第16話 お出かけしたい
「おい、エロ犬。なんで鈴は元に戻れて、僕は魔法少女のままなの? ハイレグで過ごすの、そろそろ慣れてきて嫌すぎるんだけど」
「やめるパコ、やめるパコ! パコを揺らし続けても、こころのおっぱいは揺れないパコ!」
「お前の脳みそを揺らしてるんだよ」
「パコの脳を射精させて、愛キューを2にしようとしてるパコか!? 狂ってるパコよ、こころ!」
「お前の頭は元々IQが2だし、早く狂って死んで?」
僕がクジラになった過去を封印した翌日。朝起きてすぐに、僕はエロ犬を尋問していた。内容としては、どうして鈴は普通に変身が解けて、僕はずっとこのままの格好なのかってこと。
好きな人とエッチしないと、元に戻れないんじゃなかったの? もしかして僕、エロ犬に騙されてずっとこんな格好してる?
そんな疑問に囚われて、早速エロ犬を拷問にかけていたのだ。早く吐かないと、このままだとこいつは本当に脳を揺らされて絶頂しかねない。キモすぎるので、そんな光景を見る前に答えさせなければならなかった。
「す、鈴、助けるパコ! このままじゃ、パコはこころにイキ殺されるパコ!!」
「勝手にイクな、一人で逝け!」
「聞いたパコか、今の言葉! こころの本性は、好きな人の精液を啜るサキュバスなんだパコ! ……まずいパコ、こころがサキュバスだと考えると、急に興奮が止まらなくなってきたパコね」
「するな、そんなの!」
リビングに現れた鈴は、僕たちを無表情で眺めてた。でも、その目は何だか興味深げだ。こころ、サキュバスなの? そんなことを、語りかけてきてる。
そんなわけがないんだよ、鈴!
「鈴、待って、違うんだ」
不倫の言い訳みたいな口上を言いながら、エロ犬を地面に叩きつける。あふんって声と一緒に、ビクビクと腰が痙攣するエロ犬。何なの、一体……。
「──鈴、ごめんパコ。君の大事な幼馴染とオーラルファックをしてたパコが、挿入しなきゃ犯罪じゃないパコよね?」
「パコリイヌ、こころにイカされちゃったの?」
「パコパコ」
うんうんだよ、パカパカとか言うな。というか、乱暴されて射精するな、キモいよ……。朝からどっと疲れる感じがして、何だかため息が出る。
最悪なことに、僕の朝は38歳男性国会議員を乱暴して射精させることから始まってしまっていた。バットモーニングすぎる、滅びればいいのに。
「こころ」
「なに、鈴」
「好きじゃない人を射精させちゃダメ」
「勝手にしてたの!」
鈴の言うことも、微妙にズレてる。能動的にそんなことしてないし、冤罪もいいところだ。
「鈴、気をつけるパコ。嫁がいるパコでもこの有様なんだパコ、本気になったこころが鈴をアクメさせにかかったら、本気で性奴隷にされるパコよ?」
「……なるほど」
「なるほどじゃないよ!」
顔を赤くして、変なことを想像してしまってる鈴。明らかに間違ってる。第一、鈴にそんな酷いことするわけないのに。
「こころ、私を性奴隷にするなら、先にお嫁さんにするのが筋」
「性奴隷になんてしないが!?」
「……お嫁さんにだけするってこと?」
「前提からおかしいよ!!」
どうしてマストで、鈴がお嫁さんになることが決まってるのか。鈴には選ぶ権利があるし、選べる立場だし。……それに、そんなこと言われ続けたら、僕が勘違いしちゃって困ることになるし。
「とにかく、僕にお嫁さんにするとかしてもらうとか、言っちゃダメ!」
少し大きめの声で注意すると、鈴はそれ以上言葉を続けなかった。……けど、少し視線が鋭くなって、むすってしてるのが伝わってくる。冗談に本気になったから、気分を悪くしちゃったかな。
「鈴、落ち着くパコ。まずはこころを堕とすところから、始めなくちゃイケないパコ。マ◯コの道も、一歩からパコ」
「でも、もう好感度、上がりきってる」
「それは鈴だけパコ、昨日のことを思い出すパコ」
ヒソヒソと鈴とエロ犬が話を始めて、少し疎外感を感じる。僕に言って許される、エッチな冗談とか話し合ってるのかな。……僕、もしかして、エッチなことに関して潔癖症って思われてる?
