六 地獄の花嫁

「私は御前おまえを愛している。御前はこの私の婚約者だ。これから末永く宜しく頼むぞ、天野冥あまの めい。」



突然の訳の分からない告白にぽかんと口を開け、目を白黒させてしまう。そんな冥にはお構い無し、というように周りにいた冥界の住人たちは閻魔の告白を聞くやいなや、口々に自分たちを祝福するような声を上げる。


「きゃーー!閻魔様、やっとお会いできたのですね!おめでとうございます!」


「あぁ、閻魔様……。おふたりが揃ってこうして此処へいてくだされば、冥界も安泰じゃ!」


「なんとお美しい方なの……。閻魔様がずっと待ち焦がれていた方ですもの!中身もさぞ素敵な方に決まっているわ!」


人々は歓喜の声を漏らし、その様子を閻魔は心底満足そうにみている。


(って!!そうじゃない!)


「な、何を言ってるんですか貴方は!!

そもそも、婚約者ってどういうことですか!?

勝手に決めないでください!

それに、愛してるだなんて私と貴方は先程出会ったばかりです!変な冗談はやめてください!」


半ばヤケになって冥が叫ぶんだ冥をみて、閻魔は子供のように笑った。


「ははははははは!!」


「何がおかしいんですか!!!」


目に涙を溜め、何がおかしいのか笑い続ける閻魔に冥は訳が分からなかった。そんなにおかしな事を言っただろうか?どちらかと言えば出会って早々彼の方が変な人だ。


「いや、御前は何らおかしなことは言っていないな。ただ、やはりあの男の娘だと思ったのだ。」


閻魔は懐かしむように空を見上げた。

地獄と言うだけあって、この世界の空は一定して茜色をしている。

あの男とは父のことだろうか?またしても閻魔の意図がわからず、冥はその横顔を見つめた。


「さて、ここではなんだ。詳しいことを宮殿で説明しよう。ゆくぞ、冥。」


閻魔は自身の手をこちらに差し出す。

色々と腑に落ちないが、それも全てやっと説明して貰えるようだ。

冥はその白く、美しい手をとり歩き出した。







閻宮えんきゅう

それはこの冥界にあり、閻魔大王が住まう宮殿だという。冥がこの冥界に降りて、一番初めに目に付いたあのとてつもなく大きな建物がそれだ。

閻魔に促され、宮殿内に入ると何人もの兵が横並びになり、閻魔の帰還を待っていたようだ。

中心にはかいと、先程広場で悪鬼あっきの足止めをしていた睡蓮すいれんが待っていた。


「「お帰りなさいませ、閻魔大王様。」」


二人が頭を垂れると、閻魔は「あぁ。」とひとつ返事をし、戒へ向かう。


「戒、報告を。」


「は!先程悪鬼に取り憑かれていた者は、無事極楽浄土へと渡っていきました。後のことはあちらにお任せしております。」


それらのやり取りをみていた冥には、先程からずっと同じ者の視線が刺さっている。睡蓮だ。


すると、閻魔はそれに気づいたのか今度は睡蓮の方を向いた。


「睡蓮は挨拶がまだであったな。冥、紹介しよう。私の側近をしている睡蓮だ。戒とは双子の兄弟でな。睡蓮が兄、戒が弟だ。」


藤色の短髪につり目の戒とは異なり、深緑色の長髪を高い位置で括り、垂れた目をしている睡蓮。戒の泣きぼくろと同じように睡蓮には口元右側にほくろがある。


「天野 あまの めいです。睡蓮さん、よろしくお願いします。」


「容姿こそ、戒とは似ていないだろうが一応兄弟なんだ。さん付けはしなくていいよ。立場的には貴女の方が上なんだから。睡蓮でいい。」


「俺のことも戒でいいぜ。」


フランクで明るい戒とは異なり、表情が乏しく落ち着いた雰囲気の睡蓮。

それでも、二人とも気さくで信頼できそうだ。




「さて、それでは一から説明しよう。冥、こちらへ。」


閻魔は冥の手を引いて、応接間のような部屋へ案内した。室内は白と金の模様の壁紙がシンプルだが高尚さがみてとれる。カーテンは赤く、和風なシャンデリアのようなものが中心に吊るされている。


