6
おいおい、と口にしながら眉をひそめた根津が住井を見る。
「どうするんだよ、日付が変わるまで起きないぜ。コイツの隠蔽作戦に従って爆弾を解除してもらう手はずだろ」
根津は急に活力を取り戻したのか、立ち上がって肩をすくめて見せた。住井も負けじと立ち上がり彼とにらみ合う。そして間髪を入れずに言い返した。
「先に息の根を止めようとしていたアンタに言われたくはないわよ。そもそも根津はこいつを殺してからどうするつもりだったのよ?」
「2人とも落ち着いて」
一触即発の空気を見かねて木根が2人の間に入る。
「爆弾が解除できなくなったわけじゃないでしょ」
「何か計画があるの?」
住井は木根の言葉に被せて言った。その勢いに戸惑って木根は一歩引きさがりながら首を振った。
「特にないです。ですけど、古節が言ってたじゃないですか、爆弾の解除自体はできるって」
木根に言われて住井は記憶を辿った。確かにマーチを路上で強引に止めた古節がそんなようなことを言っていたことを思い出した。変なところで爆発されたら困る、その時にそう理由を言っていた。
「変なところに行けばいいのよ。爆発されたら困るような場所に」
「ああ、確かに――」
木根は住井のアイデアに手を打ち合わせた。そして彼は続けて聞いた。
「――その変なところと言うのは?」
住井は何も答えなかった。それ以上は何も考えていなかった。
「武器庫だよ」
代わりに根津が呟いた。
「武器庫?」
住井が怪訝そうに聞く。武器庫だよ、と根津は興奮した口ぶりで繰り返した。
「房緑組は他の組との抗争に備えて大量に武器や弾薬を密輸している。大藪によればそれらは基本的に一か所に保管してあるらしい。そんな武器庫で爆弾が爆ぜてみろ。大惨事になるが、房緑組にとっては大惨事どころではすまなくなる。せっかく集めた武器がオシャカになるし、大量に密輸していたことも隠し切れなくなる」
根津は一息にまくし立てる。目を丸くして頷きながらそれを聞いていた木根の横で、言い終わっても住井は怪訝な顔を変えなかった。
「どうやって武器庫に行くのよ?」
「それならいい考えがある」
したり顔で木根が住井に答えた。それから彼は一連の作戦を話し始めた。
「良いアイデアだが――」
木根の作戦を聞いた根津は頷きながら言った。住井も反対するつもりはなかった。
「――木根さん、あんた一体何者なんだ? どうしてここまでするんだ?」
「俺は俳優の木根鱒太だ。それに言っただろ、これは俺の仕事でもあるんだよ」
木根はそう言うと、電話を掛け始めた。
残された2人は顔を見合わせた。先に口を開いたのは住井だった。
「ヤクザ相手にはったりをかますなんて、うまく行くかしら」
彼女は電話を気にして声を抑えながら、冗談めかして肩をすくめる。
「何を心配してるんだ。最初にはったりを仕掛けたのは俺たちじゃないか」
「同じように引っ掛かってくれるかな」
「バレたら――」
根津は一度口を閉じた。住井に怒られるかも、と思い逡巡していたが、根津は代わりの言葉を思いつかず、諦めて口を開いた。
「――その時はその時だ」
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