#16 両親への報告と、コラボ配信前

 えー、ちょっとした思い付きで今日は三話投稿になります。

 内容は、愛菜視点の話しと、掲示板回です。

 今回の掲示板は、配信時の実況ではなく、雑談っぽい感じでいつもより短めですが。

 愛菜視点は15時、掲示板は18時投稿予定です!

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 食後、配信開始時間は九時からで、今は八時前。

 早速お父さんたちに電話をかけることに。


「じゃあ、かけるね?」

「頑張って! 椎菜ちゃん!」

「う、うん。じゃあ……」


 僕はお母さんの番号に電話をかけた。

 すると、二コールほどで電話が繋がる。


『もしもし? 椎菜から電話をかけて来るなんて珍しいわね~。何かあったの? もしかして、お母さんたちが恋しくなっちゃったとか?』

「あ、お、お母さん、あ、あのね……?」

『……ん!? え、し、椎菜!? 椎菜なの!? 随分と可愛らしい声だけど……!?』

「あ、あのえと、お、驚かないで聞いてほしいんだけど、ね? その、実は僕、TS病っていう病気になっちゃって今、その、女の子になっちゃってるの」

『てぃ、てぃーえす病……? え、女の子? 女の子なの!?』

「う、うん。そ、それでね――」

『あ、あなたーーーーーーー! し、椎菜が、椎菜が……頭の病気になっちゃったわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』

「お母さーーーーーん!!?!??」


 なんかとんでもない誤解をされちゃったんだけど!?


『ど、どうしたんだい椎菜!? ど、どこか頭でも打ったのかい!?』


 僕が叫ぶと、今度はお父さんが電話に出るなり、なぜか頭の心配をされました。


「お、お父さん!? ち、違うよ!? 本当にTS病になって女の子になっちゃっただけだから!」

『くっ、こ、これはまずいっ! 母さん、今すぐ日本に帰国するぞ!』

「お仕事はぁっ!?」

『息子の一大事よ!? 仕事なんて知らないわ!』

「ふえぇぇ!? お、お仕事は大事だからぁ! と、とりあえずビデオ通話にするから見てくれればわかるから!」

『そ、そうね! まずは女の子じゃない椎菜を見ることで安心するべきよね!』

『そ、そうだな、母さん。よし、椎菜、いつでもいいぞ!』

「う、うん……じゃ、じゃあ、ビデオ通話にするけど……あの、驚かないでよ……?」


 僕は先にそう言ってから、ビデオ通話に切り替えると、画面に二人の男女が映った。


 一人はどことなく、男だった時の僕の顔に似た優しそうな女の人(表情は目が血走っていて険しいけど……)と、眼鏡をかけた少し厳しそうな男の人(こっちも目が血走ってるけど……)が。


 女の人は僕のお母さんで、桜木雪子って言って、男の人は僕の義理のお父さんである、桜木聡一郎。


「あ、あの、見えてるかな……? その、こ、この姿が今の僕で……あの、椎菜です……」

『『( ゚д゚)』』

「あー、うん、まあ、お父さんたちの気持ちもよくわかるかなー……椎菜ちゃん、変わり過ぎだし」

『……ハッ! い、今の声は愛菜か!? 愛菜、そこにいるのかい!?』

「うん、いるよー、お父さん」

『こ、ここっ、これはどういうことだい!? TS病とは一体何だ!? 危険な病気なのか?!』

「落ち着いて、お父さん。TS病は別に命の危険がある病気じゃないよ。ただ性別が男の子なら女の子に。女の子なら男の子になるってだけの病気だから」

『だけ!? だけで済ませていいの!? それ!?』

「お母さんの気持ちもわかるけど、本当だよ。その証拠に……ほら、診断書」

「あれ、お姉ちゃんいつの間に持って来たの?」

「ふふふー、こういうのはね、予め持っておけば困らないのだよ、椎菜ちゃん。それに、お父さんたちに信じさせるには必要でしょ?」


 そう言いながらニッ、と笑うお姉ちゃん。


「うん! さすがお姉ちゃん!」


 その考えにすぐ至らなかったた僕からすると、お姉ちゃんの行動は普通にすごいと思った。


「ふっふーん! もっと褒めて!」

「うんっ! すごいよー! カッコイイ!」

「イエェェェ!! やっぱり、椎菜ちゃんに褒められるのは最&高っ!」

『いや、奇妙な姉弟漫才はいいから……うわぁ、ちゃんとした診断書だ……そうか、じゃあ、その小さな女の子の姿が今の椎菜なんだね?』

「う、うん」

『その姿はいつからなの? 椎菜』

「え、えっと、八月の頭……」

『一ヶ月も前じゃないの! どうして言わなかったの!?』


 この姿になった時期を言うと、お母さんが怒ったようにそう言ってきました。


「あぅっ、だ、だって、な、なんて言えばいいのかわからなくて……そ、それに、お母さんたちは海外だから、その、迷惑をかけちゃうかもって思って……あの……ご、ごめんなさい……」

