プライベートな神様
@oda09
第1話 突然の邂逅
「ちっくしょう!ふざけんなよ!」
まるでゾンビの様なふらつきで街を彷徨い、すれ違う人々から好奇な目で見られているのも知らずに愚痴を吐き出す。
「付き合ってた幼馴染に3年間も浮気されてるなんて……」
俺、こと佐竹夏樹は付き合っていた幼馴染の彼女が実は先輩に浮気されていた。
将来を誓い合った仲でもあったのだが、俺が忘れ物を取りに学校に戻った際に俺は彼女が教室でイケメンと言われている先輩に腰を振っている彼女の姿を見てしまったのである。
ふとさっきまでの光景を思い出し、胃の中のものが出てきそうになる。
「本当に、お前の幼馴染は馬鹿だよな〜自分の彼女が寝取られてるのに全然気づかないとかw」
「ちょっと先輩〜あんな奴の話しないで。あんなやつ幼馴染じゃないから」
俺の愚痴を言いながら猿の様に腰を振る二人。
「オッウェ!」
思いっきり人目を憚らず、路上で胃の中のものをぶちまけてしまう。
(俺はあいつのことがどうしようもなく大好きだったんだ。せめて、せめて別れの言葉を一つだけでも言ってくれたら……)
目の前に落ちている吐瀉物に目を向けながらありもしない幻想を吐き出す。
「もう…いやだぁ。どっかに消えてしまいたい」
本来なら誰にでも聞かれることのなく消えていくはずの声を発したその時。
シャン!
「!!?」
決してこんなところでは聞かない鈴の様な音が聞こえた瞬間、顔を伏せていた薄汚い路上が一変し、まるで大海原の様な青い花畑に変わった。
「な、なんだここは」
まるで夢を彷徨っているようなそんな感覚に包まれ、ここは現実世界ではないと暗示しているかの様に感じる。さっきまで俺に好奇の目を向けていた人もおらずここにあるのは、青い花と俺だけ。
(な、何が起きた!俺はさっきまで街中にいたはず!………そうだ携帯は!)
慌ててポケットに入っていた携帯を取り出し、連絡が取れるかどうか確認してみる。
「携帯は!……繋がらない!」
普段ならある通信状態を表すマークがなく変わりに圏外という文字が映し出される
(どう言うことだ、携帯がつながらないなんて。本当にここはどこだ)
辺りを見渡しても、人どころかこのような場所で鬱陶しいほど寄ってくる虫たちも見ることができない。
「と、とりあえず助けを呼ぼう!」
ここにいたら危険だと思い、助けを呼びに足を動かす。
「誰か〜助けてください!」
進むに連れて最初の場所には無かった白い霧ができて少し前が見えずらい。
(寒い……速くあったまたれる場所に行かなければ)
腕をさすりながら道を進み助けを求めていると
「ん?あ、あの奥にあるのは……社か?」
白い霧を掻き分けながら進むと青い花の海からポツンと古びた神社が目の前に現れた。急いで近づいてみると。縄がボロボロになり、障子も破けておりもう何年も人が来ていない様だ。
(もう使われてなさそうな廃れ具合だな。神主はもういないのか?)
すっかり苔だらけになった狛犬をみて、そんな感情を抱きながら狛犬の苔を触りながら見ていると
「……え、に、人間!!」
大きな声が聞こえて後ろを振り返るとまるで人間を初めてみたかの様な反応をしている藍色の瞳の女の子がこちらを凝視していた。
プライベートな神様 @oda09
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