第7話 情報収集ですね兄貴

「……とりあえず緊急の要件は済んだところで自己紹介をさせてくれ。俺は桜庭組の若頭、桜木大和だ」

「くみ……? わかがしら……? さくらぎやまと……?」


 彼は俺の言うことを一つも理解出来ていないようだった。


「組ってのは……ヤクザや極道って言っても分からねぇよな……。まあなんだ、裏組織とかそんな方向の人間。そして俺は若頭っていう役職で、一応この中では一番上に立たせてもらっている」

「お、お兄さんたち、悪い人なんですか……!?」

「……まあ、人様に胸を張って自慢できる仕事ではねぇかもな。だが、俺たちなりに仁義を通して生きているつもりだ。さっきもそうだけどな」


 そこまで言っても彼は依然として警戒の目を向けてくる。


「そして俺たちのルールの中に、カタギ……一般人には手を出さないっていう鉄の掟がある。だからどうか安心して欲しい」

「…………分かりました。お兄さんたちがどんな仕事をしていたとしても、先程助けて頂いた事実は変わりませんので」


 俺が深く頭を下げ、組員全員がもう一度頭を下げることでやっと信じてもらえたようだ。


「そして俺の名前は桜木大和。サクラギって呼んでくれ。そしてこっちは──」


 五十人全員は紹介できない。それは時間の問題もあるが、櫻庭組の構成員二十万人全ての名前を覚えてなどいられないからだ。

 その二十万人の中から運悪く選ばれた五十人の名前やプロフィールは後々しっかりと覚えてやるとしよう。









 そんなこんなで俺は、神代、大山、吉野、染井だけ紹介した。


「──とても大人数のパーティーだとは思いましたが、リーダーだけでも五人いるんですね。……申し遅れました、僕はこの街で冒険者をしているロン。こっちは妹のカレーンです」

「……どうも」


 とんがり帽子を深く被っていてよく見えなかったが、もう一人は女の子だったようだ。

 彼女は無愛想ながらも挨拶してくれた。


「よろしくロン、カレーン。それじゃあこの街について色々教えてくれるか」

「はい。この街はブルーメ王国のキルシュバオムという街です。まず皆さんはブルーメ王国は知っていますか?」

「いや、無学ですまねぇがさっぱりだ」

「分かりました。では一からお教えしますね」


 それからロンは丁寧にブルーメ王国の事や、キルシュバオムについて説明してくれた。


 ブルーメ王国はこの大陸の中でも中規模な国であり、農業が盛んで安定していたこと。しかし近年になり他国と戦争が起こり情勢が危ういこと。

 キルシュバオムも王国の中で有数の大都市であり、平和な頃は花の都とすら謳われた商業都市だったが、今では戦争の影響もあり見る影もなくなってしまったということ。


「──中々大変な時に邪魔しちまったみたいだな」

「いえいえ! 事情を知らない旅人さんには仕方ないことです。それに、少しでもお客さんが来てくれた方が、街としては潤いますからね」


 ロンはそう言い笑って見せたが、その顔の節々には疲れや悲しみが滲んでいた。

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