【山小屋殺人事件】 中谷刑事解決事件簿#1

最終話 推理・犯人逮捕（5日目）

　中野恵美殺人事件の犯人が捕まった"そのニュースが朝の全国のニュース速報で入った。犯人は花屋店員の長津紗里だ。

　中谷は前夜名倉が長津紗里に言っていた"人を1人殺してしまった"という発言に何か違和感を感じた。名倉が中野恵美殺人の犯人ならなぜ、長津紗里に電話をしたのか。電話をしてしまったら、警察に言われて逮捕される可能性が高くなってしまうのに。

　では、長津紗里が犯人という可能性はどうか。しかし、長津博を殺す意味がわからない。

　2人の長津博殺人時のアリバイは2人とも証言と一致する服装の人が防犯カメラに写っていたことから、アリバイはあると言える。

　すると、中谷は頭の中で思いもしなかったような仮説を思いついた。

　この事件は中野恵美殺人事件に全て繋がっていたのではなく、2つの事件がたまたま１つの事件に見えてしまっていたとしたら。

　どういうことかというと。この事件は中野恵美殺人事件が起こり、その犯人に渡部大と長津博が殺害されたと思い込んでいたが、それは間違いで渡部大の犯人だけが別だとしたら。この事件は、中野恵美殺害と長津博殺害には関係性があるが、渡部大殺害だけは何も関係がないように思える。それによって、この事件の真相が見えにくくなっていたのではないか。そして、渡部大に殺意を持っていそうな人物といえば。中野恵美の夫である名倉元介。そして、その事件が起こってから違う殺人事件が起こった。ここで、渡部大の死体が腐りかけていたことも、少し時間が経ったためだと考えられる。

　そう、この事件は名倉によって起こされた殺人事件に便乗して起きた殺人なのではないかという説だ。

　名倉は渡部大が中野恵美をストーカーしていたことは知っていた。もしかすると、渡部大に消えてほしいと願っていたかもしれない。そして起こったのが渡部大殺人事件。そして名倉は長津紗里に電話をかけている。長津紗里は誰を殺したとまでは聞いていないと言っていたが、もし聞いていたとしたら。中野恵美がその男にストーカーされていることを知っていたら。長津紗里は名倉にもう一度恋をしていたら。全てがつながる。中野恵美は長津紗里に殺されたのだ。

　まず名倉が渡部大を殺害する。それを聞いた長津紗里が中野恵美を殺害する。そして、自分の夫だが好きでは無くなってしまった長津博を殺害。これで全てがつながる。

　あとは、カラオケに行っていたという友人に話を聞けば、長津紗里本人が来ていなかったことを証明でき、アリバイを崩すことができる。

　友人に話を聞くと、案の定別人が来ていたと話してくれた。

　これでこの事件は終わった、と思っていた。

　名倉元介と長津紗里を殺人の容疑で逮捕し、取り調べを開始した。長津紗里は罪を認めたが、名倉は自分の罪を否定すること以外は黙秘を貫いている。何かがおかしいと思った中谷は、資料をもう一度見返すと、渡部大の部屋になぜか中野恵美の指紋が付いていたと、書いてある。

　中谷は、また新しい仮説を思いついた。名倉がここまで読んでいたとしたら。あくまで仮説だが、渡部大を殺したのは中野恵美ではないかという説も考えられる。人を殺して焦ってしまった中野恵美はすぐに名倉に電話をする。そうすると、名倉はどうにかならないかと考える。そうして自分が犠牲になるという提案をしたのではないか。名倉にとって、中野恵美が殺されることは想定外だったかもしれないが。自分が警察に捕まって、中野恵美は罪に問われない。そういうプランを考えたと考察した。

　このことを名倉に聞いてみると。認めたが、舌を噛み切って自殺を図ろうとした。が、中谷の咄嗟の判断でなんとか一命を取り留めることができた。

　こうしてこの事件は幕を閉じた。

　今日の天気予報は雨になっていたが、そんなことなく日差しが強い。中谷は警視庁の屋上で空を仰ぎながらコーヒーを飲んだ。中谷はこの事件を解決したことで表彰をされた。次はどのような事件を解決するのだろうか。

中谷刑事解決事件簿　山小屋殺人事件　(終)