「昨日?」
「こころは確かにイッたパコ。"おじさんなんかじゃない、鈴が僕をイカせたくせにっ!"って」
「……聞いてたの」
「大声だから、聞こえたパコ。それで鈴、ちょっと言いづらいことなのパコが……」
「何?」
「TS魔法少女の魔法は、愛する人に絶頂させられるともとに戻る契約魔法パコ。つまりパコね……」
「…………私、こころの好感度、足りてなかったの?」
「そういうことになるパコ」
二人して、チラチラと僕の方に視線を寄越す。多分、潮吹きネタは厳禁とか話してるんだと思う。そんなの、誰に対してもそうで、クジラの潮吹きは実は愛液とか大嘘を言い放つくらいには許されてない。日常会話を、あまり舐めないでほしい。
「……ショック」
「自信あったパコか?」
「うん……」
「きっと無意識下では、鈴のことを大好きだって思ってるはずパコ。そうでないと、強がりなこころが快楽に身を委ねて潮吹きするなんてこと、起こり得ないパコからね」
「……そう、かな?」
「そうパコ。だからあとは自覚させて、こころとパコるだけパコよ、鈴」
「ありがとうパコリイヌ、少し元気出た」
「礼はいらないパコ。こころに射精させられて、賢者モードになってたパコからね」
「それ、気持ちよかった?」
「こころの暴力リョナエッチは、痛いのに気持ちよくて最高パコ」
「……結婚したら、DVリョナエッチ子作りすることになるのかな?」
「こころは好きな人には、ラブラブ和姦エッチじゃないと抜けなさそうな顔をしてるパコから、大丈夫パコよ」
「確かに」
「……ずっと二人で、何話してるの?」
長めに内緒話をされて、気になって話しかけてしまった。……別に、寂しかったわけじゃないよ。
「こころは、陵辱より和姦の方が絶対抜けると思ってそうだってことパコ」
「こころは純情だから」
「二人して何の話してるの!!」
「こころの性癖についてパコ」
「こころが童貞でも、大切な幼馴染」
「エッチ!」
鈴に軽くチョップして、エロ犬を蹴飛ばす。ヒソヒソ話の内容が、しょうもなさすぎる。なんでロクでもないことばかり、二人で意気投合しちゃうんだろう。
……恋人同士のエッチの方が、落ち着いて見てられるのは、確かにそうだけど。
「中々良いのが入ったパコね。そういう訳でこころ、女の子が魔法少女になるのは別に問題はないパコ。普通の変身魔法で済むんだパコよ。ただ、男の子がこの魔法を使うとバグって戻れなくなるんだパコ」
「流れを急に戻したね! ……ん?」
エロ犬の言葉を、改めて咀嚼する、こいつは今、女の子には正しく作動するけど、男の子にはバグって魔法が発動するって言った。つまりは……。
「欠陥魔法を僕に使ったの!?」
「欠陥じゃないパコ、仕様パコよ」
「どこがっ!」
「パコの性癖は、TS魔法少女だパコ。愛する嫁が居ながら、こころで射精してしまうのには理由があった、ということパコね」
「死ね!」
信じられないことに、こいつは半分くらい自分の欲望を叶えるために、僕を魔法少女にしていた。本格的に滅んでほしいし、エロ犬がTSして死ねばいいのに。
「でもパコは純愛主義者パコから、こころに手を出さないパコよ。そこは安心して欲しいパコ。こころの破瓜は、パコじゃないパコ」
「そこすら守られてなかったら、僕は今頃お前を始末する準備をしてたよ」
なんなら、今からでもこいつを始末してもいい気がしてきた。居ないと変態どもとの戦いで困りそうだけど、こう……精神的に。
「どうする? エクゾディアごっこでもする?」
「エクスタシーごっこ……エッチなことパコか?」
「お前の両手両足を切断して、各地に封印するの」
「パコの両手両足を切断して、オチ◯チンを奉納するとイッたパコか!?」
「そっちの方がいい?」
「イイ訳ないパコ! 再起不能、つまりは勃起できなくなるじゃないパコか!!」
そこが一番重要なのか、それで良いのか。
エロ犬にジトっとした視線を向けると、そっと鈴の影に隠れてしまった。流石に、こいつがいくらイカれてると言っても、封印されしパコリイヌにされるのは嫌そうだった。場に出したら勝ち確になる、究極のご神体になれるっていうのに。
「パコリイヌ」
「な、なにパコか、鈴?」
そっと鈴に持ち上げられて、パコリイヌはプルプルと震えていた。射精の時の震え方じゃない、本能的な震えみたいな感じ。鈴は無表情だけど、エロ犬は何かを読み取ったのかもしれない。
