楽しいアズマ
えー、アズマでの生活は楽しいです。
「ゲントク~、お酒~」
「おっさ~ん、アタシも~!!」
「おーう。ってか自分でやれっつーの」
現在、俺の別荘の居間にあるコタツの上には大量の徳利が横倒しになっており、おつまみの皿もいっぱいおいてある。
そして、ロッソとリチアが寝そべり、顔を真っ赤にしていた。
そう……俺の別荘で、三人で酒盛りしているのである。
「ふぁぁ~あついぃ~!! 脱いじゃう!!」
「ワタシも!! なっはっは!! おらおらゲントクぅ、ばあちゃんのおっぱいだぞ~!!」
ロッソ、リチアが脱ぎ出した。デカい胸をぶるんぶるんさせながら笑い合っている。
俺は熱燗を手に戻り、コタツに入る。
「おかわり追加だ。ほれロッソ」
「あ~い、おっさん、おっぱいどう?」
「はっはっは。デカいデカい。リチアもな」
「うっふっふ~ん……あぁぁ、アズマのお酒最高~!! ロッソ、あんたも最高~!!」
「あはっはっは!! うぅぃぃぃ……」
「あ~……なんかなあ、毎日飲んでるよなあ」
俺もめちゃくちゃ酔ってる……ロッソ、リチアが上半身裸で胸を見せているのだが、エロい気持ちに全くならないし、熱燗の雑酒を飲んでフワフワしている方が気持ちいい。
ちなみに、リチアは二階の客間にずっと泊っている。こいつのいいところは、俺に何か要求することもない、ただの客として酒飲みに来てるだけだ。
ザナドゥやレレドレじゃあ何だかんだで仕事していたが、アズマではマジで飲んでるだけ。
「なあロッソ、おまえ、冒険者の仕事は?」
「ない。ってか、討伐依頼ぜんぜんないのよぉ……うでぇ鈍っちゃうわ」
「にゃぁにぃ? 討伐依頼? だったらぁ、ワタシの仕事てつだいなさいよお」
「ふええ?」
リチアがむくっと起き上がり、徳利を直飲みして言う。
「っぷはあ!! ワタシねえ、アズマで一番危険な『竜王山脈』で、定期的に狩りすんのよ。そこね、アズマ固有種の『竜』が出んの。ドラゴンみたいなの。で……それ、放っておくとアズマに降りてきちゃうからあ、とーばつしないといけないのお」
「ドラゴン!! いいなあ」
ロッソは左右に揺れる。乳も揺れる……うう、酔ってるなあ。
「竜肉、めちゃくちゃうまいよ。アズマじゃあ高級でえ、ねんにいちどしか食えないのよお。で、そろそろ山にいこうと思ってたしい、いくぅ?」
「いくぅ~!! おっさんもいこ~!!」
「お~う。くくく、よろい持ってきてよかったぜえ」
というわけで、俺は山にのぼることにした……もう、げんかいだ。
◇◇◇◇◇◇
翌日。
「うぐうう……あぁぁ、水」
目が覚め、コタツから這い出る俺。
昨日、ロッソとリチアの二人とめちゃくちゃ飲んだ。
なんかもう、いろいろと臭い……酒の匂いはもちろん、シャツに煮汁とかタレとかめちゃくちゃ掛かってるの気付かんかった。
テーブルにあった水を一気飲みし、ロッソ、リチアを見ると。
「げっ……」
ロッソはパンツ一枚で仰向けでグースカ寝ており、リチアは全裸で畳にうつ伏せになっていた。
なんか脱いでいたような気もしたが……酔うとエロいとか考えなくなっちまうんだよな。
とりあえず、俺は着替えを持って風呂へ。
蛇口を捻ればお湯が出てくるが、待ってる時間がもったいないので、水魔法と火魔法を組み合わせて一気にお湯を出して浴槽を満たす。
シャワーを浴び、身体と髪を洗い、髭を剃ってから露天風呂へ。
「っぁぁぁ……っかぁぁ~!! 溶けて死にそう……ぅぅお」
ブルブルっと震えた……なんでこう、飲んだ翌日のシャワーとか風呂って気持ちいいのかね。
しばし、風呂を満喫していると、露天のドアが開いた。
「やっぱりいた。もう、起こしてくれてもいいじゃない」
「おま、隠せよ」
「別に見てもいいわよ。こんなばあちゃんの身体でよければだけど」
そして、背後にはロッソ。
「おっさん、おはよー」
「おう。ったく、お前も身体くらい隠せっての」
「ん~……あのさ、おっさんってアタシのこと『女』として見てないじゃん? ってかアタシも別に、裸見られんのそんなに気にしてないし……まあ、おっさんならいいや」
ロッソは隠すことなく露天に入ってきた。
浴槽はそんなに広くない。三人並んで入ると限界だ。二人は身体を洗い、隠すことなく入って来る……というか、ロッソ、そこまで俺のこと気を許し、信用してんのかい。
「「はぁぁぁぁぁぁ……」」
「おっさんくさいな」
「うるさいわね。ところでロッソ、昨日言ったこと覚えてる?」
「……なんだっけ。ああ、リュウだっけ?」
