第17話 おねショタ 胎動編

 夏休み、暑い日が続く日々の中。

 僕は毎日、あの日の道路に立っていた。

 ──また、お姉さんに会いたくて。


 ずっと、頭の裏側にこびりついてる。エッチな水着みたいなお姉さんの姿、話し方……その感触が。エッチなのはダメだけど、どうしてもお姉さんのことを考えると変になる。


 お姉さんのことを考えて、考えずにはいられなくて、また会いたくて。どうしてかお姉さんのことを考えると、オチ◯チンが変になるし。そこで、あのおじさんに僕はエッチな魔法を掛けられちゃったんだって、やっと気がつけだから。


 お姉さんに会って話をするために、あの時助けてくれてありがとうございますって伝えるために。それから、オチ◯チンを治してもらうために、僕はずっとお姉さんを探し続けて。


 そうして、助けてもらった日から10日目に、お姉さんを見つけられて。嬉しくて、ドキドキしながら声を掛けようって思った。


 でも、お姉さんの隣に……。


「こころ、入浴剤なに買う?」


「何でもいいよ」


「ローションでも?」


「それ、入浴剤じゃないよね!」


「一緒に入るなら、それくらいした方が楽しい」


「入らないから!」


 楽しそうに、黒髪のお友達さんと話をしてたの。僕に見せてくれた優しい表情じゃなくて、コロコロとお顔の色が変わる。


 呆れたり驚いたり、慌てたり笑ったり、万華鏡みたいにコロコロ変わる。なんていうか、すごく凄く楽しそう。……僕と一緒だった時と違って。


 ギュッて、胸が苦しくなる。

 ヤダなって気持ちで、いっぱいになる。

 どうしてって疑問が、ムクムクする。


 お姉さん、女の子同士なのに、アニメとか漫画とかで見る──好きな人を前にした顔してる。


 ……お姉さん、女の子が好きなのかな?






 デート、親しい男女が日時を決めて会うこと。その約束。


 スマホでググってみたら、真っ先に出てきた言葉。僕が知っている意味合いと、全く相違ない意味合い。僕と鈴は確かに親しいし、お出かけをデートと定義できるのかもしれない、うん。


「……あのさ、鈴」


「なに、こころ」


 鈴に手を引かれて歩く中で、鈴がデートの意味合いを分かっているのか気になった。顔を伺えば、やっぱり無表情で。けど、そっと覗き込んだ視線から逃れるみたいに目を逸らされた。ちょっと恥ずかしがってる、つまり鈴は、分かった上で僕をこうして連れ出したんだ。


 それってさ、なんというかさ。

 ……なんか、照れるね。


 そうして、気がつけば僕達は近くの商店街まで出てきて。急に手を離した鈴は、クルッとこっちを向いて一言。


「待った?」


「待ったも何も、一緒にきたでしょ」


「……お約束は大切」


 鈴がやりたいことを、なんとなく察する。ここに来る前に、鈴はこれがデートだと言っていた。だったら……。


「こころ、待った?」


「う、ううん。いま来たところ」


 正直、雰囲気だけのお遊びだけど、鈴が楽しいなら良いかって。一緒に来てて白々しさ満点だけど、そんなことを口にして。


「やりたかったの、これ?」


「うん」


 鈴は口角を両方、人差し指で上げて笑った顔を作る。楽しいよって気持ちを、僕に伝えてくれるために。


「死ぬまでにやっておく、108のことの内の一つ」


「煩悩と同じなんだ」


「多分そのうち、666に増える」


「無茶苦茶増えたね」


「人生は長いから」


「転生者みたいなこと言ってる」


「実は前世、こころのご主人様」


「鈴のペットだったんだ、僕」


「ううん、こころは愛の奴隷」


「なんか嫌な響きの言葉」


「今世では、こころのペットになるのは私」


 自分が口にしてる言葉の意味、考えてみたほうがいいと思う。そう言いたいけど、そうすると僕が鈴をすごく意識してるみたいで、なんか恥ずかしい。けど、鈴がデートって言い始めたんだし……。


 考えれば考えるほど、鈴のことを意識してしまう。

 僕は鈴のこと好きだし、鈴も僕のことを好き。それは事実だけど、それは幼馴染として。今までの積み重ねで、鈴と一緒にいたいって思ってる。


 じゃあ、それ以外では?

