#14 コラボ配信の相談、連日が決定してしまう

 作中の時期がわからない、とのご指摘をいただいたので、遅くはありますが、時期を書いておきます。

 #1の冒頭部は、2023年8月1日です。

 #8が、2023年9月1日ですね。

 あとの時間の進みは、椎菜がモノローグで語っている通りです。


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「はふぅ……お風呂きもちぃ~……」


 配信を終えた後、僕はお風呂に浸かっていました。

 この時期はシャワーで済ませる人が多いかもしれないけど、僕は夏場でも普通にお湯に浸かります。

 とはいっても、ぬるま湯にしてるけどね。

 熱いと熱中症になっちゃうし。


「んん~……それにしても、おっきいなぁ……」


 そう呟きながら見るのは、お湯に浮いている大きく膨らんだ胸。


 普段はかなり重くてちょっと大変なんだけど、お風呂に入っている間は浮力の関係で楽になっているからね。おかげで、男だった時以上にお風呂に浸かる時間が長くなった気がします。


「あ、そう言えばコラボの日時を決めるんだっけ。んーと……ディスコードディスコード……」


 ふと、さっきの配信中に三期生でコラボをしようという話題になっていたことを思い出して、僕は持ち込んでいるスマホでディスコードを開くと、三期生サーバーのボイスチャットに入室。


 三人はオンラインになっているみたいだし、多分入って来ると思うけど……と思ったら、三人がルームに入ってきました。


『こんばんわ! みたまちゃん!』

『こんばんわ』

『こんばんわぁ~』

「こ、こんばんわっ。あの、は、入って来てくれてありがとうございますっ」


 入って来てくれたことに対してお礼を述べる。

 考えてみれば日程を決めようってメッセージを入れればよかったと思うけど、こうして入って来てくれたからいいかな……?


『あれ? みたまちゃん、声がかなり反響してない?』

「そ、そうですか?」

『あらぁ~、本当ですねぇ~。どうしたんですかぁ~?』

「あ、す、すみません、今お風呂に入っていまして……」

『『『お風呂?!』』』

「ふわぁぁ!?」


 突然の大音声にびっくりしてざばぁっ! とお風呂の中に突っ込んでしまう。


「ぷはっ……はぁ、ふぅ……」

『あ、ごめんね! 大丈夫だった?』

「だ、だいじょうぶです……あの、ごめんなさい、一度出た方がいいですよね……」

『『『いや大丈夫!』』』

「そ、そうですか……? じゃ、じゃあ、このままで……」


 何が大丈夫なのかはわからないけど……。


「そ、それで、あの、コラボのお話なんですけど……い、いつやりましょうか?」

『今週の金土日のどこかがいいんじゃないかな?』

『ん。たしかに。平日ははつきとみたまは学生だから。そういえば、ふゆりは普段何してるの?』

『わたしはぁ~……うふふ、秘密ですよぉ~』


 艶っぽく笑って、ふゆりさんは自分のことを秘密だと言ってきました。


『そっかー、まあプライバシーだもんね。仕方ない! じゃあじゃあ、やっぱり土日がいいのかな?』

「あ、はい、僕はその方がありがたいかもです……」

『ん、じゃあ土曜日のお昼はどう?』

『あ、いいですねぇ~。私は大丈夫ですよぉ~』

『あたしもOK!』

「ぼ、僕も大丈夫です……」

『じゃあ決まりだね! 待ち合わせはどうする? って、あ、そっか。みたまちゃん的にはやっぱりオンラインコラボの方がいいかな?』


 最初はどこで待ち合わせにするかを話そうとしたはつきさんだったけど、すぐに僕のことを思い出してか、オンラインのコラボの方がいいか尋ねてきました。


「あ、え、えと……お、オフラインで、大丈夫ですっ……!」


 だけど、僕はオンラインではなくて、オフラインで大丈夫と返答。


『え、いいんですかぁ~? あの、無理をしなくてもいいですけどぉ~』

『ん、ふゆりの言う通り』

『そうだぞ。みたまちゃんはまだ高校生なんだし、無理はしなくていいぞ!』

「い、いえ! だ、大丈夫ですよ! そ、それに、いつかは会うことになると思うんです。それなら、早めに会っておきたいなぁ、って思って……だ、だから、大丈夫ですっ……!」


