無表情クール系女子の姫乃姉妹が可憐な女子を目指して甘えたがっている件

第15話 これしきで満足するの？

　冴奈の顔が間近に迫りくる中、俺が出した答えは――

「――や、やりたい……」

　多分エロい方の意味で合ってるはずだし、他のみんなには聞こえない声量で冴奈に正直に答えてみせた。

　それなのに……。

「んん……？」

　あれ、冴奈的にエロい方向の質問じゃなかったかな？

　俺の答えがミスってしまったのか、冴奈はいつもの無表情女子に戻ってしまっている。

「恭二くん……どういう？」

「えっ、いや、だからその……冴奈とその……えっ……ちなことを」

「ん～……うん。じゃあ、いいよ。今すぐやって？」

「ええっ？　い、今すぐ？」

「うん」

　質問に答えただけなのに、教室……それも周りに人がいる前でえっちなことをやっていいとか、それはいくら何でも修羅な答えすぎる。

「だって恭二くん。男子で一番人気なことだからみんなやってるって言ってたよ？」

「そんなこと……言ったの？　俺？」

「うん」

　スパリゾートで言ったことをそのまま信じてるのは間違いないんだろうけど、それとこれとは全く意味が違うような。

「ちなみに揉むのは肩じゃなくて、つまり――」

「おっぱいだよね？　恭二くん嬉しそうに言ってたし」

　ああ、やっぱりそっちの意味で合ってた。つまり俺があの時揉んでいたのは、肩じゃなくて姫乃姉妹の胸の方だった。

　参ったな……どうすればこの場を乗り切ることが出来るんだ？

　こうなれば駄目元で教室にいるはずの貫太を――いや、駄目か。他の男子に紛れて俺から見えないとこに隠れて立っている。

　むむむむ。

「……あんた、さっきから姫乃さんに何をしようとしてるわけ？」

　悩みまくっていると、堀川が声をかけてきた。冴奈と昼に行動してるせいか俺が冴奈に何かしてる前提で割り込んできたな。

「俺は話をしてただけだぞ」

「姫乃さん、そうなの？」

　――って、俺の存在は無視かよ。

「うん。恭二くんがヤりたいんだって」

「……えっ？　ヤ、ヤりたい……えっと、それってあっちの意味で？」

　堀川は唖然とした表情で冴奈を見つつ、俺には鋭すぎる目つきで睨んできている。

「恭二くんにね、スパリゾートで美涼とわたし、おっぱいを揉みしだかれたの。それが男子で一番人気みたいだから、ここでヤっていいよ？　って伝えてたの」

　何だかとんでもない方に歪曲されてるような？

「男子で一番人気……？　も、揉みしだかれることが？　ほ、本当にそんなことを言われたの？」

「うん。恭二くんが言ってたの。それならここでヤっていいよって――」

「――だ、駄目だからね？　そんなの！　と、とりあえず、ちょっとだけこの場を離れててもらえる？」

　俺に厳しい説教をするつもりなのか、堀川は冴奈を少しだけ下がらせた。

「はぁ～……名川。演劇の時に見境なく告白していた時はそれでも仕方が無いかなって納得してたけど、妄想から勝手に抜け出してとうとう手を出したな？」

「ち、違う違う！　俺の意思で揉みしだいたわけじゃないって！」

　肩だと思っていたし完全に事故だろこれは。

「貫太くんの話だと名川にとって初めての恋愛だから応援してあげようって話だったのに……この間から姫乃姉妹と行動していたのはソレが狙いだったな？　純真で何も知らない姫乃さん相手にあんたは！！」

　やばい、堀川の拳に力が込められているぞ……。しかもさすがの騒ぎで教室のみんなが俺たちに視線を注いでいるじゃないか。

「ちっ、ちが――っ！？」

　否定するよりも先に、堀川の平手打ちが俺の頬にクリーンヒット。風切る早さに思えるほどに動きがまるで見えなかった。

「いつつつ……」

「ざまぁ！！　そこで反省しろ！」

　しかも情けないことに堀川の平手打ちを喰らった俺は、腰を抜かしてその場に倒れていた。

　その光景を見て見ぬふりするかのように、他のみんなは何事もなかったかのようにしている。

　なんてこった……。

　堀川にぶたれたうえ、貫太すら俺に声をかけてこないなんて。

　冴奈に誤解を与えたうえ悪いことをしていたのは変わりない。

　……ということで、床に手をつけて立ち上がろうとすると、それを阻止する勢いで

何かが俺に覆いかぶさってきた。

「恭二くん……柔らかさ、感じる？」

「へっ？」

「堀川さんに心配かけたくないから、今は恭二くんが感じたかった感触をあげるね？」

　俺に上半身を預けてきた冴奈は、長い髪で俺の顔を隠して他の人から見えないようにしている。

　そして冴奈から与えられた感触は、とても柔らかくて弾みのある胸の感触そのものだった。それがちょうど俺の顔に乗っかっているような感じだ。

「…………んむむぅ」

「満足？」

「んむっんむむっ！」

「そっか。恭二くん、これしきで満足出来る男の子なんだ？」

　ええ？

　何か一瞬だけ悪い表情をしたように見えたけど、気のせいだよな？

　俺の勝手なイメージだと冴奈は所謂、あっちの知識も経験も無くてかなり純粋な美少女って思ってるけど、もしかしてそうじゃなかったりするんだろうか。

「まっ、満足なんてそんな……」

「……（こ、これくらい言っておけば恭二くんより強いって思われるよね？）」

「おいっ！！　名川！　いい加減、姫乃さんから離れろ！！」

「姫乃さん、今助けてあげるからね！！」

　冴奈の胸の感触に浸る余裕もなく、俺は結局堀川や他の女子たちによって冴奈から強制的に引き離された。

　それにしても、さっきの冴奈の言葉だけ聞くとまるで小悪魔な感じがしたけど、そうじゃないよな？

「…………（美涼よりも先に甘えられるようにするんだから）」