 僕は鈴のこと、本当に幼馴染としか見ていないの?


 そこまで考えて、頭をブンブン振る。それ以上考えると、何かしらの結論を出してしまいそうだから。……もし鈴に嫌がられたら、多分立ち直れなくなってしまうから。


「こころ?」


「え?」


「どうしたの?」


 鈴が、こっちの顔を覗き込んでくる。落ち着いた様な緑色の瞳、どんな真実だって見通してしまいそうな目。思わず、視線を逸らす。今、心の中を覗かれるのは困るから。


「何でもないよ」


 そう伝えて、今度は僕が鈴の手を引いた。

 誤魔化すために、咄嗟に。


「こころ、積極的?」


「……デートだから」


「……うん」


 小さく、笑い声が聞こえた気がする。でも、振り向かない。そうしたら、なんか負けな気がするし。勝ち負けなんてないけど、ちっぽけな意地で僕は振り向かなかった。


 ……僕の中にある気持ちを、今は気付きたくなかった。その気持ちに名前をつけるのは、男に戻ってからが良いなって。そんなひっそりと生まれた想いを、僕は自覚的に心の奥にしまい込んだ。


 それまで、待っててくれるかな、鈴。



 それから僕たちは、特に当てもなく店に入っては細々したものを買ったりしていた。文房具屋さんでシャーペンとか、駄菓子屋さんで色んなお菓子とか。


 結局、いつもの通り。特別はなくて、緊張も最初の方だけ。違うのは、僕が女の子で鈴と手を繋いでることくらい。それだって、ドキドキしたりしない。多分、エロ犬と異世界の変態達のせい。変な状況に慣れすぎて、これくらいで焦らなくなっちゃってた。


「こころ、鈴、聞くパコ」


 そんな中で、手提げカバンの中に封印していたエロ犬が喋り出していた。人前で喋るなって言い聞かせてから簀巻きにしたけど、何か急いで伝えないといけないことができたのか。


「……もしかして、あの変態おじさん達?」


「違うパコ」


 即座に否定されて、ホッとする。この前倒したばかりなのに、また沸いてきたのなら、怒りのあまりおじさんたちの頭に除草剤でもばら撒いてたと思う。


「じゃあ何?」


「……つけられてるパコ」


 ただ、安心したのも束の間。

 つけられてる、誰かに。咄嗟に意味を理解できなかった。


「な、何で?」


「パコが思うに、片想いパコね」


「相手は男なの!?」


「そうパコ。因みにパコが、鈴ではなくてこころをずっと見てるパコよ」


 とんでもない事実を告げられ、身体が硬くなった。

 僕が、男に追いかけられてる? 意味がわからない、鈴の方が圧倒的に可愛い上に、そもそも僕は男なのに。


「……こころ、逃げる?」


 鈴からの提案に、即座に頷きそうになる。

 けど、もしかしたら何かの間違いかもしれない。エロ犬の頭が海綿体すぎて、鈴を見てるのを僕と勘違いしただけなのかも。


「ちょっと待って」


 鈴より僕に変な目を向けてくる奴がいるなんて、そんなこと認めたくなかったから。僕は、恐る恐る振り返った。すると、そこには確かに一人、ジーッと僕を見ている子が存在していた。


 でも、その子は変態さんじゃなくて、知っている男の子が、電柱の影からこっちを見つめていた。


「光くん!」


 思わず呼びかけると、ビクッと肩を震わせて更に電柱の奥に隠れてしまう。

 なんで?


「こころ、あの子は?」


「あの子は光くん。鈴がいない時に戦った変態おじさんに、一緒の部屋に閉じ込められた仲だよ」


「……例の、エッチをしないと出られない部屋?」


「エッチしなくても出られた部屋だよ!」


 鈴の雰囲気が、少し怪しくなっていた。無表情なのは変わらないけど、じとーってした目でこっちを見てる。フケツ、とその目が語りかけてきていた。


 なんで!?


