうしてお昼になると、ピンポーンとインターフォンが鳴った。
来たのかも! と思ってカメラを覗くと、そこには引越し業者さんらしき人と、お姉ちゃんが映っていました。
お姉ちゃんだ!
とたたたっ! と小走りで玄関へ行き、ガチャ、と扉を開ける。
「ただいま! 椎菜ちゃん!」
「お姉ちゃん! お帰りなさいっ!」
そこにはにっこにこ顔のお姉ちゃんがいて、嬉しそうにただいまと言って、僕もお帰り、と笑顔で返しました。
「なぁ、新人。メッチャ綺麗な百合らしきものを見たんだが、どう思う?」
「当たりだと思うっす先輩」
「あっ、と。すみません、荷物をお願いしてもいいですか?」
「あ、はい! では、場所の方をお願いします」
「とりあえず、二階の――」
◇
一時間弱ほどでお引越しの作業は終わりました。
元々、お姉ちゃんが持って来た荷物はかなり少なく、それこそベッドと机、ノートパソコン、あとは椅子とか棚くらいで、他は全部前のお家に置いて来たそう。
だから早く終わったようで。
「いやぁー、今日からまた椎菜ちゃんと同じ家……ふへへぇ、何度この時を夢見たことか……!」
「あはは、僕も一緒に暮らせて嬉しいよ~」
「わーい、さっすが椎菜ちゃん!」
「わぷっ! も、もぉ~、お姉ちゃんいきなり抱き着かないでよぉ」
「いいじゃーん! 椎菜ちゃんも嫌じゃないんだよね?」
「そ、それはそうだけど……えへへ」
口では少し言いつつも、やっぱりお姉ちゃんに抱きしめられるのは好きなので、自然と笑みが零れる。
なんだろうね、この安心感。
「あぁぁ~~~~、椎菜ちゃんの抱き心地最高……ねえ、匂い嗅いでいい?」
「どういう質問!?」
「だってー、今の椎菜ちゃん、すっごくいい匂いがする――…………ん?」
嬉しそうに抱きしめていたお姉ちゃんだけど、不意に動きが止まった。
どうしたんだろう……?
「……椎菜ちゃんの体から、知らない女の匂いがするッ……!」
「ふぇ!?」
「誰!? ねぇ、誰!? なんでこんなに濃い女の匂いが染みついているの!? ま、まさか……か、彼女!? 彼女が出来ちゃったのーーーーーーー!?」
「あぅあぅあぅあぅあぅぅ~~~っ!」
ガックガック、と体を揺さぶられながら問い詰められる。
うっ、き、気持ち悪い……。
「ねぇ、誰!? 誰なの!? お姉ちゃんに教えて椎菜ちゃんっっ!」
「お、教えるっ、教えるから離してぇ~~~~っ!」
「……あっ! ご、ごめんね椎菜ちゃん……椎菜ちゃんに悪いむ――んんっ! クソ野郎が出来ちゃったのかと思って……」
「お姉ちゃん、何気に酷いことを言ってるよ? 訂正できてないよ……?」
「いやだって、椎菜ちゃんに彼女が出来るのとか……正直死にたくなるくらい辛いし……」
「そこまで!? お姉ちゃん、僕に対して結構重いよね!?」
「椎菜ちゃんは、今の私を形成するに至った大切な人だからね……」
「ほ、本当に重い……」
お姉ちゃんは結構過保護だけど、同時になぜか僕に対して重い。
好かれていることは普通に嬉しいし、お姉ちゃんのことは大好きなんだけど……。
「それで!? この匂いは何!?」
「あ、え、えっと、その、昨日色々あって……」
「色々!? 色々って何!? ま、まままま、まさか!? あ、あーんなことや、こ、ここ、こーんなことを……!? そ、そして、大人の階段登っちゃったの!?」
「な、何を言っているのかはわからないけど……あの、多分違うと思う、よ?」
大人の階段って昔はよく耳にしてた気がするけど、それでも意味はわからないです。
あんなことや、こんなこと、と言われても、そっちもわからないけど……。
「じゃあ何!?」
「んっと、昨日コラボ配信をしてたと思うんだけど……」
「してたね」
「あの後、僕の服装がダメ! って言われちゃって、お買い物に四人で行って、その後親睦会として夜ご飯を食べに行って……その後、三人はお酒を飲んでいて酔ってたの。それを見て危ないなぁ、って思ったから、あの……一番お家が近かった僕のお家にお泊りしました」
「……お、お泊まり?」
「う、うん、お泊まり……」
「……何か、変なことはされなかった?」
「へ、変なこと……? う、ううん? え、えと、あの、い、一緒に寝たくらい――」
「はああああああああああああああああああああああ!?」
「ひぅ!?」
一緒に寝たことを顔を赤くさせながら言うと、僕が言い終わるよりも早く、突如としてお姉ちゃんが叫び出した。
「い、一緒に、ね、ねねねっ、寝たァァァァァァ!? な、なぁ~~~にしてくさってるのかなぁ、三期生はぁあぁぁぁああああああぁぁぁぁぁぁ!」
「お、お姉ちゃん!?」
烈火の如き怒り? を見せるお姉ちゃんは、髪を振り乱したり、その場で謎の動きをしたりと、なかなかすごいことに。
「ぐぬぬぬぅ~~~、我が愛しの椎菜ちゃんを誑かすとは……なんと言う女狐共ッ! 許さん!」
「お姉ちゃん落ち着いて!? お姉ちゃん!?」
「椎菜ちゃん、待ってて……お姉ちゃん、今から三期生に奇襲をかけに行くから……」
「何をしようとしてるの!? ダメだよっ! お、お姉ちゃん止まって! お姉ちゃーーーーーーーーんっっっ!」
この後、僕がお姉ちゃんに抱き着いて甘えることで、なんとか落ち着きました。
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