閻魔は冥と向かい合うように座り、そのサイドには睡蓮と戒が立っている。

そして、閻魔はゆっくりと口を開いた。


小野篁おのの たかむらという人物を知っているか?」


「小野篁……。」


聞き覚えのない人名に冥はオウム返しになってしまう。


「彼は平安初期の公卿くぎょうでな。

昼間は朝廷に仕え、夜はこの冥界で先代の閻魔大王に仕えていたという話がある。その際に篁が使用していたとされるのが私たちが先程通ってきた冥土通いの井戸だ。あそこの寺には小野篁もまつられているという話でもある。」


閻魔の説明に戒が続ける。


「篁の没後も子孫の中で冥土通いの井戸を通じてこの冥界へ降り立ち、篁と同じように閻魔様に仕えていた奴もいたんだ。まあ、全員が全員じゃねーけどな。」


「それと父に、何の関係があるんですか?まさか、父もその小野篁と同じように閻魔様に仕えていたとでも……?」


冥の問いかけにたいし、今度は睡蓮が口を開く。


「貴女の父親の名前は?」


篁世たかせです。天野…篁世…。」


「天野、というのは今は亡き御前の母方の姓だろう?」


冥が小さく呟くと、間髪入れずに閻魔が問いただす。

冥は目を見開いた。確かに天野、というのは冥の母親の姓であった。父は自分が婿に入ったと言っていたから、天野篁世を名乗っていたのだ。


父の旧姓は…。


「小野篁世……。」


「やはりか。」


冥の呟きから間髪入れずに閻魔は納得した口ぶりで言う。


まだ父が閻魔に仕えていたという話に困惑しているが、その話が本当なら何かと辻褄が合ってしまうことばかりだ。冥が俯いていると、閻魔はつとめて優しい声で言った。


「御前はやはり、篁世の娘なのだな。

逢えて良かった。」


「え……?」


突然の言葉にまたもや冥は困惑するが、閻魔は続けた。


「篁世の遺言を読んだであろう?

冥界で私に仕え、現世でも冥界について研究をしていたと聞く。

それに、あやかしや悪鬼のことについても調べていたようだから確かに何かから恨みをかったり、そういったことに巻き込まれてしまうことだってある。篁世はよくそう言っていた。

けれど、その際一人娘である御前のことを心配していたんだ。自分がそういったことに首を突っ込んでいたばかりに、娘の御前までも危害が加わることも決してないことではない。

