第11話-運命(フォトゥルナ)の名の下に-

---キンコンカンコン---


「課題は明日が締切日だからやっておくように。以上」


 授業が終わり、山田先生が教室を出ると、昼休憩が始まり、教室はざわざわと騒がしくなる。教材を仕舞い、バッグから弁当を取り出していると、不意に声をかけられる。


「貴方が暁月奏詩くん?」

「そうだけど、君は?」

「私は仁科、仁科歌織。いつも私の親友がお世話になってるわ」


 そう言うと、授業の復習をしている柚葉の方へ視線を流す。仁科歌織は銀髪で、髪の先端には青のグラデーションがかかっている、瞳はまるでルビーのような美しい眼をしている可愛らしいギャル風の女性だ。当然、柚葉と並んで顔も良い。


「ああ、そういう」

「それで?あの子とはどのくらい進展したのよ?」

「それはどういう意図で聞いてるんだ?」

「あの子の背中を押したのは私なのよ?当然貴方たちの関係は知ってるわ」


 なるほど、嘘告白の首謀者ってわけか。それにしても悩ましい質問をしてくる。


「まだまだ、彼女のことは知らないことばかりだ。まずは人となりを知らないと好きも嫌いもわからないものだろう?」

「ふうん、そういう言い方するのね」


 仁科さんは次なる一手を考えているようだ。腕を組み、右手を顎の下に当てて、私は今考えている最中ですよと見せつけている。俺は今日も柚葉とお昼を食べるために早く声をかけたい。悪いけど、次の手を考えさせる訳にはいかない。


「それはそうと、本題があったんじゃないか?」

「あ、それもそうね。暁月くんはもう部活決めたの?」

「いや、決めてない。というか、どこにも所属しないつもりだけど」

「あら、それは残念」

「それはなぜ?」

「柚葉を連れてバスケ部に体験入部に行って欲しいの。貴方には因縁があるみたいだけど」

「バスケ部に?」

「そう、バスケ部。もちろん中学バスケ部の連中も多少なりとも入部はしてくるでしょうけど」

「中学の頃に起きたバスケ部の話を知ってるなら、何故俺がそれをしなくちゃならない?」


 バスケ部には中学バスケと高校バスケの二種類がある。大会や顧問、実力のレベル等様々な理由があるためだ。中学バスケ部の連中は多少数は別の部に移るが、大部分が高校バスケ部に所属する。俺にとっては居心地の悪い場所だ。


「うん、知ってる。でもあの子は知らない。いずれ気付きはするけどね」

「じゃあなんで」

「それはあの子が。いや、これは言わない約束だった。そういう話は本人に聞いてみたら?それじゃあ、理由はどうあれ柚葉をよろしくね」

「あ、おい」


 仁科さんは教室を出て行ってしまった。柚葉の方へ視線を向けるが、復習に集中しているようだ。


「いったいなんだったんだ?」


考えようにも情報が少ない。とりあえず柚葉に声をかけよう。飯を食べなければ頭を働かせようにも働かない。

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