第1話 プロローグ

 私たちのすむ外のせかいには、ものすごい力をもったオニとあやしいまほうをあやつるヨウカイがすんでいるんだ。

 彼らは力もまほうもない人間を下に見ていつもわらっています。

 でもだいじょうぶ!

 私たちにはオニもあくまももっていないつよい力がある!

 それはちえさ!

 オニの力でもたおれないしのぼれないたかーいカベを作って、みんなをオニからまもるよ!

 まほうよりもすごいものを生み出してヨウカイからみんなをまもるよ!

 こわがらないで!

 きみには力がある!

 さあ、いっしょにわるいやつらをたいじしに行こう!


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「ねえ、お母さん。」

「なーに。」

「今日ね、こんな絵本を読んだんだ。」

 幼い男の子は、母親と一緒にふかふかで大きいベッドに入り、今にも閉じそうな瞼を必死に開けて絵本の内容を話した。

 うとうとと段々小声になる子供の話を、母親は穏やかな表情のまま聞いた。

「ねえ、お母さん。」

「なーに。」

「どうして……お外の世界の、人たちを…………あんな風に……描くのかな……?」

「それはね、…………」

 母親が質問に答える前に、子供はスー、スー、と寝息をたて始めた。

 フフッ、と小さく笑うと、起きないように子供の頭を優しく何回も撫でてこう囁いた。


 

「それはね、私たちが彼らのことを知ろうとしないからなのよ、ユウト。」

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る