篁世も御前も、人間だからな。現世のものではない者から攻撃されては、対処しようがない。」


「お父さん……。」


「そして、篁世は私に頼んできたのだ。

自分がもしそのような事態に巻き込まれてしまったら、冥を守って欲しい、と。」


閻魔が冥土通いの井戸を通じて、自分を探しにきたことが父の頼みであったという事実に冥は今にも泣き出してしまいそうな衝動に駆られる。


夜遅くまで研究に明け暮れ、昼間も外へ出向いている時間が多かった父。


それでも記憶の中の父も、今閻魔から聞かされた父もいつだって冥のことを一番に考えてくれていたのだ。


俯いて押し黙ってしまった冥へ、閻魔は穏やかな口調で続けた。


「御前の父はとても面白い人間であった。

よく口の回るやつで御前のように泣いたり、怒ったりと喜怒哀楽のよく見える者だった。

それでいて、とても優秀でな。まだ未熟な私の話をよく聞いてくれたものだ。私にとっても本当の父親のような存在であった。」


「俺たちも篁世さんにはよく、現世の色々な話をしてもらったんだ。おひいさんの話も聞いてたから、あの雨の中あんたを見つけられたときは心底ほっとしたぜ。」


「篁世殿はとても頭のいいお方であったからな。俺もよく、色々と教えられたものだ。」


戒と睡蓮も父との思い出を懐かしむように続けた。

みんなの気遣いが嬉しく、冥は泣き笑いのような表情で前を向く。


「ありがとうございます。閻魔様も戒も睡蓮も……。

私のことを心配して、来てくれたんですね。

父の死因は未だ不明です。閻魔様、何かご存知ないですか?やはり祟や呪いなど、そちらの方面が原因なのでしょうか?」


冥が尋ねると、閻魔は先程とは打って変わって見るからに困ったような顔をした。戒や睡蓮も目を逸らし、バツの悪そうな顔をする。


何かおかしな事を聞いてしまったのかと、冥は心配になる。しばしの沈黙の中、それを破ったのは戒であった。


「人間ってのは死んだらこの冥界もとい閻魔様の元へ来るのが世のことわりなんだよ。」


「うん、知ってるよ。

閻魔様が裁きをなさるんでしょう?」


「いやさ、来てないんだよ。篁世は。」


戒の質素な物言いに、冥は訳が分からず、目線で閻魔の方へ助けを求めた。


「あぁ、私から説明しよう。

冥、極力御前を危険な目にはあわせたくないというのが篁世の望みであったし、私とてそう思う。だから、これを伝えても良いのか私も迷った。けれど、御前は知る権利がある。よくお聞き。」


閻魔は真剣な面持ちで話し始める。


「先程、戒が言ったようにどんな人間も亡くなったら総じて一度私の元へやってくる。これに例外は無い。現世とこの冥界、そして極楽浄土と地獄の果て、基本的に四つに分類される生と死の世界での理だからだ。

けれど、篁世が亡くなってから四十九日が経つというのに彼は一度も私の元へ来ていない。

これが何を意味するか、わかるか?」


閻魔の真剣な瞳が怖くすら感じる。この問いかけがどう言ったことを意味するかなど、一連の話を聞いていれば冥ですらわかる。





「父は…死んでいない…?」



冥の答えに対し、閻魔はひとつ、頷いた。


「御明答…。その通りなんだ。

だが、その原因が私にもわからない。

確かに彼は亡くなったはずなのだ。この冥界に出入りしている者の死なら私が感じ取ることができる。冥、篁世が亡くなった後彼の顔を見たか?」


「はい…。

特に外傷はなく、だからこそ原因がわからないんです。」


「ふむ。では、火葬後をみたか?」


「はい、私は娘なので一番初めに御骨を拾いました。」


閻魔はまたしても先程よりも難しい顔をする。眉間に皺を寄せ、何かを考えるように一点を見詰めた。



「では、火葬されているところを見たか?」


「いえ…。実際に火葬されているところは見えないようになっているので、見ることはできません。」


「そうか。」


「あの、父が亡くなっていないってどういう」


先程からずっと思い詰めた顔をしたままの閻魔に問いかける。

すると、閻魔はそれを遮るように言った。


「あまり考えたくはないが、何かしらの力を使って生かしている、或いはどこかのタイミングで何者かが死体を連れ去った可能性が高いとみて、こちらでも篁世の行方を追っているところだ。」