「『竜』ね。ドラゴンの亜種みたいな存在。こっちでは人に迷惑かける前に、ワタシが討伐しちゃうから依頼とか出ないのよ。で……討伐するなら一緒に行く? そろそろでっかい群れが暴れ出すころなのよ」
「行く!! なんか面白そう!! ね、おっさんも行くんだよね!!」
「竜かあ……ドラゴンとは違うんだよな?」
「うーん。顔はドラゴンだけど、身体はデカい蛇みたいな感じね」
東洋の龍っぽいのをイメージした。まあ、和風ならそんなもんか。
「よし。俺も行こう。アーマー持ってきたし、初陣が微妙だったしな。戦ってみるか」
「決定!! よし、ブランシュたちにも言わないとね」
「そういや、ブランシュたちは何してんだ? お前はずっと俺と飲んでたけど」
ロッソは暑いのか、湯舟から上がって浴槽の縁へ座る……あの、見えてるんだけどマジで気にしていないのね。
「ブランシュ、なんかアズマの化粧品とか、美容品とか、ヴェルデと見て回ってる。アオはヒコロクの遠吠えで呼んだ子犬に、簡単な調教してるとか言ってたっけ」
「そういや、サンドローネが孤児院の買収とか言ってたな。あいつ、休暇のはずなのに仕事してるな……いるよなあ、休みが休みじゃないヤツ」
「あっはっは。まるでクレープスね。ワタシには理解できないわ。じゃあ、出発は三日後くらいでいい? 準備して、この家に集合ね」
「はーい!! よし、じゃあアタシ帰ってブランシュたちに話してこよーっと」
ロッソは上がり、胸をぶるんぶるん揺らしながら出て行った。
相変わらずデカいな……というか、ほんと羞恥心持ってほしいわ。
そして、リチアも上がる……こいつもでっかい。
「ワタシも、狩りの準備あるし帰る。じゃあ、片付けはよろしくね~」
リチアも上がって行った……こうして、残ったのは俺一人。
「…………もうちょいだけ風呂にいるか」
まあ、察してくれ……俺も男なんで、あんな身体魅せられたらいろいろヤバいわ。
◇◇◇◇◇◇
この日は、飲み会の片付け、部屋や風呂の掃除などで半日経過した。
大福にエサをやって撫でていると、ドアがノックされた……この別荘にもチャイム付けるか。
玄関に出ると、犬を連れたサンドローネ、リヒター、イェラン、スノウさん、ユキちゃんがいた。
「おう……って、なんだその犬」
「私に懐いたオータムパディードッグ。名前はエディフィス。エディーでいいわ」
『オフ』
オータムパディードッグって秋田犬をデカくしたような犬だと思ったが……目の前にいる子犬、どう見てもチャウチャウにしか見えない。こいつも成長するとデカいチャウチャウになるのだろうか。
とりあえず、全員を家に上げる。エディーはしっかり足の裏を拭いて上げた。
「にゃあ。だいふくー」
『ニャア』
『ミィィ』
『オフゥ』
大福の元へ向かうユキちゃん、白玉、なぜかエディー。
大福は久しぶりの白玉を甘やかし、ユキちゃんも畳を転がって大福たちと戯れ、エディーもそこに混ざってコロコロ転がって遊び始めた……可愛いな。
「あなたに報告しておくことがあってね。孤児院を買収して、オータムパディードッグの専用牧場にして、孤児院の子供たちに子犬たちの世話をしてもらうことになったから」
「おお、そりゃよかった」
「ふっふん。お姉様が孤児院関係で奮闘している間、アタシはアレキサンドライト商会の新しい支店を決めてきたんだ。ゲントク、暇なとき案内してあげる!!」
「イェラン、サンドローネだけど……これ、休暇じゃないのか? 思いっきり仕事してるじゃねぇか」
俺は緑茶を啜る……ああ、うまい。
「そこで、ゲントクにお願いがあるのよ」
「……え、なに」
「そう警戒しないで。魔道具じゃなくていいんだけど……犬用の、何か……遊具的なものがあれば」
「犬の遊具?」
「ええ。アオさん曰く、子供と一緒に遊べるような遊具があればいい、って」
なーるほどな。
この世界、犬を飼うような文化がない。普通に野良犬とかもいるし、犬小屋とかもない。
なので、犬用の遊具……なんて言っても、いいアイデアが出ないのだろう。
「そうだなあ。フライングディスクとか、ボールとか? それこそ骨とか」
「ふむ……よくわからないけど、できる?」
「まあ、それくらいなら。でも、素材が何もないし、すぐには無理だ」
「滞在中に少しだけ作ってほしいの。お願いね」
「わかった。と……三日後には少し出かけるから、それまでには作るよ」
「……どこか行くの?」
「ああ。リチアと、ロッソたちと、竜退治にな」
「……?」
さて、一度アーマーを起動してみるとしますかね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます