第3話 こりゃ何ですか兄貴!

「どうした!?」


 俺たちは叫び声の方へ駆け出す。

 だが俺たちが現場に着く前に、パン! パン! と乾いた音が二回鳴り響いた。


「何やってるんだお前!」

「だって、木嶋が!」


 組員同士が言い争っている。


「何拳銃チャカハジいてんだ!」


 俺はトカレフを持った三下組員の手から素早く拳銃を奪い、首根っこを捕まえた。


「か、カシラ! 木嶋の野郎が襲われてたんですぜ! 兎に!」

「兎だと!? 何馬鹿なこと言ってんだ! 兎如きに鳴らしてんじゃねぇ!」

「違います! デケェ兎なんです!」

「ああ!?」

「……お、おい兄弟、ソイツ離してやれ……。そしてこれを見ろ」


 神代がそう言うのでこいつを降ろしてやり後ろを振り返る。

 そこには右脚から血を流している木嶋とやらの横に、一メートル程の巨大な兎が転がっていた。


「馬鹿でけぇ……。何なんだこれは!?」

「兄貴、よく見てください! しかもこれ兎とは少し違いますよ!」

「あ?」


 大山に言われよく見てみると、兎の胸には薄紫に輝く菱形の石が埋め込まれているようだった。


「兎が代紋付けてやがりますぜカシラ! マサ、お前なら何か知ってんじゃねぇのか?」

「俺に振るなヒロ……。こんな生き物は初めて見た……」

「吉野で分かんねぇんだったら誰にも分かんねぇな……」


 兎らしきものの体に空いた二つの穴からはドクドクと血が流れ出し、白い体毛を真っ赤に染めている。

 生き物であることは確かだが、それ以上の情報は何も得られなかった。


「これ以上ここにいても仕方ねぇ。誰か木嶋をおぶってけ」

「これからどうするんですか兄貴?」

「近くに街がないか探すんだ。木嶋の手当と、ここが何処なのかという情報がいる」

「だがこんなモンがうろついてんなら、相当危ない山だぜ兄弟」

「ああ。だが俺たちにはこれがある。大山!」

「へい兄貴」


 大山はゴルフバックを降ろし、チャックを開けて中身を見せた。


「──はは、随分気合い入ってたんだな兄弟!」


 バックの中には、大量の拳銃、ドス、日本刀、サブマシンガン、ショットガン、ライフルに手榴弾、更にはロケットランチャーまで入っていた。

 加えて俺たちは全員が護身用に拳銃を一丁ずつ装備している。


「あのカチコミにはどうもできなかったが、この兎モドキには十分らしい。全員装備を整えて出発するぞ」

「よっしゃァ! 戦争じゃァ!!!」

「落ち着けヒロ」


 染井がアサルトライフル二丁を振り回している横で、吉野は制止しつつ手頃なサブマシンガンを手に取っていた。

 神代はドスを腰に差しショットガンを両手に構える。

 大山はライトマシンガンにロケットランチャーの重装備だ。

 俺は日本刀と拳銃、そして手榴弾をスーツに忍ばせた。。

 残りの残った拳銃や大量の弾は若いモンに持たせる。


「お嬢をこのクソ兎から守れ! ──行くぞお前ら!」

「「おう!!!」」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る