ジョブチェンジ
大学四回生の秋の時点で無い内定の
きょうもまたゲームをプレイしていた。今しているのは、ジョブの多さが売りのRPGだ。レベルを上げたりアイテムを使う事で、主人公だけではなくどのキャラもすべてのジョブになれる。自分の就活もこのゲームみたいに楽だったらよかったのに、と、健は思った。
ジョブへんこうするキャラはタケルでよろしいですか?▼
ゲームのメッセージボックスに文章が表示される。健が自分と同じ名前をつけた主人公が、先ほどやっと目当てのジョブになれるレベルに達したのだ。
「はい」を選んでボタンを押すと決定しましたのSEがピローンと鳴った。
へんこうするジョブをえらんでください▼
ウィンドウに、今なれるジョブの一覧がずらりと表示された。かなりの数だった。
「こっちのタケルは仕事選び放題だな」
健は主人公に羨望の眼差しを送った。ドット絵の主人公はいつもの様に無言で立っていた。
「俺と変わってくれよ、タケル」
健がふざけでそう呟いた瞬間、表示されていた台詞が全て消えて画面がフリーズした。
「え?」
新たに表示された台詞を見て健は狼狽する。
タケルは健にジョブをへんこうします。よろしいですか▼
→はい
いいえ
どうして自分の名前がゲームに!
気持ち悪くなってあわてて電源をOFFにしたが、画面は消えなかった。半狂乱になりながら何度も電源ボタンを押すも同じことだ。
コンセントを抜こうと立ち上がった時膝からコントローラーが滑り落ちた。
ピローン。
SEが無機質に響いた。その途端健の目の前が真っ暗になった。
『人生全部決められている上、自分の思い通りに動く事すら出来ない。こんなジョブずっと辞めたかったんだ』
耳元で誰かの呟く声がした。
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