#15 久しぶりの姉と、ちょっとした提案
そんなこんなで金曜日。
昨日今日の準備は特に問題はなく、順調に進み、メニュー兼調理担当のみんなで当日はどんなものを提供するのかを決めて、現在はメインを二種類、サイドを二種類、あとドリンク三種類、デザートが二種類という状態に。
メインはパスタとオムライス、サイドにはポテトフライとポテトサラダ、ドリンクはラムネと某乳酸菌飲料、それからベリースムージーを。
デザートはパンケーキとアイスクリームの二種類です。
レシピ等は僕の知っている物を引っ張り出してきて、そのレシピを紙に書いてきました。
とは言っても、あくまでも土台なので、ここから少しアレンジを加えようかなぁとは思っているので、そこは色々と試作の段階でやろうかなって思っています。
どうせなら、来てくれた人には美味しい物を食べてほしいからね。
「――って言う感じかな。どうかな? みんな」
「いいね! それで行こう!」
「椎菜ちゃん本当に料理が出来るんだねぇ」
「あ、あはは、まあ、一人暮らしだから」
「え、一人暮らし? 大丈夫なのか? それ。こう、強盗とかさ」
「大丈夫だよ~。お母さんたちが心配して、警備会社と契約してるから」
「へぇ、そうなんだ。まあ、椎菜ちゃんすっごい可愛いし納得」
「言っておくけど、男の時からだからね!? 今の姿になってからじゃないよ!?」
「あはは、大丈夫大丈夫! 椎菜君の頃から可愛かったから!」
「それはそれで酷いと思うっ!」
「実際可愛かったからねぇ」
「うんうん、超可愛かった」
「うっ」
「というか、今はもっと可愛い。それに、今なら可愛いって言っても違和感もなければ問題もないから。好き放題言えるってもの!」
「あ、あんまり可愛いって言わないでぇっ!」
恥ずかしくなって顔を手で覆ってしまう僕。
うぅぅ、コメント欄ならともかく、こうして面と面向かって言われるのは恥ずかしいよぉ……。
「ごめんごめん。ともあれ、こんなものでいいかな? 椎菜ちゃん」
「う、うん。あとは色々と試作していく感じです」
「了解了解」
「いやぁ、調理担当になった時はどうなるかと思ったが、これならなんとかやれそうだぜ」
「だなー。正直料理とかしたことなかったんだけど、桜木のおかげでなんとかなりそうだ」
「えへへ、そう言ってもらえると嬉しいかな。でも、練習はするからねっ!」
(((やっぱ可愛すぎじゃない……???)))
レシピの改良はお家で頑張ろうっと!
「椎菜ちゃーんっ!」
「ふわぁ!?」
なんて、一人で改良のことで頑張ろうと思っていると、突然横から思いっきり抱き着かれて、変な声が出ちゃいました。
一体誰が、と思って見てみると、麗奈ちゃんでした。
「れ、麗奈ちゃん!?」
「はい、麗奈ちゃんです!」
「ど、どうしたの? あの、抱きしめるのはちょっと……」
元男としては、すっごく落ち着かないんだけど……。
「あ、うん。ほら、採寸しようと思って!」
「採寸……?」
「そうそう。ほら、接客をするんだから椎菜ちゃんの着るメイド服の採寸をしないとだから。今大丈夫?」
「あ、うん、大丈夫だけど………………あれ? 待って? それって誰が測るの……?」
「あたし」
「む、無理だよぉっ! は、恥ずかしいよぉ……」
「大丈夫大丈夫。今は女の子同士だから!」
「そう言う問題じゃないとおも――あっ、ま、まってぇ! ひ、ひっぱらないでぇ! ふえぇぇぇぇぇ~~~~~っ!」
僕の抵抗も空しく、衝立で作られた簡易更衣室に連れ込まれました。
その中には麗奈ちゃんだけじゃなくて、他の女の子がぎらぎらとした目でスタンバイしていて、なんというか、その……目が怖かったです……。
「はいはーい、じゃあ、脱ぎ脱ぎしましょうねー」
「なんで!?」
突然服を脱いでと言われて、声を上げた。
え、なんで!?
