第51話 決勝トーナメント

 

『さァ、これで決勝トーナメント進出チームが全て出揃いました! さてバーン様、Aブロックはルーキーのロードチームとエアルチームが勝ち上がりましたが、その後は順当に高ランクのチームが残ったという印象ですね』


『そうだなぁ……ま、ルーキーが2つ残っただけでも大健闘だろう。決勝トーナメントでも期待出来るし、後は抽選次第かな?』


『そうですね! そんな運命の抽選結果は休憩を挟んだ後に発表致します! また、決勝トーナメントの試合形式の発表もありますのでお楽しみに! ではこれより1時間の休憩に入ります!』


『しっかり食えよー』



 ―――――――――――――――――――



「……」


「あ、お弁当ですね? ありがとうございます…………ふむ、随分無愛想な方でしたね。ロード様昼食に致しましょう」


「あ、俺はいいや。なんか今食ったら出そう……レヴィ食べちゃってくれ」


「む、そうですか? では遠慮なく」


 係員の男性からお弁当を貰い、与えられた控室でレヴィの食いっぷりを見た後、俺達は早速作戦会議を始めた。

 と言っても、1回戦の相手が分からないばかりか、どのような試合形式なのかも分からない。

 

 試合形式は毎年変わっているらしく、去年は双方のパーティメンバー全員でのバトルロイヤルだったらしいが、今年は予選でそれをやっているから多分別の形式になる筈だ。

 とりあえずはレヴィの鑑定魔法で得た情報を頭に叩き込むことと、誰を使うか、というところを考えよう。


「C、Dはなんとかなりそうだな。もちろん強敵には変わりないが、とにかくエアルさんとグラウディさんが厄介だ。知れば知る程にな」


「そうですね……お2人とも対処が難しい魔法です。グラウディ様はもちろん、エアル様の酸素魔法はどうやって防ぎましょうか?」


 自身の魔力を酸素に変えたり、空気中の酸素濃度を自由に操ったりと確かに対処が難しい。

 こっちのカードは現在16人の武具達だ。

 既にレヴィが"視て"くれたので、この中から彼女の魔法へ対処出来る人を探そう。


「エアルさんに当たった時はこの人かな。どうかなレヴィ」


「なるほど、この方なら確かに……」


「グラウディさんはこの人で、レバノンさんはこの人かなぁ」


「ふむふむ、この調子で全部決めてしまいますか」


「ま、一対一かどうかも分からないけどな。とりあえず決めておこうか」


「ええ、我々の強みを生かせばある程度は戦える筈です。まぁ、バーン様のような規格外の方もおりますが……」


 そういえばまだ聞いていなかったな。

 レヴィが化け物や規格外というバーンさんの力を。


「あの人の魔法ってなんなんだ? 確か神のそれに近いって言ってたよな」


「ええ、あの方の魔法は時空魔法……クラウン様の時魔法とはまた違う、とんでもない魔法ですよ。私も初めて見ました。長く生きてきましたが、最近初めてのことばっかりです……」


 時空魔法……もちろん俺も初めて聞く魔法だった。


「どんな魔法なんだ?」


「クラウン様の時魔法は、文字通り時を操る魔法です。それに対し、バーン様の時空魔法は時空を操る……ってそのままですね……えーっと、どう説明したものか……とにかく異次元を作り出したり、時空を歪めたりする、そんな感じの魔法です!」