「五等分のパコリイヌ、きっとアニメ化されると思う」
「猟奇エッチアニメパコ!?」
「五等分にされたパコリイヌを助けるため、私とこころが全国各地を巡るアニメ」
「五等分にされたパコは!?」
「エクゾディア」
「チ◯ポが神社に祀られるってことパコか!?」
「パコリイヌを五つ裂きにしたラスボスは私」
「助けて欲しいパコ、こころ! このままじゃパコは、こころと旅の恥はヤリ捨てセッ◯スしたくて堪らない鈴にチ◯ポもがれるパコっ!!」
鈴の手元でガクガク震えてるエロ犬は、とても悲しい目をしていた。心が綺麗なら、助けようかって思うくらいに潤んだ瞳。それに僕は……。
「出雲大社あたりに本体を封印したいな、僕は」
「オチ◯チンで思考してるパコか!? もっと頭に血を巡らせて、脳みそを勃起させてから考えるパコ!!」
「お前の脳みそ、やっぱり海綿体だったんだね」
鈴と一緒に、エロ犬の封印場所を策定し始めていた。なんか、旅行の計画を立ててる時みたいで、少し楽しいね。
「ねぇ、こころ」
「ん、なあに?」
でも、結局エロ犬は封印されなかった。
ラスボスが鈴で、僕と戦う運命にある物語を、鈴がすごく嫌がったから。確かに、僕も鈴と戦いたくなんてないし、当然の帰結だった。ただ、その代わりに鈴は……。
「今から、私とお出掛けして」
そんな提案をしてきた。お出掛け、気分転換にはちょうどいいし、鈴に誘ってもらえるのなら断る理由なんてない。だから僕は、うんと頷いて。
「買い物?」
「ううん、デート」
その言葉に、僕はピシリと固まってしまった。
鈴はやっばり無表情だけど、真っ直ぐに僕の目を見つめて、逸らそうとしなかった。
その瞳は、不安と期待に揺れていた。
地方都市の地下深くにある建物、珍宝殿。NTR推進委員会の本拠地であるそこの監視室で、今日もモニター越しにおじさんの甲高い声が響いていた。
『ダメだっ、女子のフタナリチン◯ンが親友女子のおま◯こに吸い込まれて必死に腰を振り合う姿が尊すぎるっ。フタナリに共鳴して、我もおじさんからフタナリ女子にトランスジェンダーしようとしているっ! くそっ、射──』
おじさんの右手が加速していく中で、突如として見ていたアニメが切り替わった。そこはどこかの家の暗がりであり、そこで睦み合っているのは……二人の男だった。
『先輩、なにしてんすか! やめてくださいよ本当に!』
『暴れるなよ……暴れるなよ……』
『まずいですよ!』
『お前のことが好きだったんだよ!』
『いいよ、胸にかけて胸に!』
『ファ!?』
流れる映像作品に、先ほどまで見ていたフタナリレズアニメのことが頭から追い出される。あまりのショックに、チ◯コは悲鳴をあげて縮こまっていた。──射精は、なされていない。
『なんだこれは……たまげたなぁ』
あまりの惨状、画面が急にホモビに切り替わったことに、思わず呟いたおじさん。その様子に、モニター越しに見ていた男は満足げに頷いた。
「サブリミナル810システム、完璧な仕上がりだ」
掲示板の有志から齎されたこれは、映像作品の一番盛り上がって射精しそうなタイミングの場面で、内容をホモビデオに差し替えるといったもの。
これにより、NTR推進委員会の早漏の射精抑止が効率的に捗り、暴発率85%を誇っていた射精管理は、誤射率1.9%まで低下していた。もう少しの時間があれば、遂に彼らの魔法は発動される。
「私は私の正しさを証明し、貴様との淫縁に決着をつけるぞ──パコリイヌ」
怨敵の名を口にし、僅かに口元を歪めた。このまま行けば、自らの勝ちであると確信して。……但し、無論そう簡単に行くとはリーダーの彼も思っていない。パコリイヌは、何とかして介入してくるはずだと、その確信があった。
「NTR推進委員会の者たちは、既に射精管理体制に入り、容易に動かせば射精するだろう。ならば、何らかの代役を立てる必要があるのだろうが……」
口元に描いた笑みを消して、男は更なる思索と自慰に耽った。IQを下げることで、何か思いつくこともあるやもしれぬと、思考の転換を求めてのことだった。
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