「え? だって、採寸だし……」
「ぬ、脱ぐ必要あるの……?」
「あるよ(本当はないけど)」
「あるよー(服の上からでもできるけど)」
「あるある!(単純に胸が見たいです……!)」
「あ、あの、すっごく邪な気持ちが見えるような気がするんだけど……き、気のせい?」
「「「気のせい気のせい」」」
「ううぅぅぅぅ~~~~~~…………じゃ、じゃあ、あの……や、優しく、ね……?」
うるうると、緊張と未知への恐怖からか、上目遣い気味にそう言うと、
(((ズキューン!)))
女の子たちは揃って胸を抑えだしました。
ど、どうしたんだろう……?
「ご、ごめん、椎菜ちゃん……本当は、服の上からでもできるから……」
「ふえ? そうなの?」
「はい、そうです……」
「そっかぁ~、よかったぁ~……」
(((純粋っ娘はちょっと無理だわぁ……)))
なんだか、罪悪感を感じてそうな顔をしているけど……どうしたんだろう?
「じゃ、じゃあ、ちゃちゃっとやるね!」
「あ、うん。お願いします」
「じゃあ、まずは胸から」
「んっ……」
胸にメジャーを巻かれると、小さな声が自然と漏れた。
なんだろう、すごく変な感じ……。
「えーっと…………え、84センチ?」
「「マジで!?」」
「ん、んっと、それっておっきいの……?」
「え、えーっと……椎菜ちゃん、身長いくつ?」
「え、えっと、あんまり覚えてないんだけど、たしか……140センチ切ってた気がするけど……」
「「「で、でかいっ……!」」」
「そ、そうなの……?」
「そ、そうだね……少なくとも、本当に大きいと思う。身長が160センチだったら、まあ、平均より大きいかな? って感じだったんだけど、その身長だとすっごい大きい」
「そ、そうなんだ」
やっぱりおっきいんだ……。
普段からこの体で生活しているから、なんとなくそんな気はしていたけど……。
「ちなみに、ウエストは……55!?」
「「ほっそ!?」」
「えぇ、しかもヒップは62って……なんかもう、椎菜ちゃんスタイル良すぎない……?」
「そ、そう言われてもよくわからないよ……?」
「ま、まあそうだよねぇ、椎菜ちゃん、男の娘だったもんね、ちょっと前まで」
「う、うん。だから、よくわからなくて……」
ただ、麗奈ちゃんたちがスタイルがいいって言っているから、多分いいんだと思うけど……。
「いやでも、こんな逸材なんだからこれは燃えて来るね!」
「わかる! 椎菜ちゃん、とびっきり似合う可愛いメイド服を作ってあげるからね!」
「楽しみにしててね!」
「え、えーっと……あ、あんまり可愛くても、その、こ、困るけど……」
「「「じゃ、デザインを進めるから、椎菜ちゃんも頑張って!」」」
「あ、う、うん。が、頑張ってね、麗奈ちゃんたちも」
熱意に燃える三人に苦笑交じりに応援すると、三人はいい笑顔でデザインの方に戻って行きました。
「……僕もメニューの方に戻ろう」
メイド服を着ることに一抹の不安を覚えつつも、僕はメニュー班の所へ戻りました。
「……あれ、そう言えば椎菜ちゃんの胸、妙に柔らかすぎた様な……いやいや、まさかね?」
◇
その後は、申請書を書いて、それを提出しつつ、その日の準備は終わりました。
それからHRをして、家に帰るために、準備を済ませて校門を出ようとすると、なんだか校門前が騒がしくて、何やら人だかりが出来ていました。
だれか有名人でもいるのかな? なんて思いながらも、お姉ちゃんが来る前に早く帰ろうと思った時、
「あ、椎菜ちゃーーーん! こっちこっち!」
帰宅しようと校門を通り抜けると、突然横から声をかけられて、きょろきょろと見回すと、そこにはお姉ちゃんの姿が。
「ふえ? ……あ、お姉ちゃんっ!」
大好きなお姉ちゃんがいるのを見つけると、僕はぱぁ! と笑顔を浮かべながらたたたっ! とお姉ちゃんに駆け寄った。
この時、僕がお姉ちゃんと言った瞬間、周囲がざわついた気がするけど……気のせいだよね!