「どうしてそんなこと……!」


「わからない。

けれど、篁の子孫は皆霊力の強い者が多かった。

それゆえ、霊力の強い者の器を欲しがるあやかしや悪鬼も多い。タチの悪いことに越したことはないがな。」


明らかに不安な表情をしていた冥の顔をみた閻魔は微かに唇を噛み締め、続けた。


「冥、そのような顔をするな。

私は御前の笑った顔が好きなのだ。

案ずるな、篁世のことについては今こちらも総力をあげて捜査している。屍人が現世を彷徨いているというのは、閻魔大王としても即刻解決しなくてはいけないものだからな。

御前を危険な目には遭わせたくはない。私たちに任せておきなさい。」


この話は終いだとでも言うように、閻魔は冥の手を取り部屋を後にしようとする。けれど、それではいけない。優しかった父のことを死して尚、利用しようとしている者がいる。


ここで閻魔たちに任せ、冥は一切関わらないという選択をとるのは簡単だ。けれどそれは、父のことについて目を背けていた頃と変わらないのではないか。

冥界まで来て、やっと父のことについて少しわかったのだ。父も閻魔も優しいが故に、自分を遠ざけようとする。だが、それに甘えてばかりではいけない気がした。


拳をぎゅっと握り、閻魔の瞳を真っ直ぐにみつめる。


「私も協力したいです…。何が相手かわからないことが、どんなに危険かわかっています。先程のように悪鬼に襲われてしまっても、私では対処できません。

でも、ここで逃げたくないんです…。父が亡くなって、父について何も知らないことを酷く後悔しました。また、同じように後悔するのは嫌なんです。」



「迷惑はかけません。

閻魔様の命令には従います…!父のことが解決するまで、私を此処に置いてくださいませんか?」


冥は必死に頭を下げた。

ここで、引き下がるわけにはいかない。

冥とて、恐怖心がないわけではない。けれど、それよりも父の真相について知りたい。そして、本当に何者かが父を利用しているとするならば、止めなくてはいけない。


冥の言葉を静かに聞いていた閻魔は、困ったような顔でふわりと微笑む。


「御前は本当にやさしいのだな。

篁世は良い娘を持ったものだ。

よし、わかった。そのこころざしと御前のことは、私がこの身を賭けて守ろう。」


「閻魔様、良いのですか?今回の件、一筋縄では行かないでしょう。」


すかさず睡蓮が問う。睡蓮と同じことを思っているであろう戒も、真剣な瞳で閻魔を見据えている。


「それは私も承知の上だ。けれど、冥の意志を一番に尊重したいと思っている。お前達の協力が不可欠だ。良いか?」



「申し訳ございません、失言でしたね。閻魔様が冥の意志を一番に尊重したいとお思いなように、俺たちは貴方様の意志を一番に尊重させていただきたく思います。そうだよね、戒?」


「あぁ!閻魔様が決められたことならば睡蓮も俺も惜しみなく協力させていただきます。おひいさん、俺たちにあんたのことを守らせてくれ。大舟に乗ったつもりでいてくれていいぜ。」



自分のわがままを受け入れ、尊重しようとしてくれる閻魔たちにとても嬉しく思い、冥はまたもや勢い良く頭を下げた。


「ありがとうございます、閻魔様!戒も睡蓮も、これからよろしくね!」


「それに、元よりそう易々と現世に帰す気はなかったのでな。都合が良い。」


今、とんでもない言葉が聞こえた気がする。気のせいだろうか?


「えっ…と、どういう意味ですか?」


冥は極めて冷静に閻魔へ問いかける。


(もしかしたら私の勘違い…そう、空耳ってやつかもしれないし…)


すると、閻魔は白い頬を薄桃色に染め、大切な宝物を目の当たりにしたかのように笑った。


「御前は私の大切な婚約者なのだから。私と共に冥界で健やかな日々を送ろう。愛しているよ、冥。」


「なっ!だ、だから!それについてはまだ納得していません!父のことが解決したら、私は現世に帰ります!そもそも、婚約者ってなんですか!勝手に決めないでください!」


「?私は御前のことを愛している。なぜ、婚約はいけないのだ?」


「だ〜か〜ら!!!あ、愛してるなんてもうわかりました!伝わりましたから、戒も睡蓮もいるのにそんな恥ずかしい言葉何回も言わないでください!」


『愛している』という言葉に冥が顔を真っ赤に染める中、当の本人はきょとんとしている。


「別に、俺たちのことは気にしなくていいぞ。な、睡蓮?」


「あぁ。冥、何も気にする事はないよ。

婚約おめでとうございます、閻魔様。これからはさぞお忙しくなることでしょう。まずはこの地獄の民たちへのお披露目祝賀会などをご検討されてはいかがですか?」


「ちょ、こらーー!そこ!勝手に話を進めないで!閻魔様も、その婚約とかなんとかってそちらについても説明してください!」


冥のことなどお構い無しに、先程の民と同様戒や睡蓮は閻魔の婚約を喜んでいる。


(冥界の人たちってなんでこうもみんな私の話を聞かないの!?)