『『え、可愛よっ!?』』

「ふえ?」

『ちょっと待って!? 椎菜可愛すぎじゃない!? 愛菜、椎菜ってこんなに可愛かったかしら!? いえ、前も十分すぎるくらい可愛かったけど!』

「うん、この姿になってからの椎菜ちゃんはそれはもう天使でね……ふへへ、本当に可愛いです……」

『くっ、海外出張が無ければ、俺も今の椎菜を目の前で見ることが出来たと言うのにッ……! よし、これは今の仕事をさっさと終わらせ、さっさと日本に帰国するとしよう! 母さん、手伝ってくれ!』

『えぇ、もちろん! それじゃあ、お母さんたちはお仕事に――』

「ってちょっと待って!? 用件がまだだから!」

『あら、そうなの? じゃあ、要件って何かしら?』

「う、うん、実はね――」


 と、僕はさっき現在のことを色々とお母さんたちにお話しした。

 ふんふん、と二人は頷きながら聞いてくれて、お話しを聞き終えるとお父さんが、


『……ふむ、よしわかった! じゃあ、同居禁止令は解除しよう!』

「え、いいのお父さん!? マジで!?」

「いいの!?」

『あぁ、マジだとも! というか、椎菜が男の子から世界一可愛い女の子になってしまった以上、今まで通りに一人暮らしというのも少々心配だしね。というか、変な男共に襲われると言うような話を聞いたら……殺意が湧くのでね。そうだろう? 母さん』


 世界一可愛いって……こういうところを見ると、お姉ちゃんとお父さんの血の繋がりが垣間見えるよね……。

 親子そろって同じ反応。


『そうね。こればかりは仕方ないし、愛菜ならしっかり護ってくれるでしょうし。えぇ、解除の方向で大丈夫よ』

「やったーーー! 椎菜ちゃんとまた暮らせるぅ! ひゃっふー!」


 解除すると言われると、お姉ちゃんはすっごく嬉しそうに今にもスキップしそうなくらいの反応を見せていました。


「ありがとう、お父さん、お母さん」

『ま、どうせ日本に帰ったら解除するつもりだったんだ。それが前倒しになっただけさ』

「え、そうだったの?」

『もちろんよ~。だって、二人だけで暮らさせたら、間違いなく、椎菜が愛菜のお世話をしちゃって、家事が身に付かなさそうだったし。あ、愛菜? 家事はどうなの?』

「あ、相変わらず料理はからっきしだけど、それ以外はある程度できるようになったよ」

『そう。なら良し。それじゃあ、今年中には帰国するから、それまでは二人で仲良く暮らすこと。それじゃあね、二人とも!』

『不審者には気を付けるんだぞ! 椎菜! 愛菜も椎菜を守るように!』

「まっかせて! 不埒な輩は絶対に逃さないから安心してね!」

『『任せた! それじゃあ!』』


 二人が最後にそう言って、通話は終了しました。

 なんだろう……。


「あの二人ってあんなに過保護だったっけ……?」

「んー、椎菜ちゃんがとびっきり可愛くなっちゃったからじゃないかな。まあ、いいと思うよー、受け入れてもらったってことだからね」

「そ、それもそう、だね……うん。それに、今年中に帰国かぁ……ふふ、楽しみだね」

「そうだね! それじゃあ、そろそろいい時間だし、私たちは配信の準備をしよっか!」

「あ、ほんとだ。うん! じゃあ、頑張ろ!」


 初めてのお姉ちゃんとのコラボ、上手くやらないとだねっ!



 というわけで、二人で配信の準備をする。

 場所は僕のお部屋で、せっせと進めていく。


 今回のお姉ちゃんとのコラボ配信の枠は、僕の方で取ることになっています。

 それで、早速枠を取って、いざ待機状態に持っていくと、あっという間に視聴者さんたちがやって来て、気が付けば二十万を超える大人数になっていました。


 こ、これが、お姉ちゃんの力……!

 き、緊張してきたよぉ~~~~~っ……。


「う、うぅっ、し、失敗したらどうしようっ……!」


 初めての配信の時ですら、一万人以上の人が見ていたのに、今回はそれを遥かに超える人数に、僕は緊張と恐怖でいっぱいになっていた。


「ふふ、大丈夫だよ、みたまちゃん。私がいるからね☆」

「う、うんっ、が、頑張るねっ!」


 そんな僕を見かねてか、お姉ちゃんがいつもの優しい笑み浮かべながら、お姉ちゃんとしてではなく、天空ひかりとして励ましてくれて、更には手も握ってくれて、少しだけ緊張と恐怖心が無くなる。

 完璧には無くなっていないけど……。

 それでも、さっきよりマシです。


「よーし、じゃあ私はちょっと画面外にいるから、始まったら呼んでね☆」

「う、うんっ! わかったよっ! じゃ、じゃあ、始めるね?」

「バッチコーイ!」

「ふふっ」


 お姉ちゃんのいい意味で空気感を壊す言葉に笑いながら、僕は配信開始のボタンを押した。


 この配信が、とてもカオスになることを、この時の僕は知らない……。

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