第2話 ここはどこでしょうかね兄貴
「──ッは! おい大山!」
「あ、兄貴……」
「どうなってんだこれは……」
目を開けると見たこともない草原だった。
辺りには俺たちと同じく黒スーツの男たちが転がっている。その中にはアイツもいた。
「兄弟!」
「おう兄弟……。俺たちどうなっちまったんだ……」
「分からねぇ……。ここはどこなんだ……」
他の組員たちも次々に目を覚ます。しかしこの場にいる誰も自分たちの置かれた状況を理解できていなかった。
「兄貴、俺たちは死んだんですよね……」
「十トンダンプに轢かれて生きているヤツがいたら、そいつは人間じゃねぇ。……取り敢えず上のモン集めろ。状況を整理する」
「へい」
ここにいるのは式場にいた全員ではない。ざっと五十人ぐらいだ。
「兄貴! 親父と盃交わした人間集めてきました。そして兄貴……」
「おいそっちは──!」
「
「お嬢……!」
カチコミに来たクソ野郎はお嬢まで巻き込みやがったようだ。
俺は震えるほどの怒りを抑え、怯えた表情を見せるお嬢に優しく話しかける。
「大丈夫ですよお嬢。俺たちが何とかしますから」
「ええ……」
「兄貴……」
「ああ……。よく集まった」
俺は顔を前に向ける。
ここにいるまとめ役の人間は五人。
まずこの俺、櫻庭組若頭、
俺の弟分である、
俺と五分の盃を交わした兄弟である櫻庭組若頭補佐、
いわゆるインテリヤクザである櫻庭組財務部長、
吉野とは真逆を行く武闘派ヤクザである櫻庭組警備部長、染井浩。
「吉野がいてくれて助かった。染井だけだとどうしようかと思ったがな」
「ソイツはひでぇなカシラ! マサはこういう時頼りにならねぇぜ!」
「黙れヒロ。どんな時でもお前よりは役に立てる」
こんな時でも吉野と染井は仲が良さそうでよかった。
「……やっぱりダンプに轢かれたからこんな事になったんですかね兄貴」
「信じたくないがそうとしか考えられねぇ。ダンプはど真ん中に突っ込んできやがったが、そこにいた組の中心人物が集合している。……巻き込まれた若いモンもかなりいるがな」
「死後の世界……なんてものがあるのでしょうか……」
これからどうしようか、話し合おうと思っていた時の事だった。
「──う、うぁぁ!」
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