恐怖の夕食

 フィリップによばれ、一行は徒歩で村まで向かった。また誘ってもフィリップが車に乗らない気がしたからだ。

 大した距離もなかっから疲れることなくたどり着いた。ログハウスから微かに煮込んだ牛肉のような香りがした。

「これは……ビーフシチュー」

 アリスは迷推理を披露した。

「そうです、今夜は旅人さんがくるので特別です」

 アリスは名推理を披露した。

 

 一行が家の中に入ると小太りの男は進んで自己紹介した。

「わざわざこんな辺境の村へようこそ起こし下さいました、私はここの村長、ルイ・ボナパルトと申します、そこのは息子のフィリップです、狭い家ではありますが」云々。

 それに合わせて挨拶をせねばならないだろう、という空気感から三人も挨拶を軽くした。

「ジョン・ファーブルです、生物学者をしてまして3日間ほど滞在させていただきます。そしてこっちが」軽くアリスの背中をおし「いとこのアリス・ファーブルです」云々。

「それで、そちらのかたは……」

 と村長はルークの存在を少々いぶかしんだ。

「彼は用心棒をしてもらっています、旅は危険ですから」

「ルーク・ワイルドと申します」

 こんな礼儀正しいルークを見たことなかったアリスは笑いそうになった。本当はただのガンマニアだからだ。

 全員、席についた。誰が話そうとルークとアリスはビーフシチューしか見ていなかった。

「生物学者とは何を研究していらっしゃるのですか」

 村長に聞かれたが本当は生物学者でも何でもないので、ジョンが返答に窮しそうになるが、答えられないのが一番嘘がばれて危ないので、さも知ってる風に、

「まぁそうですね、虫を調べるために森の中の動物を調べてますね……」

「ほう、それでは狩猟小屋は丁度良かったわけだ、よかったよかった」

 ワインを一口。

「えぇ、明日は一日中、用心棒と森に籠るかもしれませんので、何かあったらうちのアリスに言ってください、手伝いくらいしますよ」

 急に名前を出されたアリスはぎょっとしたようだった。

「もし森にこもるって、運よくウサギでも見つけたら狩って来ていただけるとありがたいですな、なんせこの村は老人ばっかりで狩りにいけるものが少なくて、私も最近腰をやってしまいまして……」

「分かりました」

 と言いつつもジョンはルークを見た、狩りならきっと彼が打つことになるからだ。しかしルークは料理に夢中で気が付いていなそうだった、用心棒失格の警戒心だ。

「ジョン、おいしいのをとってきなさい」

 アリスはジョンを尻にひく、年下いとこという設定らしい。

「尻にひかれてしまっているな、美味しいのを取ってきてくれたら明日はもっと豪勢になりますぞ、アリス嬢」

 と言って村長はワインを飲み干し、笑っていた。少しアルコールが回り始めたらしい。

「豪勢にするために、アリスもなにか山菜でも取ってきたらどうだ?」

 ジョンのいびりにアリスの眉が少し寄った。余計なこと言うなという表情だった。

「それはいい、老人ばっかのこの村じゃあ、低い所に生える食物なんてもう高級食材ですからな」

 村長は話す度に笑うようになってしまったかもしれない。

「おい、フィリップ、明日は食べれるものと、薬になるものをとってこい」

 フィリップはビックとしたように、頷いた。その光景がなぜかアリスの記憶の中で鮮明な光景になった。



――

会話を増やすと自然と文字数は増えるらしい。

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