第30話 トライデント
なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで。
「はぁ……はぁ……!」
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。
「はぁっ……げほっげほっ……ああっ!」
逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ。
「おいそっちを探せ! ここいらにいるはずだ!!」
気の迷いと言えばそれまで。
「はぁっ……はぁっ……!」
どうしても太陽の光を浴びたかった。
「こっちにはいねぇ! 周りを固めろ!」
そのままふらふらと通りに出てしまった。
「もう少し……やだやだやだ……あとちょっと……!」
その時幸せそうな家族と目があった。
「いたぞ!! こっちだ!!」
汚いものを見る目をされた。
「い、いやぁぁぁぁ!」
気づいたら殴ろうとしてしまった。
「囲め囲め!」
自分でもよく分からない。
「もう逃げられねぇぞ……この無能が!」
もう……ダメだ……あはは……。
―――――――――――――――――――
「ロード様? なにニヤニヤしてるんですか? ちょっと気持ち悪いです」
「おいレヴィ……気持ち悪いはないだろ……」
インフェルノワイバーンの討伐から2日。
ハガーさんの話だと、4日あればいいものが出来るとのことだった。
この2日は簡単な依頼をこなしていたが、せっかくだし残りの2日はのんびりすることに決めた。
あの夜以来、レヴィとの距離はほとんど無くなった。
今までは言われなかったことや冗談など、本来の彼女が持つ言葉が聞けるようになったのは嬉しいんだが……。
「冗談ですよ。どうされたんですか?」
「ったく……これ見て」
レヴィが身体を寄せ、俺が持つ手帳を覗いた。
それが心地よくて、それだけで心が満たされる。
「あ、増えてますね」
「そうなんだよ。また2人増えたんだ。ソロモンのおかげかな? だからそろそろ次の人を呼ぼうかと思ってさ。せっかく力を貸してくれるんだし、待たせるのも悪いからね」
この2日で受けた依頼はあまりに簡単で、生命魔法を使わずに、俺とレヴィの力だけでこなせてしまっていた。
俺があることに気づいたことも、その理由の一つなんだが。
「では、残りの2日は武具様の為に使いますか?」
「ああ、いいかなレヴィ?」
「はいもちろん。私はいつでも……ロード様と同じ気持ちですから」
ニコッと笑うレヴィ。
可愛い。
さて、今まで会ったのは、エクスカリバー、カドゥケウス、ブリューナク、アイギス、バルムンク、フェイルノート、ソロモンの7人か。
「後5人いるな。最初はやっぱりトライデントかな」
「一度力をお借りしてますしね。お返ししないと」
「よし、呼んでみよう」
ソロモン曰く気難しいらしいが……なんで力を貸してくれたのだろう。
それを含めて色々話を聞かないとな。
トライデントを手帳から取り出すと、すかさずレヴィから紙を渡された。
その間約5秒である。
……早くない?
―――――――――――――――――――
トライデント 海神の槍
海の神が創り出した神の槍。
想像を絶する力を持ち、天変地異さえ引き起こすと言われている。
水を自在に操ることが可能。
武器ランク:【SSS】
能力ランク:【SSS】
―――――――――――――――――――
説明が短いことが、逆にその力を表している様な気がする。
ソロモンの言う通り確かに凄い力を持っているようだ。
とにかく一度話してみよう。
俺が生命魔法をかけると、青と金色が混ざり合った光の中、徐々に槍から人へと形が変わっていく。
ブリューナクの様にスラリと長い手足が伸び、その身長は俺とあまり変わらないようだ。
そして現れたのは、美しい女性だった。
大胆に胸元を開けた金色のドレスを着ており、手には自身であるトライデントを握っている。
完全に姿を現わすと、蒼く長い髪をかきあげ、彼女は金色の瞳で俺を見た。
「ほぅ……これはこれは……お初に、
なんだ、いい人そうじゃないか。
それにしてもものすごい美人だな……なんだか緊張してしまう。
「お、俺も嬉しいよトライデント。この間は力を貸してくれてありがとう。これからもよろしくな」
「ふふ……
「ああ、色々話をしたくてね。なんで力を貸してくれたのかとか」
「ああ、それは単純な話……」
トライデントが俺にスルリと近づき、顔を近づけたかと思うと、いきなり抱きしめられた。
「ちょっ!? ひぃっ!?」
耳を甘噛みされ、全身に鳥肌が立つ。
そのまま甘い声で囁かれた。
「
「ト、ト、ト、トライデント!?」
「ト、トライデント様! おやめ下さいっ!」
珍しくレヴィが声を荒らげ、トライデントを俺から引き離した。
その後我に返ったのか、トライデントに謝りながらレヴィはペコペコと頭を下げる。
「おやおや、既に唾をつけられていたか。これは残念……ふふ」
舌で唇をペロリと舐めたトライデントは、クスクス笑いながら「よいよい」とレヴィに声を掛けて話を続ける。
因みに俺の鳥肌は一向に収まる気配がない。
「
「あ、ああ……納得した」
「ソロモンの阿呆が何やら
再びクスクスと怪しく笑うトライデント。
多分これ冗談じゃないな……。
「で、出来る範囲で……」
「ふふ……期待しておるよ。さて、用が済んだのなら戻ろうか。また必要な時に呼んでくれ」
「ありがとうトライデント。またゆっくり呼ぶよ」
「ああ、そうしてくれ。今度はゆっくり……夜にな」
顎をくいっとされ、鼻先が着く距離でそう囁くトライデント。
全身の鳥肌がざわめいている……。
「ト、トライデント様っ……!」
「ふふ……すまんすまん。ではな」
魔力を抜き、彼女を手帳に戻した。
それにしても、絶世の美女とはああいう人を指すのだろう。
この世の理を超えている。
はぁドキドキした……。
「ロ、ロード様……」
「大丈夫だよレヴィ。心配するな」
そう言って頭を撫でると、涙目になりながらニコッと笑うレヴィ。
やっぱり可愛い。
「じゃあ次の人を呼ぼうか。というか、願いがある人って少ないんだな」
「身体を貰えるとは想像もしてなかったのかもしれませんね。自由に動けたり、ご自分で力を使うこと自体に喜びがあるのでしょう」
俺達が普通に話したり、歩いたりすること自体、武具達にとっては奇跡に近いのかもしれない。
まぁなんにせよ、俺の力で喜んでもらえるのなら嬉しい限りだ。
「じゃあ次は……」
その時、通信魔石が光を放つ。
どうやら誰かから連絡がきたようだ。
「ハガーさん……にしては早いよな」
「とりあえず出ますね。はい、どちら様ですか?」
『あ、わ、私っ!』
声が大きくて、俺まで聞こえた声はランナさんだった。
そういえばあの後に依頼を受けた時、ギルドの魔石ともリンクさせてもらったんだったな。
なんだかかなり慌てているようだが……。
「ああ、ランナ様。どうされたのですか? そんなに慌て……」
『テ、テネア様がっ……やられちゃったのよぉ!』
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