第19話

 現れたエネモンの情報を確認した俺はその情報をミニデビにも見せながら伝えていく。


 「蜜飛ばしチューリップはミニデビと同じ成長期のエネモンだ。だから、今のミニデビなら充分に戦える相手だ。」


 「デビ。」


 これが成熟期のエネモンならまだ気付かれていない今の内に逃げ出そうと思っていただろう。


 「そして蜜飛ばしチューリップの必殺技は遠距離攻撃の花蜜弾。どれくらいの距離まで届くのか分からないし、花蜜弾の速さも分からないから注意してくれ。」


 「デビ!」


 蜜飛ばしチューリップの必殺技の【花蜜弾】はどこまで届くのか分からない。その危険性は分からないからこそ高く、もしかしたらミニデビに指示を出している俺を狙って来る可能性だってあるのだから。


 そうして俺はミニデビに作戦を伝えていく。作戦自体は簡単だ。ミニデビは蜜飛ばしチューリップが【花蜜弾】を使用して来るまで回避を優先し、放たれた【花蜜弾】を回避することが出来たらすぐに【ミニダーク】を放つという戦法で蜜飛ばしチューリップを倒す予定だ。


 もしかしたら途中で戦い方を変えないといけなくなる場合もあるだろうが、とりあえず今回の俺は今現在隠れている茂みから出ずにミニデビだけで蜜飛ばしチューリップと戦ってもらう。


 「頑張れよ、ミニデビ。」


 「デビ!」


 頷いたミニデビは茂みから飛び立って蜜飛ばしチューリップへと向かっていく。


 その姿を俺は茂みから見ていると、接近して来るミニデビに蜜飛ばしチューリップは気が付いたようだ。


 「チュー、リップ!」


 「デビ。」


 接近して来たミニデビに対して早速、蜜飛ばしチューリップは攻撃を仕掛けて来た。だが、その攻撃は必殺技の【花蜜弾】ではないようで、蔓を鞭のようにミニデビに振るってきたのだ。


 だがそんな蜜飛ばしチューリップの蔓の鞭をミニデビは回避する。躱された蔓の鞭が地面を叩く音が茂みに隠れている俺のところまで聞こえる。


 あれに当たったら、かなり痛い思いをするのだろうと思う音が聞こえる中でミニデビは更に蜜飛ばしチューリップとの距離を詰めていく。


 エネルギーデヴァイスにも表示されない技のクールタイムのお陰で、次に蜜飛ばしチューリップが行なった攻撃は必殺技の【花蜜弾】だった。


 放たれた【花蜜弾】は本物の銃から放たれる銃弾とは比べ物にならないほどに遅いが、それでも俺の目からしたらかなりの速さで視認するのもやっとなほどだ。


 でも余程のことがない限り、俺でも距離が離れていれば蜜飛ばしチューリップの【花蜜弾】を回避することは充分に出来そうな速さである。


 「あれなら距離を取っていれば俺が指示を出してもミニデビは俺を気にせずに戦える。次からは隠れずに指示することが出来そうだ。」


 俺でもギリギリで視認することが出来る攻撃を接近していたミニデビは回避を意識していたこともあって躱すことに成功する。


 そして、事前にどうするのかの指示を出しておいたお陰で、ミニデビはスムーズに自身の必殺技の【ミニダーク】を蜜飛ばしチューリップへと放った。


 根っこを這わせて移動する蜜飛ばしチューリップでは移動速度が遅すぎた。その為、蜜飛ばしチューリップはミニデビの必殺技の【ミニダーク】の直撃を受ける。


 だがそれでも蜜飛ばしチューリップは倒れない。これは俺が近くで指示を出していれば追撃に【体当たり】をするように指示を出せたはずだ。


 だが、今回の作戦では蜜飛ばしチューリップの必殺技【花蜜弾】を回避したあとに【ミニダーク】を放つとなっているので、蜜飛ばしチューリップを倒すのには少し時間が掛かるだろう。


 そうしてミニデビ対蜜飛ばしチューリップの戦いはミニデビの勝利で終わる。蜜飛ばしチューリップの【花蜜弾】を躱して【ミニダーク】を命中させる。そんな戦い方を繰り返すことで戦いは終わったのだ。

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