「……パコリイヌ、本当にこころは処女のまま?」


「なんでそっちに聞くの!」


「メス堕ち、してない?」


「してるわけないだろっ!」


 とんでもない冤罪を掛けられていた。僕は光くんにおねショタエッチをした挙句、光くんに屈服させられてショタおね逆転エッチをされた、なんて鈴は疑ってる。


 あり得ない上に、半分くらい名誉毀損してる。訴訟したら、もしかしたら勝ってしまうかもしれない。それくらいの言いがかりを、鈴につけられていた。


「残念なことに、あの子は精通してなかったパコ」


「……本当?」


「パコがつくのは嘘じゃなくてマ◯コだパコ」


「……そっか」


 何がそうなのかは分からないけど、鈴は納得してくれてた。ムスッとしながら鈴を睨むと、口にチロルチョコを突っ込まれる。モグモグしたら、甘さが口いっぱいに広がって、ちょっとだけ落ち着けた。


 ……20円で買収された感があって、少し悔しい。


「光くん、ビックリさせてごめんね?」


 でも、落ち着けたから、電柱の後ろでしゃがみ込んでた光くんに優しく声をかけられた。目を白黒してるこの子を手を取って、立ち上がらせる。ズボンの膝下が砂埃で黒ずんでいたから、軽くはたいて綺麗にする。


「お、お姉さん。お久しぶり、です」


「そうだね、久しぶり」


 声を掛けると、光くんは緊張したみたいにオドオドしていた。……確かに、いきなり歳上の人に声を掛けられると緊張するよね。ちょっと失敗したかも、なんて思いながらも話を続ける。どうして僕を覗き込んでたのか、気になってたし。用事でもあったのかな?


「光くんは、何か僕に用事があったの?」


 光くんが怖いって思わないように、しゃがんで目線を合わせて問いかける。柔らかい雰囲気を出すために、ちょっと笑い掛けながら。


「あぅ」


「急いでないからね。お話したかっただけなら、それでも普通に嬉しいし」


「あの、その……」


 言葉に詰まってる光くんに、急かさずに耳を傾けて。



「……パコリイヌ、こころがお姉さんに目覚め始めてる。これは?」


「小さい男の子に、母性本能が刺激されてるパコね」


「……本当にメス堕ち、してない?」


「母乳くらいは出るかもパコ」


「……私を、小さな男の子にできたりしない?」


「こころが元に戻れた時に、ホモになるパコよ?」


「それは面倒」



 光くんは、言葉に迷ってるうちに段々と赤くなっていく。今日も暑いし、もしかすると熱中症になりかかってるのかな?


「光くん、大丈夫?」


 慌てて、手提げカバンから水筒を取り出した。鈴に借りた、なんかピンク色のやつ。カップに麦茶を注いで、光くんに差し出した。


「え?」


「水分取らないと、熱中症になっちゃうよ?」


 渡された麦茶と僕の顔を、光くんは何度か視線を往復させる。真っ赤になるのは止まらなくて、やっぱり熱中症の初期状態かもしれない。


「遠慮しなくて大丈夫だから。ね?」


「は、はい」


 光くんは、恐る恐る麦茶を飲んだ。顔は赤いままだけど、ちょっとはこれで良くなったかな?



