第5話 流石関東の龍ですね兄貴!

「と、とにかく話をしに行きましょうカシラ……。どうやら日本語か英語っぽい言葉を発しています。何処の国を舞台にした異世界か分かりませんが、言葉は通じそうです」

「エモノを持った男共が五人……、魔法っぽいのを使っているのが三人……。こっちが五十人全員で行ったらビビらせちまうな。兄弟! 大山! 染井!」


 見たところ、小汚い男たちが街を襲おうとしており、魔法使いっぽい奴らが街を守ろうとしているようだ。


「……あー、ちょっとすんません、兄貴が話をしたいと仰ってるんで、そこどけてもらえませんかね」

「だ、誰だお前!」

「ちょ、あなたたち危ないです! 魔法が当たらないようにその盗賊から離れて!」


 どうやらさっきの炎やらは本当に魔法だったらしい。そしてこの武器を持った男共が盗賊と……。


「チッ! 誰だから知らねぇけど、邪魔したからにはお前らも殺してやるよ!」


 盗賊の一人がナイフを振りかぶりながらこちらへ突進して来る。


「ズブの素人か……。お前ら! こんなのにエモノは必要ねぇな!?」

「当たりめぇだぜ兄弟!」

「余裕ですぜ兄貴!」

「戦争じゃァァ!!!」


 俺は振り下ろされたナイフにスーツを翻しながら躱し、逆にその手を掴み腕に膝蹴りを加えた。


「ぐわァァ!!!」


 ボキン! と腕の骨が砕ける音と共に盗賊はナイフを落とす。


「ヒュァッ!」

「ぶべぁ!」


 そこに神代の強烈なハイキックが顔面に炸裂。盗賊は顔から血を吹き出しその場に崩れ落ちた。


「ヒュ〜! お前のその顔、久しぶりに見たぜ兄弟! 関東の龍・桜木大和復活だな!」

「みすみす死んじまって、お嬢まで殺されて……。俺は親父の遺言を何一つ守れなかった……! 悪いな盗賊共! 俺は今フラストレーションが溜まっているんだ!」


 エモノを使いたくなかった理由の一つは、この拳を痛めながら誰かを殴りでもしなければ収まらない怒りが、俺の中でフツフツと湧き上がっていたからだ。


「くそォ!」


 残された二人の盗賊もこちらへ向かって来た。

 俺たちはアイコンタクトで誰がどれをやるか確認する。


 俺は右端の剣を持った盗賊に向かって走り出す。それを見た盗賊は横薙ぎを繰り出した。

 しかし俺は敵の攻撃のタイミングをずらすように走る足を止め、強く地面を踏み込んだ。すると剣は目と鼻の先を過ぎていき、空を切っていた。


 俺は前へ向かう勢いを、地面を踏み込んだ足で上方向に変える。そして呆気に取られた盗賊の間抜け面に上空から拳を叩き込んだ。

 この攻撃によろめく盗賊。俺はそのままガードの隙を与えず顎を蹴りあげる。この強烈なコンボに盗賊はノックアウト。真後ろにバタリと倒れた。


「見事なもんだな兄弟!」

「お前もな兄弟……」


 神代の方を振り向くと、そこには砕けた槍と気を失ったもう一人の盗賊の姿があった。大山と染井の前にも血を流し横たわる盗賊が転がっている。


「ま、こんなもんよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る