第2話 被害者の複雑な人間関係(2日目)

 前日の夜から今日の朝まで警察署内のパソコンで被害者の名前を調べたところ、過去に3回隣人の渡部大によるストーカーの被害で相談に来ていた事がわかった。しかし、ストーカーをしたという明確な証拠を掴む事ができず接近禁止命令を出す事ができなかった、と書いてあった。また、その情報は2ヶ月前となっていたので最近渡部がストーカーをしていた可能性が高い。


 今日の聞き込みは被害者女性と一緒に写っていた男性の身元がわかったので、その男性の所で女性についてやストーカー被害のことなどを聞きに行くことにした。


 男性は住宅街の一軒家に住んでいた。呼び鈴を押すと、警戒心が高い様子で

「どちら様ですか?何も買いませんよ」と言ってきた。玄関には女性との2ショット写真がある。


「警察ですが、名倉元介さんですか?中野恵美さんのことについて伺いたいのですが。」


 男性の名は名倉元介といい、大手企業のサラリーマンだ。

「彼女とは結婚も約束した恋人でした。なのにあの男に殺されるなんて。」


「犯人を知ってるんですか?あの男とは誰のことですか?」少し興奮したのを抑えて中谷は聞く。


「警察はまだこんな情報もつかんでいないんですか?彼女のアパートの隣に住んでいる渡部っていう男ですよ。彼女は渡部にストーカーの被害に遭っていたんですよ。」


「その男が中野さんにストーカーをしていたことは警察も知っています。しかし、なぜその男が犯人だ とわかるのですか?」


「彼女は殺される1日前も渡部にストーカーされていたんですよ。電話を僕にしてきて、『家の前にずっといるんだけどどうしよう』って声をふるえて言っていたんですよ!」


「その男は自分の部屋で首を吊って自殺していました。」中谷は言った。


「自分のしてしまったことを後悔してやったんじゃないんですか?」


「ありがとうございました。またお話を聞きに来るかもしれません。」


 中谷は話しながら、名倉が渡部を犯人だと決めつけて自分を容疑者リストから外したいようにも感じられた。


 また、名倉は元々違う女性と付き合っており、最近その女性と度々会っているということがわかった。その女性は今は結婚して隣の県で暮らしているという。


 中谷は、その女性にも話を聞きに行った。その女は長津紗里と言った。すると、長津は驚きのことを話してくれた。

 

「名倉さんと事件の起こった日の夜に電話したと言うことでしたけど…」


「はい。事件の日の夜名倉さんが私に電話してきたんです。『人を1人殺してしまった、こんな俺でもまだ付き合ってくれるか?』と怖くなってすぐ切ったんですけど、次の日から会いに行って話を聞きに行ったんですけど…何も話してくれなくて。」


「誰を殺したとは言ってなかったですか?」


「私も『誰を殺してしまったの?』と聞いてみたんですけど、教えてくれませんでした。」


「ありがとうございます。また何か伺うことがあるかもしれません。」


 中谷は、警視庁に戻って今日の聞き込みをまとめた。

名倉への聞き込み

・中野さんは事件の前日にもストーカー被害に遭っていた。

・中野さんがストーカー被害を受けていたことは周りの人も知っていた。 


長津への聞き込み 

・元倉は事件当日の夜に人を殺してしまったと話していた。

・元倉は事件の日からあまり喋らなくなった。


 





 

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