第12話

 エネルギーワールドを探索を開始してから五分もしない内に先頭を歩く福田さんのエネモン二体が立ち止まった。


 「どうやらこの先にいるみたいだよ。ほら、こっち来て。」


 「「はい。」」


 手招きする福田さんの方へと俺と赤井くんは向かい隣でしゃがむと、福田さんが指を刺す方へと俺たちは視線を向けた。


 そこには小さなウサギ型のエネモンが呑気に飛び跳ね草原の草を食べている姿があった。


 「あれはミニラビだね。成長期のエネモンだから戦ってみるかい?」


 「いいんですか?里見くん。僕から戦っても良いかな。」


 「良いよ、赤井くん。」


 俺と福田さんと二人のエネモンたちが見守る中で、赤井くんは赤井くんのエネモンであるミニドラコを連れてミニラビの方へと向かっていく。


 接近して来る赤井くんにミニラビが気が付いた瞬間に赤井くんはミニドラコへと指示を出した。


 「ミニドラコ、ベビーファイア!!」


 「ドラ!」


 ミニドラコは赤井くんの【ベビーファイア】の指示を聞いて、口内に火が集まり火の球体がミニラビに向かって吐き出した。


 そしてそれは気が付くタイミングが遅かったミニラビに直撃する。


 開幕は赤井くんのミニドラコの先制攻撃が決まる。これで戦闘は赤井くんたちが有利になっただろう。


 俺はそんな赤井くんとミニドラコがミニラビとの戦闘を眺めながら、エネルギーデヴァイスを操作してミニラビの情報を確認する。


ミニラビ

成長期 本質ビースト 属性土

小さなウサギ型のエネモン 

必殺技

ジャンピングヘッド

跳躍の勢いを使った頭突き


 必殺技のジャンピングヘッドは近接攻撃の物理攻撃技の様だ。これなら飛行する事が可能なミニドラコへは攻撃が当たらないだろうが、ミニラビの跳躍が三メートルを超える様なら飛行可能な赤井くんのミニドラコや俺のミニデビでも攻撃が命中するかも知れない。


 エネルギーデヴァイスのエネモン図鑑でミニラビの情報を確認した俺は、その事を赤井くんに伝える。


 「ありがとう。ミニドラコ、なるべく高度を取るんだ!」


 「ドラ!」


 俺が伝えた情報を聞いた赤井くんはすぐにミニドラコに飛べる限界値に近い場所まで飛ぶ様に指示を出した。


 ミニドラコの飛行限界の高さは二メートルから三メートルの間だろう。正確な高さは分からないが、この場の俺たちの身長よりも高いのは確かだ。


 そんな高さの高度まで上昇したミニドラコはミニラビの周りを円を描く様に旋回していると、『ベビーファイア』を耐えたミニラビが反撃を開始した。


 「ラビィ!!」


 空を飛んでいるミニドラコに向かって跳躍したのだ。


 凄い勢いでミニラビは上空のミニドラコへと向かっていくが、直線で向かってくるミニラビを軽々と躱してしまう。


 「反撃だ!ミニドラコ、ベビーファイア!!!」


 「ドラ!!」


 躱されて空中から地上へと落下してしまいミニドラコの必殺技【ベビーファイア】がそんな状態のミニラビへと放たれる。


 空中で避けられないミニラビへと放たれたミニドラコの【ベビーファイア】は直撃した。


 二発目の【ベビーファイア】の直撃。これには流石に野生の成長期エネモンでも耐えられず、更に墜落した際に着地も失敗して身体全体をミニラビは強打する。


 これがトドメになり、ミニラビを構成していたエネルギーが粒子へと変わってしまい、その場には白いエネルギーキューブとビーストのエッセンスだけがあった。


 あのミニラビは今頃このエネルギーワールドのどこかの場所で、自身のエネルギー量が減った状態だが身体を構築しているのだろう。


 まあ流石に自身を倒したエネモンの近くでは身体の構築をしないはずだから。


 これで赤井くんとミニドラコはエネルギーワールドでの初めての実戦が終わった。思ったよりも呆気なく勝てた様だが、俺とミニデビもあれくらい簡単に勝てないとこれから先のエネルギーワールドの探索は難しいはずだ。

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