第10話

 銀島の行なった一件は俺が通う小学校の中でも生徒たちの間で広まっていた。やはり、エネモンの殺害行為を行なおうとしたのが一番大きな理由の一つでもあるが、それ以外でもどうやら銀島はエネモンバトルの敗者に金銭の要求を大人たちが見ていない場所で行なっているそうなのだ。


 はっきり言えば銀島の様な犯罪者としか言えない事を行なっても、本当に契約者が契約しているエネモンの殺害や金銭の要求も実際の現場を取り押さえなければどうにもならないのが現状の様であった。


 そんな銀島に対して憤っている小学生は多いが銀島の家系は上流階級のせいで下手に逆らうと何をされるのか分からなくて恐怖している生徒も多くいる。


 「なあ、本当に銀島とエネモンバトルをするのか?相手は六年生だぞ。俺たちよりもエネモンとの契約している時間は長いし、中里くんと井尻くんが言うには成熟期のエネモンだ。勝てる訳ない。」


 「だけど里見くん。そんなエネモンを殺そうとするなんて放置なんて出来ないよ!!」


 エネモンの事が本当に好きなのだと赤井くんの言葉だけでも伝わるが、それでも成長期のエネモンで、それもエネモン一体で成熟期のエネモン二体には勝てる訳がない。


 そんな話をしているのは小学校の中だった。だからこそ、この話を他の生徒にも聞かれる事になる。


 「ねぇ、君たち。本当にあの銀島と戦う気なのかい?」


 そう俺たちに話し掛けて来たのは被っている帽子の色からして上級生だった。


 「そうですけど、貴女も里美くんと一緒に止めるんですか?」


 「君たち、帽子からして四年生だろう?なら、勝てる訳ないよ。それでも戦うのかい?」


 「エネモンを殺すなんて許せない!!だから!!」


 その正義感なのかは分からないが、赤井くんの熱意は本物なのだろう。これだけ俺や上級生に言われても止まらないのだから。


 「それならさ。良いところがあるから教えた上げる。」


 「良いところ?」


 「そう!エネモンを強くするならね!」


 そう言って着いて来てと上級生の女子が手招きする。赤井くんはエネモンを強くして銀島と戦いたいからと、知らない上級生女子に着いて行こうとする。


 流石に友達が見知らぬ相手に着いて行き何があったら不味いからと俺も赤井くんの後に続いていく事にした。


 「まだ目的には着かないから自己紹介ね。私は福田操ふくだみさお。六年生よ。」


 「僕は赤井俊樹あかいとしき四年生です。」


 「俺は里見幸太さとみこうた同じく四年生。」


 「赤井くんに里見くんだね。よろしくね。」


 お互いに自己紹介をしながら小学校の裏にある裏山へと俺たちは向かい山を登っていく。


 そこまで急じゃないなだらかな山だが、それでも管理がされていないせいで結構歩くのもキツい。


 だが、それでもこの裏山は小学生の遊び場として勝手に小学生たちが使っている事もあって獣道の様になっている為、これでもマシな方なのだと思う。


 「ここだね。歩きずらいだろうけど着いて来て。」


 「うん。」


 「ここを?」


 正直に着いていく赤井くんとは違って、俺は福田さんがガサガサと分け入っていく茂みに嫌気がさすが、それでも赤井くんを放って置く訳にはいかない為にも俺もあとを着いていく。


 そうして五分ほど時間を掛けて俺は福田さんとその後を追う赤井くんの更にあとを移動して福田さんが案内してくれた目的地にたどり着いた。


 そこは少しだけ開けた森の中にある草っ原で、その草っ原の中央にはエネルギーワールドへと続いている入り口のエネルギー粒子が漏れ出ている穴が空中に浮かんでいた。


 「ここが私が案内したかった場所だよ。」


 「これってエネルギーワールドだよね。こんな所にあるなんて知らなかった。」


 「私と貴方たち以外は知らないよ。私は誰にも教えてないからね。銀島と戦っていう勇気ある後輩に教えたあげたんだ。」


 それって秘匿しているエネルギーワールドって事じゃないか。届出を出さないと不味いのではと思わなくもなかったが、それ以上に俺もエネルギーワールドに興味があった。

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