「ふふふ、本当は家で待ってようかなぁって思ったんだけど、せっかくだから迎えに来ちゃった☆」
「そっか。ありがとう、お姉ちゃん!」
「うへへぇ、いいのいいのー。あぁ、椎菜ちゃんマジ天使ぃ! もう、好き好き! 心の底から愛してるぅ!」
そう言うと、お姉ちゃんは突然僕を抱きしめて来た。
お姉ちゃんの体は柔らかくてあったかいけど、ここは外だからさすがに恥ずかしい。
「あぷっ、お、お姉ちゃん、ここお外だし、あの、が、学園前だから……」
「クンカクンカ、すーはーすーはー……うえへへぇ、久しぶり&初のロリ椎菜ちゃん……! ふわぁ~~~~~っ! なんか、ハイになりそうっ!」
「お姉ちゃんっ! こ、ここお外だよぉっ!」
「……おっと、ごめんごめん。久しぶりの椎菜ちゃんでついね。あ、でも嫌がってないってことは家ならいいのかな?」
「…………う、うん、お家なら全然……」
正直な所、お姉ちゃんに抱きしめられるのは割と好きです。
だって、大好きなお姉ちゃんだし……。
あと、この体は小さいからこう、すっぽりと収まるのが好きなのかも?
「ひゃっほーい! お姉ちゃん嬉しい! じゃあ、ささっと帰ろ帰ろー!」
抱きしめてもいいとわかると、お姉ちゃんは見るからに嬉しそうな反応を見せて、僕の手を引っ張る。
僕は苦笑しながらお姉ちゃんについて行く。
「う、うん! って、あの、お姉ちゃん? なんであんなに人だかりが出来てたの?」
「ふふふー、それはお姉ちゃんの美貌が原因だよ! なーんて。まあ、私が原因ではあるかな」
「そ、そっか。お姉ちゃん美人さんだもんね。仕方ないよ」
たしかに、お姉ちゃんなら人だかりが出来てても不思議じゃないかも。
「わーい! 椎菜ちゃんに褒ーめらーれたー!」
「ふわぁ!? も、もう、まだ外なんだから……あと、暑いです……」
「おっと、ごめんごめん。やっぱり、久しぶりの生の椎菜ちゃんだからテンションが上がっちゃってー」
「生って……」
お姉ちゃん、言い方変だよ。
「さぁ、帰ろー☆」
「ふふ、うん」
テンション高く言うお姉ちゃんに自然と笑いを零しながら、僕たちはお家への道を歩きました。
◇
お家に到着。
「わー、久しぶりの実家だー! うーん、なんだか懐かしいなぁ」
「あはは、お姉ちゃん一年以上帰ってなかったもんね?」
「まあねぇ。お父さんたちが厳しいんだよ~。まったく、可愛い可愛い椎菜ちゃんを可愛がって何が悪いのか!」
「あ、あはは……」
ぷりぷりと怒るお姉ちゃんに苦笑いを零しながらリビングへ。
「お姉ちゃん、何か食べたいものはある?」
「え、なになに? 作ってくれるの!?」
「もちろん。なんでもいいよ~」
「わーい! じゃあじゃあ……ハンバーグがいいな! 椎菜ちゃん特製ハンバーグ!」
「ふふ、うん、わかったよ。ちゃっちゃと作っちゃうから、待ってて!」
「待つ待つ! ずっと待つよー!」
「そんなに待たせないよ~」
お姉ちゃんの大袈裟な言葉に笑いながら、僕はせっせと夜ご飯の準備を進めていく。
お姉ちゃんが来ることを見越して……というより、僕は基本的に一週間分の食材を買い溜めするタイプなので、冷蔵庫の中には食べ物がいっぱい入っています。
そこから必要な材料を取り出して言って、せっせとハンバーグのタネを作り……三十分ほど放置。
その間、付け合わせの人参のグラッセとキノコの炒め物に、シーザーサラダ、コンソメスープを作る。
シーザーサラダに乗ってるあの、サクサクする……クルトンだったかな? は、パンを小さく切って電子レンジでチンすると簡単にできます。まあ、時間を間違えちゃうと固くなっちゃうから、この辺りは慣れだけど。
せっせせっせと副菜を作り、キノコの炒め物は完成して、人参のグラッセはもう少し煮込むだけで完成になり、スープの方も煮込むだけ。
それらを終える頃には丁度三十分経っていて、ハンバーグを整形して空気抜きをしていく……んだけど……。
「むむぅ……手がちっちゃいから難しい……」
いつものハンバーグのサイズで作ろうとすると、今の手は小さすぎてそれが出来ない。
「仕方ないかなぁ……お姉ちゃん、ハンバーグ、一個一個がちっちゃくなっちゃうけど、それでもいい……?」
「全然OK! というか、この私が椎菜ちゃんの愛情がこれでもか! と籠った料理に文句を言うわけがないよ!」
「そ、そっか。えへへ、ありがとう。じゃあ、美味しいの作るね!」
「ぐはっ!」
「お姉ちゃん?」
「な、なんでも、ないっ……」
「そ、そう? じゃあ、もうちょっと待っててね!」
「お、おっけー……」
胸を抑えたと思ったら倒れたり、どうしたんだろう?
でも、僕相手だとよくあったことだし……いつものことかな?
ともあれ、美味しいご飯を作らないとね!
◇
「美味しいっ……美味しいよぉっ……!」
ご飯が完成して、二人で一緒に食べ始めるなり、お姉ちゃんはぽろぽろと涙を零しながら噛みしめるようにご飯を食べ始めた。
「あ、あの、お姉ちゃん? 普段ちゃんとご飯食べてるの……?」
あまりのたべっぷりに、僕はもしかしてと不安を感じながらそう訊いてみる。
「むぐむぐっ……ごくんっ。食べてるけど……ほ、ほら、私あんまり家事が得意じゃないからね……だから、その、お弁当とか、外食で……」
「えぇ!? だ、ダメだよっ! ちゃんとバランスのいいご飯を食べないと、体壊しちゃうよ!? 僕、お姉ちゃんが病気になるの嫌だからねっ!」
「は、はい……」
「もぅ、お姉ちゃんは……うーん……やっぱり、一緒に暮らした方がいいのかなぁ……」
「で、でも、お父さんたちが許してくれないし……」
「それはそう、なんだけど……ほら、前と違って僕の方の事情が変わっちゃったし……正直な所、女の子の体ってまだ慣れないところも多くて……だから、お姉ちゃんがいてくれるとありがたいなぁ、って」
これは僕の偽らざる本音です。
この姿になっていなかったら、大して問題はなかったんだけど、やっぱり女の子の体にはまだまだ慣れていない。
だから、お姉ちゃんのように、生まれた時から女性な人が身近にいてくれたらなぁ、って思っていて……あとはやっぱり、お姉ちゃんと一緒に暮らしたいなぁっていうのもあります。
「な、なるほど! つまり、椎菜ちゃんの現状を利用して一緒に暮らそうって言う事だね!?」
「ま、まあそうだけど……」
「よーっし! ご飯食べたら連絡してみよ! それに、いつかは椎菜ちゃんの事を言わなきゃいけないんだし」
「そ、そうだね。許可が下りればいいけど……」
「まあ、ダメもとダメもと! その前に食べよーっと! はむっ! んん~~~~っ! やっぱり最高!」
「ふふ、まだまだあるから、いっぱい食べてねっ」
「うん!」
あぁ、やっぱりこういう家族の団欒ってすごくいいなぁ……。
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