「異常と極楽優劣③」
「今日も悪い天気だね〜」
「……だから何?…」
私のいかにもつまらなそうな話題に、この子は凄く冷たく返してくる。 私自身、雑談をする能力が高くないとはいえ、少し寂しい気もする…距離もそれなりに離れてるし…
「会ってからずっとその調子だね〜。君と話すのはあれだし、かと言って、黙々と歩いているだけだと味気ない。というわけで、人型の生き物が持つ、異能力について説明しようと思うんだけど、どうかな?」
「…別に良いけど…なんで?」
「いや、単純な話、異能力について説明できる人は少ないし、君みたいな子に正しい知識を持ってもらうのは当然の事だからね。私の異能力だけを知ったところで、その概要を知らないと、正しく異能力の性質や分類がわからないからね」
「………じゃあ…お願い…」
私は歩きながら、異能力の説明を始めた。
「うん、了解。まず、異能力の概要からだね。異能力っていうのは、魔法の様なものなんだけど、魔法をもっと意味不明にして、異能力の所有者理解できないようなモノなんだ。魔法も大概意味不明な概念だけど、魔法は昔、魔法という概念が無かった時代に魔術っていう雨乞いやら呪いやら、何かを代償に何かを引き起こす儀式が有った。その儀式という代償を払ってでも利益が欲しいという人の欲望が、当時魔力使い道の無かった魔力によって実体化し、悪魔が生まれた。そして悪魔が代償の無い魔術を生み出し、それが人の手に渡り、色々改造されて、魔法が完成した。こんな感じに、魔法にも完成までに色々過程があるし、歴史もある」
「……それで?」
「それに反して、異能力には基本的に歴史も無ければ過程もない。ある日突然発現することもあるし、生まれ持ってることもある。その異質性が異能力が魔法と違うところかな。まぁ、一つ違うのがあるんだけどね」
「……それで?結局、異能力そのものの性能について何も話していない」
「急かさないでよ。それで…異能力にも三つに分けら━━━」
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全身に感じる筆舌に尽くしがたい感覚。慣れたようで、慣れていないことを告げる感覚。もはや痛みなのか何なのか分からない感覚。全身が燃えるように熱い感覚。雨が傷口にしみる感覚…
「……はぁ……」
これらが感じられる時点で、私は無事なんだろう。そう思い、私は俯きで倒れてるであろう身体を無理矢理起こす。
「………え……?」
戸惑う声の方を向くと、信じられないモノを見るような目で驚いている様だ。それも、さっきまでの無感情な感じではなく、ありふれた本音の反応だ。
「あぁ、やっと普通の子らしい反応をしてくれたね」
「………いやいや…なんで立ち上がれるの……!?雷に打たれたのに……」
「あぁ、やっぱり雷か。だったら、ちょっとコンビニ行って良い?」
「別に良いけど……なんでそんなに無事なの……!?」
「う〜ん、そうだね〜…“死体にどれだけ傷が付いても、ボロボロになったとしても、それが死体であることに変わりはない”からね」
「…はぁ……?」
「まぁ、自分のことはそんなに気にしないで良いですよ。じゃ、行きましょうか」
そう言い、私は壊れた傘を拾い、近くのコンビニに入った。
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「いらっしゃいませー」
コンビニに入り、私は真っ先に氷と水一リットル、そして包帯をカゴに入れる。それと…非常食用の少し大きいカルパスも、数本買っておこう。ちなみに製造会社は…株式会社イガヤ…良しセーフ。他には……
私がお菓子コーナーへ視線を向けると、三本入りの舐めるべきか噛むべきかよくわからないタイプのいちごチョコレートが目に留まった。
一応候補として無しでは無い…そもそも最近のおやつは、先週の焦がし醤油せんべいを反省したのか、歌舞伎揚げばかりだったし、ここらで子供ウケの良さそうなものでも推薦しとくか…
そう思い、いちごチョコを二つカゴに入れ、会計を済ませる。そういえば、店員さんも私を見て驚かなくなった気がする。…単純に私が短い間で傷つき過ぎただけだろう。最近は特に、痛い目に遭っている気もするし。
そんな事を思いつつ、コンビニを出ると、包帯の巻いてある耳を抑えている。多分誰かと話しているんだろう。まぁ…変に気を使うと、変に勘ぐられたりするし、普通に話しかけても良いな。
「お待たせ〜。というか…なんでコンビニの外で待ってるの?雨も降っているわけだし」
「……単純に人が多いところが好きでは無いだけ……それに、ここの雨は
「そんな人居なかった気がするけど…まぁ、入ってみないとわからないか」
私は水と氷を当てた後、包帯を巻きながら会話をする。流石に打たれた後は血管の模様がより一層目立って、いつにもまして腕が赤くなっている。
「…大丈夫…?」
「大丈夫だよ。これが自分の異能でもあるからね」
「……異能…?」
「うん。さっきの話をする前に、ちょっと言っておこうか私の異能力について。っとその前に」
身体中に包帯を巻くことを終えた私は、コンビニの袋からいちごのチョコレートを出し、一つだけ差し出す。
「…?なに…?」
「チョコレート。ただ話を聞くだけじゃ、つまんないでしょ?」
それに、どうせ一個余ってじゃんけんするのが目に見えているし。
「…変なものとか入ってない?」
「入ってないよ。だって既製品だし、加工肉でもないしね」
「……じゃあ貰う…」
そう言い、私から受け取ったチョコレートを舐め始めた。そして、私達はまた歩き始めた。
「じゃ、話すとしますか。自分の異能力、それは現状維持の能力だよ」
「…現状維持?」
「そう、現状維持。私は日常的に、さっきの雷みたいな酷い目に遭っている。それでも無事なのは、この異能力のせいで現状維持されて…死なないし死ねない。それが自分の持っている能力だよ」
「……それだけ…?」
「う〜ん…それだけって言われると、少し難しいなぁ。う〜ん…現状維持は周りにも少し影響を与える…気がする。残念な事にこの異能力はわかってない事が多いからね」
「……そう…」
「そういえば、今度は自分の番だよね?」
「…うん…」
「行きたい場所とかある?」
「…?」
「ほら、このまま歩いてると、人通りの少ない所に行っちゃうからさ。なんか行きたい所とかない?ぬいぐるみ屋でも定食屋でも何でも良いよ」
私の提案に、少女は少し悩む素振りをした後、露骨な提案をする。
「……このまま進んで……」
「なるほど?わかった良いよ」
このタイミングで、人通りの少ない所に行きたい…となると…この先には…
「…やっぱりね…」
少し進むと、迷彩柄のそれはそれは怪しい人達に囲まれた。
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