 だって、らいばーほーむってリアルイベントをやってるし、多分だけどいつか僕もそこに出ることになるかもしれないから……それなら、早めに会っておきたいし、何よりどんな人なのか気になると言うのもある。


『了解だよ! じゃあ、集合場所は……って、考えてみたらみんなって住みどこなんだろう? みたまちゃんは知ってるけど……いるかちゃんとふゆりさんってどこなの?』

『ん、浜波はまなみ市』

『私は、来咲くるさき市ですよぉ~』

『ふむふむ、じゃあ、みんな住みが近いんだね! あたしとみたまちゃんは美月市だし』


 本当だ。

 確かにみんな住んでる場所が近いみたい。

 浜波市と来咲市は隣の街だし、美月市は僕が住んでる場所だし……そんなに遠くないんだ。


『たしかに近い』

『そうですねぇ~……って、ちょっと待ってぇ~?』

「どうしたんですか?」

『はつきちゃんはどうしてぇ~……みたまちゃんの住んでいる場所を知っていたんですかぁ~?』

『……言われてみれば、たしかに。どういうこと?』

『あ、実は最近ばったりみたまちゃんと出会っちゃってね! ね、みたまちゃん!』

「あ、は、はい。その、たまたまお友達とアイスを買っている時に……ばったりと」

『むっ、ずるい!』

『本当ですよぉ~! どうして黙っていたんですかぁ~!?』


 はつきさんと僕が実はリアルで会っていたことを知った二人は、ずるいとはつきさんに迫っていた。

 あ、あはは……。


『合意なしに言うのはちょっとどうかと思ったからだぞ』

『……む、一理ある』

『そ、そうかもしれませんけどぉ~……ま、まあいいですよぉ~。今週の土曜日に、遂にみたまちゃんのご尊顔を拝むことが出来ますからねぇ~!』

「あ、あの、そこまで期待しないでいただけると……」

『ん、無理。期待MAX』

「ふえぇ!? あ、あのあの……じ、時間っ! 時間はどうしますか……?」


 この話題を続行させるとちょっと怖いので、強引に話題を変更して集合時間等の話をする。


『10時に美月駅集合でいいと思う』

『異議なしですよぉ~』

『あたしも全然OKだぞ!』

「僕もいいですけど……あの、僕とはつきさんが動きやすくなってますけど、いいんですか……?」

『全然大丈夫』

『むしろ、みたまちゃんに長距離移動はさせたくないですからねぇ~』

「そ、そうですか。あの、ありがとうございます……」


 正直な所、この体になってから暑さが以前よりも苦手になっちゃってる以上、その方がありがたいです……。


『じゃ、10時に美月駅集合! 配信場所は事務所の方でいいかな?』

『ん、私が申請しておく』

『助かりますぅ~』

「お願いしますっ」

『任せて。じゃあ、決まり。……私はもう少ししたら寝るからここで落ちる。おやすみ~』

『うん、じゃああたしも寝るぞ! コラボ、楽しみにしてるね! おやすみ!』

『私も楽しみにしていますねぇ~。それでは、おやすみなさぁ~い~』

「は、はいっ、おやすみなさい!」


 と言った感じに、コラボの日時は決まりました。

 反省会コラボの時とは違ってオフコラボになるけど……緊張六割、楽しみ四割くらいの気持ちになっています。


「どうなるかなぁ……」


 まあ、その前に学園祭の準備も明後日から始まるし……あれ? もしかして僕、結構忙しくなる……?


 ……う、うーんまあ、なんとかなるよね!



 二日後。


「えー、というわけで今日から学園祭の準備期間に入る。とはいえ、まだ五、六限限定なんで、最初の内はまずどういう内装にするか。メニューは何にするか。各々の役割をどうするか等を決めることになるんで、まあ、気長にやろう。どうせ、時間はまだある。いいな」

『『『はーい』』』


 という朝のHRがあり、一時間目~四時間目は少しだけ浮足だったような雰囲気の教室内だったけど、いざ昼休みに入ると、そわそわとした雰囲気が一気に強くなる。

 そして、五時間目。


「んじゃ、色々役割を決めるぞー!」

『『『Yeahhhhhhhhhhhhhhhh!』』』


 僕と柊君は実行委員であるため、前に出て来て進行をする。

 や、やっぱり僕、結構忙しくなりそうな予感が……。


 まず、学園生活をしつつ委員会のお仕事をして、学園祭の準備をして……さらにVtuberの活動もする……あ、本当にすごいことになってる……!


