一方そのころ、『鮮血の赤椿』は
「アタシの方がデカいし!!」
「いいえ、私の方よ!!」
ロッソ、ヴェルデの二人は、額をゴリゴリくっつけて睨み合っていた。
アオ、ブランシュはくだらなそうに二人を見てはため息を吐く。
そんな時、街道から何台もの馬車が到着。先頭の馬車からサンドローネ、リヒター、エアリーズが降りてきて、目の前の光景に仰天した。
「な……これは」
「あ、ちょうどよかった。おねーさん!! ちょっと見てこれ!!」
「ふふん、厳正なジャッジが期待できそうね!!」
ロッソ、ヴェルデがサンドローネの元へ。
そして、全く同時に叫んだ。
「「どっちが大物!?」」
二人が指差したのは……二体の『キングロックタイタン』だった。
◇◇◇◇◇◇
ロッソたちを下がらせ、アオ、ブランシュが説明した。
「私たち、キングロックタイタンを討伐しに来た……そうしたら、二体いたの」
「に、二体……討伐レートSSの魔獣が、二体」
驚き声を詰まらせるサンドローネ。
討伐レートSS……その等級は、数年に一度出るか出ないかの大型魔獣。王国騎士団が出兵する規模の大魔獣であり、現れれば国中大騒ぎになるレベルだ。
それが、二体。
「そこで、ロッソがヴェルデに賭けを申込みまして……わたくし、アオが補佐について、二対二で一体ずつ狩りをして、速く討伐した方が勝ち。買ったら『鮮血の赤椿』のリーダーの座を譲る、と」
「…………」
サンドローネは声も出なかった。
そもそも、競い合って倒すような敵ではない。
だが実際、目の前には全長三十メートル、横幅も十メートル以上ある岩石の巨人が、見るも無残な姿で砕け、倒れている。
「……それで、倒したのはほぼ同時。というか二人が『自分のが早かった』って譲らなくて。それで、どっちがデカい獲物かで決着つけることになって、今に至る」
「そ、そう……」
ばかばかしい。と、サンドローネは言えなかった。
後から来た馬車から、アメジスト清掃が派遣した獣人たちがゾロゾロ降りてくる。魔獣の片付け、スーパー銭湯のための開墾などをさせるつもりだったが、二体の魔獣に驚き、唖然としていた。
すると、ロッソが言う。
「で、おねーさん!! どっちがデカい!?」
「私の方よね!!」
「アタシに決まってんじゃん!!」
「「ぐぬぬぬぬぬっ!!」」
睨み合う二人。
このままでは埒が明かないので、サンドローネは咳払いした。
「こほん。いい二人とも、あなたたちの倒したキングロックタイタンは、頭部を見事に粉砕しているわ。つまり、どちらが大きいか正確には判断できない……よって、この勝負は無効よ」
「「ええ~?」」
「『
「「…………」」
ロッソ、ヴェルデは互いに見つめ合い、ため息を吐いた。
「ま、いいか」
「ええ。ロッソ、リーダーの座はあなたに預けておくわ」
「はいはい。あーお腹減った。おねーさん、アタシら帰っていい? 片付け、任せていいんだよね?」
「ええ。あ、でも……素材だけど」
「別にいいよ。運動不足解消になったし。素材とか、ここで使うんでしょ?」
「ええ……じゃあ、正規の討伐報酬だけ支払うわ。冒険者ギルドでもらってね」
「うん。じゃ、『
「「「おおー!!」」」
四人は「お腹へった~」や「おじさんのところ行こう」など喋りながら、ヒコロクが牽引する馬車に乗って帰って行った。
口を挟まずにいたエアリーズは、サンドローネに言う。
「いやはや……討伐レートSSが二体いたことも驚きだが、たった四人で排除するとは」
「……頭部粉砕だけで、他の部位は全て使えそうですね。獣人たちに解体を任せましょう」
「うむ。それと、この辺りに獣人たちの拠点を作るか。スーパー銭湯のために土地の開墾などもしないといけないな。さて……そのあたりは、私の魔法でなんとかしよう。くくく、久しぶりに温泉を掘ろうじゃないか」
「建物の図面から、必要な素材は全てアレキサンドライト商会で発注しました。床暖房の素材もエーデルシュタイン王国から届く予定です」
「うむ。さて、予定の工期は二か月!! 二か月で温泉の採掘、建物、街道の整備をする!! アメジスト清掃の獣人たち、よろしく頼むぞ!!」
「「「「「オーッス!!」」」」」
こうして、玄徳考案の『スノウデーン・スーパー銭湯計画』が始まるのだった。
◇◇◇◇◇◇
ロッソたちが別荘に戻ると、シュバンとマイルズが出迎えた。
「「お帰りなさいませ」」
「ただいま、二人とも。食事の支度はできてる?」
「はい。いつでも大丈夫です」
マイルズが一礼。するとロッソ。
「ご飯もいいけど、お風呂行きたいな」
「温泉の準備もできています」
「やたっ」
シュバンがすでに用意していた。
最初に温泉、そして食事になり、四人は温泉へ。
ブランシュの別荘は玄徳のより小さいが、温泉付きで露天風呂もある。
四人は脱衣所で服を脱ぎ、浴場へ。
「あ~……疲れたぁ。ね、ブランシュ髪洗ってよ」
「あなたねぇ……まあ、適当に洗われる髪が可哀想ですし、いいですわ」
ブランシュは、ロッソを座らせて髪を洗う。
ごしごしと髪石鹸を泡立て、綺麗な赤髪を揉むように洗い、頭皮をマッサージする。
「うぁぁきもぢいぃ~……」
「変な声出さないの」
「むむむ……羨ましいわね」
「……ヴェルデ、座って」
と、アオが椅子をポンポン叩き、ヴェルデはぱあっと笑顔になる。
アオは石鹸を泡立て、ヴェルデの髪を洗い始めた。
「……ロッソよりふわふわしてる」
「ふふん。柔らかいでしょ?」
ロッソは水を吸って重くなる感じの髪だが、ヴェルデのはふわっとしていた。
そしてアオがヴェルデの髪を洗っていると、気付く。
「んあぁぁ気持ちいい~……」
「…………」
胸。
頭皮をマッサージしていると、ヴェルデの胸が揺れる。
ちらりと隣を見ると、ロッソの胸も揺れていた……そして、ブランシュも。
アオは自分の胸を見る。
「…………」
決して小さくはない。だが、三人と比べるとつつましい。
「いだっ!? ちょ、アオ、痛い!!」
「あ、ごめん」
つい、力強くヴェルデの頭皮をガリガリ擦ってしまった。
アオは、ため息を吐いて呟く。
「……別にいい。邪魔になるし」
「アオ? 何かいいました?」
「べつに」
「ふふん。次は、私が洗ってあげる。アオの髪、綺麗でサラサラで、触ってみたいと思ってたの」
「……じゃあ、お願い」
とりあえず、今日の仕事は終わり。
温泉でゆっくりして、美味しいご飯を食べ、明日には玄徳のところで遊ぼうと四人は喋り、一日が終わるのだった。
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