僕達は異世界で刺激的で平和的に暮らしたい

ホオジロ夜月

第1話 日常から非日常へ

「ここは──であるからして〜」

「ふわぁ~あぁ、眠い……」

 毎日のように同じ時間に起きて学校に行き授業を受ける。そして寝ては同じことの繰り返し。正直俺はこんな日々に退屈を感じていた。

「何か刺激的な…非日常な出来事が今すぐ起こってくれねぇかな……」

 窓から見える水色に染まった青空を眺めながらそう独り言を呟く。

「それじゃあここの問題を……って廻! よそ見するな!」

「…はいはい」

「はいは一回! それじゃあ廻。ちょっとここの問題を解いてみろ」

「え~……別にいいですけど」

 ここで拒否ったら今黒板に書かれている問題すら解けないやつだと思われると俺の中のプライドが傷つくと感じたので俺は席を立ち、教卓に向かい既に分かり切っている問題の回答をふらすらと書き込む。

「これで良いですか? 先生」

「む……あ、あぁ正解だ。だが授業は真面目に受けろ。良いな?」

 木戸川は自分の態度にやや納得していないのか、顔をしかめてたが俺はそんなことも気にせず自分の席に戻った。

「は~い」

 そして自分が席に着いたと同時に授業の終わりを報せる鐘が鳴り響く。

「それでは今日はここまでとする。分からなかった人はしっかり誰かに聞いて理解しておくように」

 そう言い残して木戸川はすぐに教室を後にした。



「まったく木戸川もいちいち小言が多いんだよ。『はいは一回』だとか面倒くさいな」

 昼休みになり、俺はいつも通り購買でパンを買って屋上で一人食べていた。

 特に誰かと一緒に食べることもせず基本的に一人だ。こっちの方が何かと気楽でいい。誰かといるだけで気が散るからこそ一人が気楽というものだ。

「あ…そういや確か最近借りてた本。返却期限が今日までだったけ……返しに行かないとな」

 ふとそんなことが頭をよぎりこのあと特にやることない。だから残ったご飯を食べ終わったら図書室に行こう。


 Side アレン

「それじゃあこの間やった魔法基礎のテストの回答返すぞ~」

「うぅ……大丈夫かな。結構な時間、ミナに勉強を見てもらったとはいえ不安だ」

「どうしたのアレン?」

「ミナ! 正直テストの結果が不安なんだ……僕ってそんなに物覚え良くないし……」

「アレン! 自分を信じて。だってあんなに勉強したんだからきっと大丈夫よ」

 そう言ってミナは優しく励ますように僕にそう笑いかけてくれた。

「ほら、不安な時や辛いときこそ?」

「え、笑顔」

「そう、そう! その調子!」

 彼女には、ミナには小さい頃から不安な時にはこうしてまじないの言葉をかけてもらっていた。

 そんな彼女を見て僕もウジウジしていられないと感じて不安そうにする自分を頭の中から吹き飛ばした。


「次、アレン」

「はい!」

「アレン……よくやった。今回の出来としては及第点といった所だな。これからも頑張れよ」

「あ…は、はい!」

 いつもは厳しい評価を出してばかりのガトー先生も及第点とまで言ってくれたのだから、今回は期待していいはず……!

 そうして返却された解答用紙を見ると、丸はそこそこあって主に基礎的な魔法構築の問題はほぼ正解だった。

 こんな僕でもやればできるんだ……! やっぱり基礎は裏切らない!

 今目の前の結果を見てアレンはふつうつと、小さな自信のような気持が湧き出てきており前向きな気持ちになっていった。



 Sido かい

「すいませ~ん。本返しに来ました~って誰もいないのか……」

 さすがに図書委員もいないのは不審には思ったが、どうせトイレか私用かなんかでいないだけだろう。

 最初は図書委員に直接返そうとも思ったが、いないものはしょうがないという事で、カウンターに借りていた本を置いた。

「昼休みが終わるまでまだ時間あるな……ここで時間でも潰すか」

 とりあえず没頭するぐらいに時間を潰せそうな漫画が置かれている棚のところに移動することにした。



Sido アレン

「ふぅ……ごちそうさまでした。」

 4限のテスト返しも終わり、僕は早速結果をミナに報告してみると、彼女はまるで自分事のように喜んでくれてそんなに喜んでくれるとは思っても無くて、なんだか涙が零れてしまいそうだ。

 そして昼ご飯という事で僕は学食。ではなく朝早くに作っておいたサンドイッチと一緒にいつも読んでいた本を読み込んでいた。

「ん? お~アレンか。どうだ? 調子は」

「あ、ライン。調子はぼちぼちかな」

「そうか、そうか。あっはっはっ!」

 そうしてその屈強な体格をしているラインは僕の体をやや強めに叩く。このやり取りは昔からされてきたことなので僕の体はもう慣れたけど……

「にしてもまた読書か……体も鍛えたらどうだ? 魔法は戦闘だけが全てじゃない!」

 そう言って彼は自身の鍛えぬいた二の腕やお腹の筋肉を大いに見せつけてくる。僕はラインみたいな脳筋系魔法士にはなりたくないんだけどなぁ……



Sido かい

「漫画は……あった、あった」

 漫画が置かれていた棚は図書室に入って右手奥のところにまるで隠されるように置かれていた。

 そんなにここの漫画が読まれるのが嫌なのかは分からないけれど。

「とりあえず、適当に一冊……」

 簡単には見つからにところに設置されていた分、そのラインナップは豊富だ。

「これぐらいあれば充分か」

 早速どれを読もうかと一つ一つ吟味していく。その時だった。

「……は?」

 突然の出来事に流石に自分の目を疑った。

 突如として目の前の本棚、だけじゃなく周囲からぶしいほどの光を持って輝き始めたのだ。

 すぐにここにいるのはまずいと察した俺はすぐに図書室を出ようと走りだす。

「はぁ…はぁ…後もうちょ──」

 あともう一歩のところで視界が眩い光に包まれて──



Sido ?

「ーい。おーい。アレン! おーいってば!」

 どこかから武骨で野太い感じの男の声が聞こえてきた。アレンって一体誰の事だ?

「アレン! アレンってば!」

 今度は女性の声だ。それもさっきの男の声と違ってどこか心配そうに声を掛けられる。

「起きろ~! アレン!」

 今度は声だけじゃなく誰かに頬をペチペチと軽く叩かれている様な感触がある。

 だから俺はアレンじゃないっていてるだろう! 俺は前原廻! いたってただ退屈な日常を過ごしているただの高校二年生!


そこから真っ白で全く見えなかった景色が視界に入りだし、2つの人の顔らしき影が見えてくる。さっき呼んでいた二人だろうか…… 

 そしてはっきりと目の前の景色が色づきだし、目の前の光景が夢なんじゃないかと思った。

 目の前に広がる景色は教室…だと思える感じの室内だ。しかし……目の前の二人は全く面識のない他人で今の状況に全く理解が及ばなかった。けど一つだけ分かったことがあった。それは……

「ここは……? どこだ?」

 ここが俺が知っている日本とは別のどこかという事だ。

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