第8話

 エネモンとの契約を行なってから一週間が過ぎた頃、放課後の時間帯に俺は赤井くんやクラスメイトの数人と一緒に小学校の中にある闘技場へと来ていた。


 「同級生だけじゃなくて上級生も結構いるね。」


 「そうだな。」


 五つある試合舞台は全て使われており、観客席もそれなりの人数の小学生たちが試合を見ていた。


 その中にはエネモンと契約していないだろう低学年の生徒もいる様に見えるがエネモンバトルを見たいから来ているのだろう。


 「じゃあ早速登録しに行こう。」


 「そうだね。」


 六人で試合舞台を借りる為の登録を行なうと、俺たちが試合舞台を使えるのは次の次の試合が終わってからの様だ。


 それまで俺たちは同級生や上級生たちが行なっているエネモンバトルを観戦しながら時間が過ぎていく。


 「俺たちの番だな。ミニデビ、頑張ろうな。」


 「デビ!」


 次に俺とクラスメイトの試合の番が来た。初めてのエネモンバトルから今日までエネモンバトルを行なっていないが、それでも家の庭でミニデビと特訓を行なって来た。


 相手エネモンからの攻撃を避ける為に俺が投げるボールを回避する練習や【体当たり】の技を磨いて【体当たり】を発動している時でもある程度は真っ直ぐ以外に動ける様にするなどだ。


 流石に必殺技の【ミニダーク】の練習をする事は家の庭では行なえなかったが、それでも初めてのエネモンバトルの時よりはミニデビは戦えるだろう。


 そして今日の対戦相手はクラスメイトの男子。友達ではないがそれなりに話すことのある相手だ。契約しているエネモンはベイビーウルフ。ビースト系のエネモンである。


ベイビーウルフ

成長期 本質ビースト 属性風

幼い子供の狼型のエネモン

必殺技

そよ風バイト

牙にそよ風を纏わせて噛み付く


 これがエネモン図鑑で表示された内容である。これを見る限り、ベイビーウルフは近接攻撃が得意なエネモンに見える。


 接近される前にどれだけミニデビの遠距離攻撃でベイビーウルフにダメージを与えられるかが鍵なのかも知れない。


 俺とクラスメイト。その両方が試合舞台の上に立ち、両者のエネモンが試合舞台の上で相対すると自動的に反対を行なってくれる機械の審判からの試合開始の合図を待つ。


 「試合開始です。」


 機械的な音声が機械の審判員から聞こえたタイミングで俺とクラスメイトはお互いの契約しているエネモンへと指示を出した。


 「ミニデビ、ミニダーク!!」


 「デビ!」


 「ベイビーウルフ、攻撃を避けて接近するんだ!!」


 「ガウ!」


 必殺技の【ミニダーク】をミニデビはベイビーウルフへと放つが、ベイビーウルフは小さな身体で素早く走りミニデビの【ミニダーク】を躱してみせた。


 外れたか。でもまだ距離はある。出来れば一発くらいは当たって欲しいけど、まだ【ミニダーク】をミニデビは使い慣れてないからな。


 「ミニデビ!もう一度だ!!」


 「ベイビーウルフ!来るぞ!気を付けるんだ!!」


 この指示で起こった行動は先ほどと同じくミニデビが放った【ミニダーク】をベイビーウルフが回避すると言う同じ内容だった。


 あと一回【ミニダーク】を使えるかって所だな。でも、ギリギリだと躱したと同時に攻撃を仕掛けられる可能性があるか。それならこうしよう。


 「ミニデビ、接近して体当たりだ!」


 「デビ!」


 「ベイビーウルフの間合いに来ればこっちの物だ!ベイビーウルフ!返り討ちにしてやれ!!そよ風バイトだ!!!」


 「ガウ!」


 迫って来るベイビーウルフへとミニデビが技の【体当たり】を発動しながら接近していく。


 カウンターの要領でベイビーウルフの必殺技である【そよ風バイト】をクラスメイトは指示してきた。


 お互いの距離が縮まるなかで俺はタイミングを見計らう…………ここだ!!


 「ミニデビ!ベイビーウルフを通り過ぎて反転して【ミニダーク】だ!!」


 「デビ!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る