 で、でも、一応配信の方は少し減っちゃうって言う事は伝えてあるから……少なくとも、宿泊期間に入るまでは、なるべく配信しよう! うん!


「まずは、大事な部分だ。誰がメイド役、そして執事役をやるかだが……」

『『『じー……』』』

「……ふえ?」

「まあ、そうなるわなぁ……」

「え、な、何? どういうこと……?」


 少し考え事をしていた僕だったけど、不意に感じたクラスのみんなからの視線にどういうことかと思わずきょろきょろする。


 な、なんでこんなに見られてるの……?


「あー、椎菜。メイドやってくれ」

「ふえ? メイド……? ……ふええぇぇぇ!? ぼ、僕がやるの!?」

「お願い椎菜ちゃん! 椎菜ちゃんのメイド服姿とか絶対人気でるから!」

「ってか私たちが見たい!」

「超見たい!」

『『『お願いしますッ!』』』


 なぜかクラスのみんなが頭を下げて来ると言うよくわからない状況に、僕はたじたじになる。


「ふえぇぇ!? そ、そそそそ、そんなこと言われても、あの……ぼ、僕なんかがやっても……よ、喜ばれないと思う、けど……」

「もうその仕草と反応だけで100%よ」

「むしろこれで人気でなかったらヤバいだろ」

「わかる。美的感覚がイカレてると言わざるを得ないな」

「そ、そこまで……?」

「ま、学園祭だし、やってみてもいいと思うぞ。何事も経験だ経験」

「け、経験……」


 たしかに、何事も経験っていうのはよくわかる。

 実際、僕がVtuberをやろうと思ったきっかけってひかりさんのあの言葉だもんね……で、でも、僕元男だし……め、メイド服は……。


 うぅ、でも……すっごく期待された眼を向けられてるし……。


 あぅぅぅ~~~~~!


「わ、わかったよぉ! や、やりますっ! やるよぉ~~~っ!」

『『『よっしゃあああああああああ!』』』

「そ、そんなに喜ぶ……?」


 なんか怖い。


「よし、接客が一人決まったところで、あと十五人くらい決めてくからなー」


 柊君が上手く進行してくれている横で、僕は係を書き出して、横に名前を書いていく。

 うぅ、メイド服かぁ……。


「よし、接客は決まったな。次は調理スタッフだが……あー、すまん。そもそも料理できる奴ってどれくらいいる? あぁ、接客の奴も含めてな」


 柊君がそう訊いて来たので、僕は手を上げる。

 他にも何人かいたけど……全体的に見ると、人数は少ない、かな? 僕含めて六人くらい。


「そうか、六人か……仕方ない。とりあえず、六人は調理スタッフをやってくれるか? 椎菜、どうだ?」

「んっと……レシピが決まれば教えることはできるからもうちょっと増やす?」

「いいのか?」

「うん。というより、接客してキッチンして、っていうのは結構大変だからね。あとは、申請すれば調理室を使えるし、そこである程度作って、当日それを使うこともできるから。だからもうちょっとだけ増やしても問題はないかな」

