第14話

 「うまっ!?」


 「デビ!!」


 齧った木の実は甘酸っぱくて美味しい。味は苺の味に似ているだろうか。口の中に広がる甘味を酸味がスッキリさせてくれる。


 「美味しいね、これ。」


 「ドラ!」


 赤井くんとミニドラコの口にも合う様だ。俺もミニデビもまだ一口しか食べていない残っている木の実をそこからは無言で食べていく。


 「あー、美味かった。これ、美味しいですね。」


 「そうだろ?この草原に時々生えている木に実ってるんだ。私もここを探索する時は探しているよ。」


 俺も赤井くんもミニデビもミニドラコも木の実を譲ってくれた福田さんたちへとお礼を言うと、再び草原の探索に戻った。


 ちなみに先ほど食べた木の実は紫紺苺と言う名前で、そこそこの値段で取引されるマテリアルの一種だそうだ。


 俺、赤井くん、福田さん一行は草原を奥に奥にと進んで行き、道中で現れるエネモンを俺と赤井くんが倒して進む。


 そうして進んで行くとある地点で先頭を歩いて進んでいた福田さんが動きを止めた。


 「二人共、そこで止まってね。」


 「どうしたんですか?」


 「エネモンが出るの?」


 突然動きを止めた福田さんに俺も赤井くんも辺りを警戒し始める。


 「いや、ここから先は成熟期のエネモンが出て来るんだ。目印はあれだよ。あの岩。」


 福田さんが指を刺すを方向を見れば、そこには大きな岩が鎮座していた。あれほど目立つ目印があるのなら俺と赤井くんだけで草原を探索しても問題はなさそうだ。


 あの大岩の先には2人だけでは絶対に行かないことを福田さんに言われるが、確かに今のミニデビとミニドラコでは成熟期のエネモンと戦えるのかは分からないから行くのは止めた方が良いだろう。ここは福田さんの言う通りにするべきだな。


 「「分かりました。」」


 「うん、分かってくれて良かったよ。じゃあ行こうか。」


 「「えっ!」」


 あれほど行かない様に言っていたのにも関わらず、進み始めた福田さんに俺と赤井くんは動きを止めてしまう。


 「あはは、今回は私がいるんだし問題ないよ。実際に成熟期のエネモンとの戦いは見ていた方がいいからね。ほら、着いて来て。」


 そう言って手招きする福田さんのあとを俺と赤井くんは着いていく。


 それからしばらくの間は現れるエネモンが成長期のエネモンだと言う事もあり、エネモンを倒すのは俺と赤井くんが交互に行なっていく。


 「あっ、居た!あれが成熟期のエネモンだよ。」


 福田さんが指を刺す方向には二足歩行のウサギ型エネモンが草を手で引き千切って口に運んでいた。


 「2人共、私が戦っている間にエネモン図鑑であのエネモンを確認しておいてね。」


 「「分かりました。」」


 俺と赤井くんがエネルギーデヴァイスの操作を確認した福田さんは頷くと、福田さんの契約エネモンたちへと声をかける。


 「行くよ、木の葉ニンジャ、カツオ武士。」


 「はっ!」


 「おう!ぶった斬るぜ!」


 二体の契約エネモンを連れて福田さんが野生の成熟期エネモンの元へと移動をする間に、俺と赤井くんはエネルギーデヴァイスを操作してエネモン図鑑で野生エネモンの情報を確認する。


グラップラーラビット

成熟期 本質ビースト 属性土

人と同じ二足歩行するウサギ型のエネモン

必殺技

ラビットキックバースト

強靭な蹴りを命中させ爆発の様な衝撃波を起こす蹴り技


 これがあの成熟期エネモンのエネモン図鑑の内容だ。グラップラーラビット、ビーストのエネモン。必殺技のラビットキックバーストという技を使うことから蹴りを攻撃の主体にしているエネモンなのかも知れない。


 エネモン図鑑を確認している間に福田さんと福田さんの契約エネモン二体にグラップラーラビットが気付いた様だ。


 グラップラーラビットは手に持っていた草を投げ捨てると、福田さんを庇うように前に出ている二体のエネモンに向かって一足飛びに距離を詰めてきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る