第6話 これが異世界の街ですか兄貴
「あ、ありがとうございます! えっと、旅の方……ですか……?」
魔法使いらしい二人組がこちらへ駆け寄ってきた。近くで見ると彼らはまだ中学生かそこらの年齢に見える。
「……ええっと、まあ、似たようなもんだ。ちょっと迷っちまってな。それと怪我したヤツもいるんだ。ちょっと大人数なんだが、よかったら街の中で少し休める場所と、この辺りのことを色々聞きたい」
「もちろんです! 恩人の皆さんを街の皆も歓迎してくれます! こちらへどうぞ!」
「悪ぃな。──いいぞお前ら!」
俺たちは二人の案内で無事に街の中へ入ることができた。
「──へぇぇぇ! 本当に日本じゃないんですね兄貴!」
「日本どころか地球には魔法なんてもんも無ぇだろ大山」
異世界の街なんぞ初めて見たが、ガキの頃によくやったドラゴンなんとかってゲームの街によく似ていた。
石畳の上に木と石煉瓦で造った建物。店先に並ぶ初めて見る食べ物。今まで海外旅行なんてしたこともないが、この異質さは俺たちに異世界とやらの実感を味わわせるには十分だった。
「──どうぞ! ここは僕も行きつけの街一番の宿屋なんですが、今はお客さんは誰もいないので……」
「へぇ、しけてんなぁ……」
「コラ大山ァ!」
しかし大山がそう言いたくなるのも頷ける。
二階建てで一階が酒場、二階が宿泊部屋になっているこの建物には受け付け以外、誰一人としてお客がいなかった。
「……ごほん。どうぞ皆さんお掛け下さい。──ああ! まずはそちらの方の治療を」
「すいやせんお
「気にするな木嶋。診てもらえ」
「はい……」
木嶋は黒のスーツパンツを捲りあげた。
露わになった血塗れの脚には、生生しい噛み跡がいくつも残されている。
「それじゃあ治療しますね。
魔法使いがそう唱えると、彼の手から淡い緑色の光が溢れ出し木嶋の脚を覆い隠くした。
そして光の消えた木嶋の脚からは傷跡が綺麗さっぱり消えていた。
「すげぇな、本当になんでもありかよ……」
神代はペシペシと木嶋の脚を叩いてみるが、痛がる様子は全くない。
「ありがとうな。おかげでうちの若いモンが助かった。礼を言う」
俺は立ち上がり膝に手を乗せ頭を下げた。
その様子を見て組員全員が俺と同じように立礼をする。その光景は異世界の彼らにはさぞかし威圧的に映っただろう。
「い、いえ! 先に助けて頂いたのはこちらですので、このぐらいは!」
彼はそう照れくさそうに笑った。
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