「なるほど。ってことなんで、やりたい奴いるか? いなかったらくじ引きになるが……あー、いないな。んじゃ、くじ引きな」


 というわけで、調理スタッフをくじ引きで決めることに。

 人数はプラス四人くらい。

 そんなに大人数は必要ないからね。


「よし、決まりだ。あとは――」


 と、どんどん当日に必要な役回りを決めて行き、当日の方は何とか確定。


 次に取り掛かるのは準備期間の担当。

 ここで決めるのは、内装、デザイン、服飾系、メニュー担当の四つ。

 他にも一応雑用係があるにはあるけど、こっちは手が空いた人がやる、ということで決着。


 僕は料理が出来るという理由から、メニュー担当に。

 柊君は内装の方になり、当日は僕と一緒に接客です。イケメンだもんね。


 ちなみに、麗奈ちゃんは服飾の方です。

 そして麗奈ちゃんも当日は僕と一緒に接客になっています。

 柊君以外にお友達がいるのは心強いです……。


「よし、決まりだ! この後からこれで動いていくから頑張ろうぜ!」

『『『おー!』』』


 と一致団結? したところで、チャイムが鳴り、五時間目が終了になりました。


「おっと、時間か。それじゃあ、続きは六時間目ってことで。一旦休憩!」



 五時間目、六時間目と学園祭の出し物についての大まかな決め事は決め終え、その日は帰宅。

 家に帰ると、お姉ちゃんから電話がかかって来た。


『もしもし! 椎菜ちゃんの愛するお姉ちゃんですよー!』

「あ、うん、どうしたの? お姉ちゃん」

『む!? 椎菜ちゃんからの反応が薄い……! これはもしや、倦怠期!?』

「僕たち別に結婚もしていなければ付き合ってもいないよ……?」

『ふふふ、ごめんごめん。えっとね、要件なんだけど……明後日、椎菜ちゃんの家に泊まるから!』

「うん、わかったよ。じゃあ、準備して待ってるね」

『……あ、あれ? 理由聞かないの?』

「え? うーん、別にいいかなぁって。お姉ちゃんなら突然来ても全然構わないもん」


 過保護な所はちょっとだけ困っちゃうけど、それでも大好きなお姉ちゃんであることに変わりはないわけだし、それに、家族だもん。


 お父さんとお母さんは海外にいて気軽に会えないし、そんな僕に気軽に会うことのできる人はお姉ちゃんだけだし……そう言えば、最近は会っていなかったから久しぶりかも。

 うん、嬉しい。


『わーい! 椎菜ちゃん愛してるー! アイラビュー!』

「あ、あはは……んっと、用件はそれだけなの?」

『おっと、忘れてた。えっと、コラボ明後日ね』

「はーい、明後日コラボ…………え!?」

『というわけなので、あとの情報はマネージャーから行くから確認しておいてね☆ じゃあ、ぐんなーい!』

「あ、ちょっ、お姉ちゃん!? き、切れちゃった……」


 一方的にお話しするだけして、お姉ちゃんは通話を切っちゃいました。

 え、えぇぇ……たしかに、やるとは言ったけど、突然すぎるよぉ~……。

 なんて、一人お部屋で困惑していると、今度はマネージャーさんから電話がかかってきました。


「も、もしもし」

『もしもし、廿楽です。椎菜さん、今お時間よろしいでしょうか?』

「は、はい。あの、もしかしなくても……お姉ちゃんとのコラボでしょうか……?」

『あぁ、既にお話が行っていたようですね。はい、そのお話です』

「や、やっぱり……」

『コラボの日程ですが、明後日を予定しています。場所は……まあ、姉妹ということですので、椎菜さんのご自宅で大丈夫でしょうか?』

「そ、それは大丈夫ですけど……あの、事務所のお部屋じゃなくていいんですか?」


 たしか、オフコラボ用のお部屋があったはずだけど……。

 それに、らいばーほーむのオフコラボって、一部の例外を除くと、大抵はそのお部屋だった気がするんだけど。

 あ、例外として、どちらかのお家で配信をしたり、カラオケなどで配信することもあります。


『はい。それに、明後日は普通に平日ですし、椎菜さんは高校生ですので、ご自宅の方がやりやすいでしょう』

「そうですね……そういうことなら、お家でやらせてもらいます」

『わかりました。設定等は愛菜さんもよく理解していますのでご安心ください。それでは、よろしくお願いします』

「はい、こちらこそよろしくお願いします」

『では、失礼致します』


 そう言ってマネージャーさんとの通話は終了。


「はぁ……まさか、明後日コラボするなんて……お姉ちゃん、いつも突然だよぉ……」


 でも、そこがお姉ちゃんの良い所でもあると思っています。

 思いついたら即行動、そんなタイプだからね。


「ん~……上手く体調をコントロールしないと」


 とりあえずのところは、平日は、可能であれば二回配信して、土日は必ずどちらか一回は配信かなぁ。

 今週は金曜日がお姉ちゃんとのコラボで、土曜日ははつきさんたちとコラボ……って、二日連続コラボするの? 僕……。


 色々大丈夫かなぁ……。

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