城壁超えて、村長の家

 三人を載せた車は森の中を走っていた。城壁を超えたのにまだ森が続くようだった。

「もしかしたら、さっき出国したのかもしれないわね」

 アリス・ファーブルはそう言った。RPGだからジョンはジョン・ファーブルに、アリスはジョンのいとこ、アリス・ファーブルという事になっていた。

 しばらく、国の中の轍に沿って進むと集落にたどり着いた。半分木造の家々が木の生えていない広場に集まっている、という感じだった。田舎なのに車の類は見えなかった。車がないほどの田舎。


 右手前方の一際大きな家の前に黒髪の少年がいた、少年は跪き、家の前の雑草を観察してるようだった。

 ジョンは少し身を乗り出して少年に聞いた。

「ここら辺に泊まれるところはあるかな?」

「と、泊まれるところですか……この村にはありません、もう少し、進んだ街にはありますけど……」

「おい、フィリップどうした」

 家の中から男の声が響く、少年の父親だろうか。少年が何か返事する前に木製ののドアが開き、小太りで黒髪の男が出てきた。

「父さん、旅の人みたいだけど、泊まれる所はないかって」

 男は、ジョン、ルーク、アリスの順番で湿っぽく観察すると、

「森の奥の狩猟小屋で宜しければ」と意外にも愛想のいい返事だった。「フィリップ、案内して差し上げなさい」

 と言うと男は家の中に戻っていった。

「はい」

 フィリップはどことなく覇気のない返事をした。

「じゃあ、この車に乗りなよ、まだ席は空いているから」

 ジョンが提案した。

「車に乗るの初めてです」

 少年らしくわくわくしていた。


 一行を載せた車は森の中を走った。

 アリスの横、後部座席に座ったフィリップが狩猟小屋まで誘導するために発した言葉といえば、「このままずっと真っ直ぐです」くらいだった。

 

 狩猟小屋はログハウスだった、意外にもしっかとした作りで、小さい別荘のようだった。

「よし、場所は分かった、帰りも送くろう」

「い、いや大丈夫です」

 ジョンの提案を少年は断ると一人で森を歩き、村へ帰っていった。行きで車にテンションが上がっていたのだから、少し不思議だった。

「……なんかはっきりしないわね」

「そりゃあ、なにもないのにライフル入った袋もってる奴がいちゃあなぁ」

「俺は関係ないだろ……」

「そうそう、生物学者として、森を散歩してくるよ」

 生物学者RPGというより暇だったからだ。

 

 久しぶりにできた暇な時間を利用し、ジョンは散歩に、ルークはコートで見えにくい腰にあるホルスターに収めた大口径リボルバーや車に積まれた、ライフル、対物ライフルを一旦ばらして整備したりしていた。ルークはガンマニアだった。

「アリスのも」

 ルークは手を差し出した、先ほど小説を読み終わり、暇そうなアリスの護身用の銃もばらしてみたくなったのだ。

「銃変態」

 と言いつつもアリスは腰の後ろ、背中側のホルスターから宇宙のように青いオートマチックピストルを差し出した。

 アリスはルークの言いつけ通り、いつでも護身銃をホルスターにちゃんと納めて生活していたのだ。

 ちなみアリスの読んでいた本は恋叶わず自殺するという内容だ。

 

 それから暫くして、フィリップが夕食だと呼びにきた。

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