第9話 生きるにはシノギが必要ですぜ兄貴
「──ここがギルドです!」
ギルドと呼ばれる建物の中は、フロアにテーブルと椅子、正面が受け付け、左右の壁には大量の張り紙といった単純な造りだった。
受け付けの眼鏡をかけた若い女と初老の男は、俺たちを怪訝な目で見ながら何やら耳打ちしながら話をしている。
「ここには僕のような冒険者や、傭兵、薬師など様々な職業の人へ向けた依頼が集まっています! まずはサクラギさんたちもここに登録して仕事を見繕ってもらうといいでしょう」
「へぇ、ロンは冒険者だったのか。だからさっきは用心棒として盗賊の退治を?」
「まあそんなところです……。戦争で兵士や傭兵は国にどんどん取られていったので、ああゆう危険な仕事も僕のような経験の浅い冒険者が引き受けないといけなくなってしまって……」
ロンは俯きながらそう本音を漏らす。
彼がさする左腕には古い血が滲む包帯が巻かれていた。
「聞いたかお前ら! どうやらこの街には俺たち向けのシノギが沢山残っているらしい……!」
「血が騒ぐな兄弟!」
「兄貴の暴れる姿がまた見られるなんて楽しみですぜ!」
「戦争じゃァァァ!!!」
所詮俺たちみたいな人間は、はみ出し者の集まりだ。だが、だからこそ俺たちのような人間がやるべき仕事が回ってくる。
「そういう訳だロン。俺たちはどんな危険な汚れ仕事でもやる。だからお前はもう無理をしなくていい」
「……! は、はい!」
俺がロンの肩に手を乗せそう言うと、彼の表情はパッと明るくなった。
「どうもこんにちは……。カシラが話があるって言ってるんですが」
真っ先に受け付けの元へ向かったのは吉野だ。
こういう交渉事は全てアイツに任せておけば問題ない。桜庭組の収入源はほとんどが吉野の築いた財産運用で成り立っていたぐらいだ。
「こ、こんにちは……。今日はどういったご要件で……?」
受け付けの若い女は困惑しながらも事務的に返事をする。
「こっちでいいビジネスができると聞きましてね。ウチらにも一枚噛ませてもらえないかと……。ああ! もちろん給料分は働かせてもらいますよ?」
「はあ……。ですが本日は急ですので人数分のお仕事を紹介することは難しいですね……。今日のところはギルドへの登録と、依頼を受けて仕事をこなすまでの流れのご説明でよろしいですか? 明日には登録された皆様へ向けての依頼を整理しますので」
「ああ、急に大勢で来てすみませんねぇ! もちろん、そちらさんの段取りに合わせますよ!」
どうやらこのギルドでは身元が明らかでなくても仕事が回ってくるらしい。裏社会の人間にも優しい仕組みだ。
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