「こころ、ショタを誘惑してる。間接キス……私だって、今週二回しかしてない」


「光くんも、あれは完全に堕ちてるパコねぇ。まさかこころに、ツンデレ系拷問リョナ幼馴染の才能だけじゃなくて、甘々系おねショタ魔法少女の才能があったパコとは……。二穴の如き深い慧眼を持つパコでも、気付かなかったパコ」


「……こころがおねショタに目覚めたら、困る」



「お姉さん、あのね……」


「うん」


 麦茶を飲んでから、光くんはゆっくりとだけど話し始めた。顔の赤みは引いてなかったけど、それでも少しは落ち着けたみたい。よかった。


「……変なの」


「変って、何が?」


 そう聞くと、また光くんは黙り込んでしまった。言いづらいことなのか、表現が難しい変なことがあったのか。うんと頷きつつ、光くんの言葉を待つ。


 すると、ゆっくりとだけど事情を話し始めてくれた。光くんが言いたい、変なことについて。


「お姉さんに助けてもらった日から、変わったことがあって……」


「うん」


「きっと、あのヘンタイのおじさんが、僕に何かしたんだと思うんですけど」


「うん」


「なんか、変なんです」


「うん」


「あの日から、オチ◯チンが……」


「うん…………うん?」


 光くん、今なんて言ったの?

 お賃金、家のお小遣いとかの話とか?

 純朴な光くんの口から、オチ◯チンなんて言葉が出るはずないし!


「勝手に大きくなって固くなるし、変な白いおしっこ出すし、お姉さんのことを考えるとムズムズしておかしくなっちゃいそうなんです!」


「!?」


 ……聞き間違いじゃなかった。光くんは確かに、オチ◯チンと言っていた。しかも、僕のことを考えると大きくなるとか言って。その事実に頭がおかしくなりそうで、思わず絶句する。


 けど、光くんは堰を切ったかのように話を続けた。


「変なおじさんが、僕にエッチな魔法をかけたんです! 何となく、分かってました。これ、僕がエッチな感じになってるんだって! ヘンタイなおじさんに、魔法を掛けられちゃったんです!!」


 泣いちゃいそうになりながら、光くんは目を潤ませていた。本当に困ってて、こんなの嫌だって言うみたいに。本気で悩んで、助けて欲しくて僕を探していたんだってことが伝わってくる。


 ……僕も、そういう風になって最初の時はそんな気持ちだったから、光くんの気持ちがよく分かる。咄嗟に、なんて伝えればいいのか、どういう風に言えば傷つけずに済むのかってことを考える。


 ──そんな最中のことだった。


「キミ」


 鈴がニュッと現れて、光くんのためにしゃがんでいた僕の背中にもたれ掛かってきたのだ。ビックリするけど、暴れたら鈴が怪我をしてしまいそうなので抵抗できない。


「は、はい」


 急に現れた鈴に、光くんは緊張を走らせながら受け答えする。そんな彼に、鈴は一言。


「それはね、エッチな魔法のせいじゃない。キミが、少し大人になったってこと」


「大人、に?」


「そう──素敵だなって思った人に、恋人さんになりたいよって身体が訴えてるの」


「す、鈴?」


 鈴は、僕に代わって説明をしてくれていた。悩ましく感じていた部分に対して、適切に言葉は選んでくれてる。ただ、伝える内容が、少し怪しかった。


 待ったを掛けようか迷っていると、鈴は僕の背中にもたれたまま、耳元で囁く。


「嘘を吐いたら、余計傷付く。だから、任せて」


 迷いのない言葉。それが心強くて、鈴が優しい女の子だと言うことも知っていたから、僕は一つ頷いて任せることにした。ちょっと内容が怪しくても、間違ってはなかったし。


「僕が、お姉さんを……?」


「そう、だからこのお姉さんを見て、恋人さんになってくださいって、オチ◯チンが告白してたの」


「下の口は、例え男でも正直パコからね」


 余計な茶々を挟むエロ犬を手提げ鞄に封印しつつ、変な汗が流れるのを自覚する。話の流れが、光くんが僕を意識してるってことになる。


 思わず否定したくなるけど、そうすると話がややこしくて収拾がつかなさそうで。口をつぐんだまま、成り行きに身を任せる。鈴、頼むからいい感じのところに着地させてねって祈りながら。


