第2話 いじめ?

日差しが強いのに気がつき、私は目が覚めた。昨日、あまり寝られなかったのに、少しは寝れたことにちょびっとホッとした。しかし、ホッとしたのも束の間。ある男の子の声がした。ま、まさか…。

「内野さ〜ん!起きてる〜?一緒に学校行こうよ!」

蓮斗だ…。向かい同士だからか、向こうの窓からちょうど私が見える。蓮斗は、ウィンクしていた。私は、体を起こして、蓮斗に見えるように頷いた。そして、その後にカーテンを閉めた。これからパジャマを脱ぐというのに、着替えを見られたらとんでもない。私は、なるべく早く着替えて、歯磨きをした。歯ブラシのシャカシャカシャカ、という軽快な音に心が躍る。朝食も、お母さんが作ってくれた美味しそうなシャキシャキの野菜が入ったサラダとふわふわのパンが美味しそう。私は、ジュルリ、とよだれが出そうになる。私は、サラダから口に頬張った。キャベツとトマトが、最高に美味しい。その後に、ふわふわの布団みたいなパンを口に入れた。パンが口に入ってきたと言われてもおかしくはない。そして、美味しさをゆっくりと味わいながら、食べた後。私はしまった、と思った。外から、

「内野さん、まだ〜?」

と、声がしたからだ。私は、バッグを持って家から外に出た。お母さんが、

「いってらっしゃい」

と、笑顔で見送ってくれる。私も、なるべく笑顔を作りながら、

「お母さん。いってきます!」

と、張り切ったかのような声で答えた。そして、私は玄関の扉を閉めた。玄関の前には、蓮斗が立っていた。蓮斗は、少しニヤニヤして言った。

「遅かったね。」

ニヒヒとした蓮斗の真っ白で綺麗な歯が、輝いて見える。私は、下を向いて蓮斗と一緒に登校した。きっと、女子たちは蓮斗と私が一緒に登校してることが気に食わない。どうせ、「調子乗ってるんじゃないの」「本当。一緒に登校するだなんて、頭おかしいの?」とか、散々陰口を言われるだろう。私はそのことを思い出して、蓮斗に見えないように顔を顰めた。そんなことも忘れたのか、蓮斗は私に聞いた。

「内野さんのこと、「葉恋ちゃん」って、呼んでいい?」

「えっ…」

私は、正直心配になった。私がもう一度顔を顰めると、それに気がついたのか、蓮斗が私の方を見て、慌てて付け足した。

「あっ…。女子たちのこと?大丈夫。僕が、「葉恋ちゃん」のことを守るからさ。」

そんなドラマに出てくるような言葉を言われて、私は少し顔がカアっと熱くなる。まるで、辺りに暖かい花が咲いたみたいだ。

「でっでも…。それを言ったら、「アイツ、何か蓮斗くんにしたんじゃないの。」とか、言われ…ます、よ?」

上手く話せなくて、外国人みたいな辿々しい言い方になった。なぜか私も、ここ最近ちょっぴり蓮斗のことが気になってきた。おまけに、敬語にもなっている。

「ははっ、クラスメイトなんだし、敬語はやめようよ。」

蓮斗は、少し笑って言った。それに釣られたのか、私も笑ってしまった。

「…うん。あの…。」

「葉恋ちゃん、何?」

蓮斗が、優しい口調で言ってくれた。私は、ものすごくホッとした。

「わ、私と、友達になってくれる…かな?」

蓮斗が、驚いた表情を浮かべる。そして、キラキラとした笑顔で、

「うん!友達になろう!」

と、元気よく答えてくれた。そんなやり取りをしているうちに、あっという間に学校に着いた。でも、もう怖くはない。私には、さっき「友達」になった、蓮斗がついてくれているから。私は、下駄箱で上履きに履き替え、学校内の廊下を歩いた。もちろん、隣には蓮斗がいる。2人で廊下を歩いていると、あっという間に教室に着いた。ドアは閉まっていて、中ではもうたくさんの生徒が登校してきている。私は、緊張でゴクリと唾を呑み込んだ。そして、勇気を振り絞って、ドアをガラン、と開けた。

「あっ、葉恋ちゃんじゃん」

「蓮斗くん…!おはよう!」

私の後ろにいる蓮斗の周りには、たくさんの女子が集まってきた。私は、それを避けて自分の席へと向かった。そして、バッグを置き、朝の支度をして座る。

「ねぇ…。もしかして、あの子と蓮斗くん、一緒に登校してきたんじゃないの…?」

「え…?まさか。蓮斗くんが、あの子と登校してくるわけないでしょ」

「そうだよ。華乃ちゃんも、前「一緒に登校しよう」って誘って、断られたのに」

「弱みでも握ったんじゃないの?」

「はは!あの子ならやりそう!あり得る!陰キャだもんね!」

やっぱり、陰口を叩かれた。しかも、私にまでハッキリと聞こえる音量で。私が、席を立ってトイレに行って逃げようとした時。

「はぁ…、やめなよ」

迫力のある声が、女子たちを追い込む。声の持ち主は、蓮斗だった。やっぱり、私のことを守ってくれている…?正直、胸がキュンとした。

「別に、僕が誰と登校しようが、僕の勝手でしょ。女子たちが僕のことを好んでいるのは嬉しいけど、他人の陰口を叩く人は、僕は好きになれない。」

「そ、そんな…。」

蓮斗の言葉に、女子たちはゴクリと唾を呑んだ。そして、

「だって…、葉恋のどこがいいの!華乃ちゃんだって、誘ったら断られたんだよ!華乃ちゃんにとって、葉恋はただの醜いブサイク!当たり前でしょ?!美人とブスで、誰がブスと仲良くするのよ?!みんな美人と仲良くしたり、付き合うでしょ?!」

クラスの有馬美祢という女子が、反論するかのように叫んだ。華乃は、

「ちょ、ちょっと…。私は、は、葉恋ちゃんのこと醜いとか思ってない!」

と、負けずにおどおどしながら叫んだ。前も言ったけど、華乃は、とても心の優しい持ち主。しかも、つい最近仲良くなった…。

「華乃ちゃんは、葉恋に味方するの?!もう、いいわ!じゃあ、華乃ちゃんは、失恋でもしなさいよ!その綺麗な顔と髪を、全てぶち壊しなさいよ…」

美祢は、そう言い終わってから涙を流した。そして、周りの女子が、美祢を宥める。そして、クラスの騒ぎ声に入ってきた、葵先生。美祢が泣いているのを見つけると、天にも届くような声で怒鳴った。

「誰が、有馬美祢さんを泣かせたんです?!犯人は、誰ですかっ!」

怒鳴り声にビックリして、私たちは一瞬固まってしまった。そして、美祢の周りの女子たちが…。

「私たち、見てました!華乃さんと、葉恋さんが…!美祢さんをいじめて、泣かせたんです!」

は……?テキトーな言いがかりをつけられて、私と華乃は固まった。蓮斗も、絶句している。

「華乃さん、葉恋さん。…後で、職員室に来なさい」

「……は、はい。」

私と華乃は、同じタイミングで頷いた。蓮斗は、黙ってから言った。

「先生、僕も行きます………。僕も、見てました。……美祢さんが、怒鳴ってたことを」

こうして、蓮斗もついてきてくれることになった。そして、3人で職員室に行って…。そこには、怖い顔をした、葵先生が立っていた。

「では…。なぜ、美祢さんを泣かせたのか話してください。」

蓮斗は、初めから終わりまで、全てを話した。そして、それを聴き終えた葵先生は…。

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