「一目惚れ、と言うやつだな。」






「は?」


照れた様子でさも当然のように言う閻魔に、冥はまたもやぽかんと口を開けたまま固まった。


固まってしまった冥など気に留めず、閻魔は続ける。


「そのような愛い顔をするな、心配しなくとも私の生涯をかけて幸せにする。御前はこの私、閻魔大王の婚約者なのだから。地獄の花嫁となるのだぞ。」


「さすが閻魔様です…!惚れた女は生涯をかけて幸せにする。俺も閻魔様みたいな男になれるよう、これからも閻魔様の元で精進させていただきます。」


「祝賀会だけではいけないな。もっと、盛大に祝わなければ。地獄の花嫁の誕生だと。」


まるで見当違いなことを言い出した閻魔に続き、戒は何やら意気込んでいるし、睡蓮は先程から披露宴やら祝賀会やらをどうするかと、真剣に考え始めてしまった。


「いやいや、そういうことを言ってるんじゃないんです!第一、一目惚れだなんて嘘をつかないでください!」


「嘘などついていない。第一、私は嘘は好かんからな。心から御前を想っている。伝わらないのであれば、今此処で示すことも可能だが?」


急速に冥との距離を縮めようとする閻魔。真っ白な肌に紅い瞳、整った顔がと、近づく。


「わーー!!!もう!その手には乗りませんからね!それに、婚約っていうのは二人の了承の元成り立つんですよ。閻魔様は私のことが好きだと言ってくださいましたけど、私はまだ貴方のことを何も知りません。だから、好きになれるかどうかもわかりません。よって、婚約者にはなれません。わかりました?」


冥は必死に両手で閻魔の口元を抑え、これ以上迫って来れないようにする。けれども、閻魔はその手をひょいと退けては自身の指と絡ませるように手を握った。


「ふむ。もっともだ。すまない、冥。私は生まれてこの方、誰かを愛したことなどない。御前が初めてなのだ。だから、勝手がわからないことが多い。けれど、御前に好いて貰えるよう私なりに努力する。許してくれるか…?」


上目遣いのような形でこちらを見つめる閻魔。実際には彼の方が冥よりも身長が高いので、上目遣いなど形にもならないのだが。

この瞬間、冥は心の中で決定的なことに気がついた。

自分は彼のこのようなところに弱いのだと。

悪鬼に立ち向かい、紅蓮ぐれんの炎をいとも容易たやすく操り、その瞳を紅く燃やす彼と天然、というか少々浮世離れした言動が目立つ世間知らずな彼。どちらもこの地獄を治めている閻魔大王だ。

きっと、彼はとても優しい人なのだ。一国を治める者によくある傲慢ごうまんさや不要なプライドを持ち合わせていない。幼い子供のように正直で、優しく、それでいて強い。

そんな閻魔が時折見せる、この許しを乞うような瞳が冥は大層苦手だ。なんでも許してしまう気がするから。


「あーもう!!わかりました!というかそもそも、禁止していませんしお好きにどうぞ!」


ヤケになり、早口で会話を終わらせようとする冥。

それを聞くやいなや、彼はそれはそれは嬉しそうに笑う。


「ありがとう、冥。これから、よろしく頼むぞ。私の婚約者として、この冥界での生活を楽しんでおくれ。」


「おひいさん、改めて地獄へようこそな。」


「これから、よろしくね。地獄の花嫁。」






「だーかーらー!話を聞きなさい!三人とも!」



ここは冥界。地獄とも言うこの世界。

地獄の門番、"閻魔大王"が治める此処は日中空は茜色に染まり、夜は暗闇のように帳が落ちる。


そんな世界の昼下がり、冥界の鍵を握る一人の少女の大声が、閻宮に響き渡っていた。

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