「でも、ごめんね?」


 潤んだ目で僕を見ていた光くんを前に、鈴はわざとらしく僕に絡みつくように抱きついて。


「このお姉さんは、私の大切な人だから」


 それだけ聞くと、勘違いしてしまいそうな言葉を口にしていた。ただ、光くんは目をまんまるにしてから、一言。


「──やっ、ぱり」


 潤んでいた瞳が、今度は泣きそうなそれに変わって、光くんはそのまま踵を返して走り出していた。


「ひ、光く──」


「こころ、ダメ。付き合ってあげる気がないのに、そんなことしちゃ」


 このままだと、光くんは泣いちゃうと思って。呼び止めようとしたけど、それを鈴に口を塞がれて阻止される。結局、呼び止められずに光くんは走り去ってしまった。なんだか良くわからない罪悪感が、胸の中でわだかまる。


「……鈴、助けてくれてありがとう。でも、素直な気持ちでお礼が言えそうにないよ」


「ごめん、こころ」


「ううん、こっちこそごめん、鈴」


 ちょっとした気まずさが、僕達の間に広がる。


 僕が困ってたから、鈴は助け舟を出してくれた。それは分かってる、実際に説明しにくい問題だったし。けど、あの光くんの泣きそうな顔が、何だか申し訳なく感じてしまって。


 もしかすると、エッチな気持ちを感じてしまって戸惑ってた光くんに、僕は勝手にシンパシーみたいなものを感じてたのかもしれない。だから、こんなにも申し訳ないのかな……。



 その後、僕たちは言葉少なく、二人でトボトボと家に帰った。鈴にも申し訳なくて、ひどく落ち着かないお出かけになってしまったことが、何だか残念でしかたなかった。






『このお姉さんは、私の大切な人だから』


 その言葉を聞いて、頭がわぁーってなって、気がついたら僕は走り出してた。


 このエッチな気持ちは、誰でもない僕自身のものだと知って。僕に対しては、あのコロコロ変わる表情を見せてくれないと分かって。……お姉さんに、恋人さんがいたのがショックで。


 色んな気持ちがごちゃごちゃしちゃって、訳がわからなくなって、気がついたら公園のブランコに座り込んでた。


「お姉さん……」


 口にすると、胸が苦しくなる。苦しいから、この気持ちが好きってことなんだって分かってしまう。助けてくれて、優しくしてくれて、カッコがエッチなお姉さんなだけなのに。少し一緒だっただけで、こんなになっちゃうのなんて、おかしいよ……。


「──力が、欲しいか」


 そんな気持ちで落ち込んでるところに、そんな言葉を掛けられた。びっくりした顔を上げると、いつの間にか隣のブランコに知らないおじさんが座っていた。


「だ、だれ?」


「どうでもよいことだ、そのような痴垢の如き詮索は」


 おじさんは暗い目をしてて、一目で怖い人だとわかる。いつもの僕なら、すぐに防犯ブザーを引いてた。……でも、今は。


「おじさんも、何か辛いこと、あったの?」


 僕も、多分一緒の目をしてると思うから、仲間だよねって思えて。このおじさんに、防犯ブザーは鳴らせなかった。


「……全ては遠い過去のことだ」


 おじさんは遠い目をして、呟いていた。でも、昔のことって言ってるけど、悲しい目をしてるから、きっと引きずってるんだと思う。……少し、可哀想なおじさんだった。


「……力って何?」


 気が付けば、おじさんの話を聞きたくなってた。きっと、僕に気を遣って話しかけてくれたんだって分かったから。


「魔法の力だ」


「魔法?」


 それって、この前のお姉さんみたいなモノなのかな? 


「え、エッチな人たちと戦う魔法のこと?」


 恐る恐る尋ねると、おじさんはニタリと悪そうな笑みを浮かべた。僕、もしかして悪党の怪人にされそうになってる?


「エッチな人と戦う魔法ではない。

 好いた人を取り戻すための魔法だ」


 好いた人、好きな人を取り戻せる魔法。……僕も、お姉さんに告白して、お付き合いできたりする魔法なのかな?

 思わず身を乗り出しちゃった僕に、おじさんは面白そうに笑って。


「──我と契約して、魔法少女になってみぬか?」


 そんな提案を、されちゃっていた。

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