「最後諦めたろ! ……まぁ、とにかくすごい魔法なのは分かったよ」


「だって難しいんですもん……というかそんなことよりもっと対策を……」


 その時扉がノックされ、扉越しに係員の声が聞こえてきた。


「失礼致します。間もなく休憩時間終了となりますので、決闘場までお越し下さいませ」


「あ、はい。分かりました」


 いよいよか。

 やっぱり緊張するなぁ……。

 予選は見ているだけだったから気が楽だったけど、上手く身体が動くだろうか。

 そんな不安げな気持ちを察したのか、レヴィがそっと手を握ってくれた。


「大丈夫ですよ。ロード様は強いです。私が保証致します」


 にこっと微笑むレヴィ。

 可愛い。


「そっか……レヴィのお墨付きなら安心だ。よっしゃ! 頑張ろうレヴィ!」


「はいっ! ロード様!」



 ―――――――――――――――――――



『皆様ッ! 大変お待たせ致しましたァッ! それではこれより、決勝トーナメントの組み合わせと、試合形式の発表を行いますッ!』


 今日何度目だろうか、大歓声が闘技場を包み込んだ。

 あー緊張する……。


『まずは組み合わせの発表です! 抽選結果は……こちらァッ!!』


 キャロルさんの掛け声と共に、決勝トーナメント表がガラスの壁に映し出された。

 俺達は1回戦第1試合、相手はレバノンさんのパーティだ。

 レバノンさんには悪いが、いきなりグラウディさんとかじゃなくてちょっと安心した。

 グラウディさんは俺達とは一番離れた第4試合。

 つまり、当たるとすれば決勝戦ということになる。


「第2試合にエアルさんか……勝ち上がれば当たるかもしれないな」


「そうですね。出来れば強敵同士で潰し合って欲しかったのですが……ククク」


「や、やめなさいレヴィ」


 俺達と1回戦で当たるレバノンさんを横目で確認したら、彼らは一切表情を変えずにトーナメント表を見ていた。

 なんだろう……予選の時とは何か……。


「なぁ、レ……ど、どうした!?」


 突然レヴィの顔から大粒の汗が噴き出し、彼女は見るからに苦しそうな表情をしていた。

 ついさっきまで普通にしていたのだが、いつの間にかお腹を押さえて前傾姿勢になっている。


「い、いえ……なんだか急に体調が……」


「え? だ、大丈夫か? 今アスクレピオスを……」


「いえ! す、すぐ戻りますのでっ!」


「あ、レヴィ……! 行っちゃった……食べ過ぎちゃったからかな? まぁ、すぐに……」


『それでは第1試合を開始致します! ロードチームとレバノンチーム以外の方は席へお下がり下さい!』


 え!? もう始まるのか!?


『やっと見れるぜ。ドキドキするなぁ』


 俺は色んな意味でドキドキしてますよ!?

 レヴィが今ちょっと……!


『おや、レヴィちゃんの姿がありませんが……あ、なるほど! 予選で疲れているレヴィちゃんを休ませ、ここはご主人様であるロードさんが1人で……! これが漢気というヤツですね!? くぅ……私もこんなご主人様に仕えたいッ!』


 えぇ……。


『対するレバノンチームは4人パーティ! リーダーのレバノンさんを筆頭に、ヤマハさん、サキさん、ホンさんと揃っています! それでは決勝トーナメントの試合形式をここで発表致しますッ! 今大会は……なんと決勝もバトルロイヤルだァァァァァァッ!!』


 またまた会場が割れんばかりの大歓声に包まれる。

 お、おい……バトルロイヤルって……なんで!?


『やはり大人気のパーティ対抗バトルロイヤル! 先にパーティを全滅させた方が勝ちというシンプルなルール! 仲間との連携! 入り乱れる魔法! これがベストなのです! ね! バーン様!』


『本当は違う形式だったんだけど、俺が変えちゃった。だってこっちの方が面白いし』


 バーンさーーーーん!?


『バ、バーン様ッ! 内緒って言ったのに! ま、まァでも会場は大興奮! やはりバトルロイヤルは熱い! だからオッケェェェェェェッイ!!』


 オッケェェェェェェッイ!

 じゃねぇぇぇぇぇ!


『それでは早速始めましょうッ! 双方準備はよろしいですかァッ!?』


「いや……あの……」


『それではいきますッ!』


 聞かないなら聞くな……!

 レヴィはいなくなるし、レバノンさん達4人も普通に構えてるし、なんか目が怖いし……もう訳分からん!

 くそっ! もうこうなったらやるしかない!


『決勝トーナメント1回戦第1試合! レディィィ……ゴォォォッ!』

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