恋愛マスター「翠月」様のお通りです!

星尾月夜

第1話 恋愛は

この世の中では、よく恋愛がどうとかこうとかの話をよく聞く。それをずっと見たり聞いてきた私は中学2年生。最低でも恋愛を意識し始める頃。私の名前には、「恋」という字が使われている。私の名前は、内野「葉恋」で、いわゆるキラキラネームだ。ちなみに、「はれん」と読む。流石にテレビでは恋愛がどうとかは言われない。恋愛運がどうかならよく聞くけど。でも、タレントが恋愛とかの話は聞く。まぁ、これはおいておいて。クラスでも、恋バナとか色々恋愛系のことが流行っている。もちろん、モテる人とモテない人もいる。私は、正直恋愛とか興味ない。しかし、恋愛に少し芽生えたのは、今日のこと。クラスメイトの水野蓮斗。同じ吹奏楽部、同じトランペット担当で、爽やかなイケメン風な子。私は正直興味は無いけど、女子からも男子からも大人気。いつも、クラスに蓮斗を見にくるような先輩や後輩もいるくらいだ。クラスでは、蓮斗が笑うたびにみんなが振り返る。そして、一緒に笑う。これは、いつものことだった。

「蓮斗くん、おはよう!」

「おはよう〜!」

今日の朝。先輩後輩の女子たちが、蓮斗に元気よく挨拶をしにきた。時には、ぶりっ子みたいな子と、自称天然もいる。その度に、蓮斗はうんざりして、ため息を吐く。

その様子を見た周りの女子が、フッと笑う。そして、

「うわ〜、あの子、絶対嫌われた〜!これで、ライバル減るんじゃない?」

「本当〜!早くみんな嫌われちまえ〜!」

と、陰口を叩きまくる。もちろん、ギャルもいるわけで。たまにギャル語を使う人も出てくる。女子はみんな、蓮斗に好かれようと日々努力をしている。そんな蓮斗が、学校では陰キャの私に話しかけたとき。

「内野さん、おはよう。」

私は、ギクっとした。でも、すぐにこう返した。

「お、おはよう」

私と蓮斗は、やっぱり異性同士。あまり関わったことはない。私が、家とか独り言では勝手に呼び捨てで呼んでいるだけ。学校で話すときは、ちゃんと「水野くん」とか、「水野さん」と呼んでいる。辺りを見渡すと、蓮斗を狙っているたくさんの女子が、私と蓮斗が仲良くならないように見張っているのか、私たちをじっくり観察していた。でも、挨拶の言葉を交わしただけでは恋愛関係にはならない。みんな、私が蓮斗と離れるのと同時に、違う方へ行った。やっぱり、大体の女子は蓮斗にしか興味が無いようだ。私は、人に聞こえないようなため息を漏らした。もう、授業が始まる頃だ。担任の先生、田中葵先生は、結構美人な先生だ。少し厳しいけど、私たちにとって大切な存在。今、そんな葵先生が黒板の前に立つと、ホームルームの時間が始まった。

「えー、今からホームルームを始めます。朝の時間は、文化祭のことです。他校からも来ますので、念入りに、丁寧にやっていきましょうね。まずは、文化祭でやること!2年1組でやることは…。」

みんな、唾をゴクリと飲んだ。クラスごとの文化祭は、校長先生と担任の先生が話し合って決めるのだ。

「コスプレカフェに決まりました〜!」

葵先生がそう言った瞬間、喜ぶ声とガッカリする声で分かれた。きっと、女子のみんなは蓮斗がコスプレしている姿が見えるから喜んでいるのだろう。男子は…。この学校でも、美人な子は存在する。その名も…、宮瀬華乃。伝説の美少女とも言われるくらい、美人な子。髪の毛は、絹糸みたいに滑らかで、目もキラキラしていて…。印象は怖いかもしれないけど、すごく優しいと言う噂…。実は、その宮瀬華乃も、私たちのクラス、2年1組にいる。私の前の席の子。つまり、クラスには美男美女がいるということ。みんな、この2人が付き合っちゃえば?というけど…。蓮斗は、そこまで

華乃のことが好きではないみたい。でも、なぜクラスの男子は宮瀬華乃のコスプレは見れるというのに、ガッカリしているのか。それは…、華乃は蓮斗のことが好きで、クラスの大半の男子が華乃にメロメロ。華乃が、余計蓮斗のことが好きになったら、もう男子は勝ち目がないから。絶対大半の男子には振り向かない。私が、このようなことを考えていると、葵先生が通るような声で言った。

「各自が何にコスプレするかは、もう校長先生と決めてあります!あとで、表を出すので自分のコスプレ衣装を揃えてきてくださいね!」

これはもう、絶対女子はまず表の蓮斗のところを見るだろう。葵先生は、紙をクラスの掲示板に貼った。女子たちは、その表に釘付け。まともに葵先生の話を聞こうともしない。そして、そんなことをまた考えながら、休み時間になった。表の前には、みんなが集まっていて、見づらい。私は、後で見ることにした。しかし、女子たちのある声が聞こえた。

「ねえねえ、蓮斗くん、王子様のコスプレやるらしいよ!」

「え、マジ?絶対見なくちゃ!」

「キャ〜!白馬の王子様〜!」

話によると、蓮斗のコスプレするものは王子様とのことだった。これは絶対、大半の男子たち勝ち目ないな。私は、少し笑ってしまった。人が少なくなってきたとき、私は表を見て、私が何をやるのかを確認した。…え…?私は、一瞬目を疑った。え…、何で…?実は、私、「お姫様」のコスプレをやるらしい。しかも…。蓮斗が王子様だから…。2人で、なんかやるってこと…?よく見れば、女子たちが私のことをじっと見つめている。華乃も、私の方をずっと見ている。相変わらず、まつ毛が長くて美人だなぁ。そう思った。女子たちは、私の視線に気がついたのか、ヒソヒソした声で話し出した。

「ねぇ…。内野さん、お姫様なんだってよ。」

「えぇ〜!蓮斗くんと、全っ然釣り合わないじゃない!」

「本当、何で…」

私の陰口…。私、まさか嫌われた…?

「私なんか、ただのお姫様のメイド!本当に何なの?!」

「私もメイドなんだけど!」

女子たちの怒ったような声が、私にはよく聞こえた。頭が真っ白になって、頭がパニックになっている。隣の席の蓮斗は、顔色が悪い私のことが心配になったのか、私の顔を覗き込んだ。そして、

「内野さん…。大丈夫そう?」

と、優しいような、不気味なような声で聞いてきた。私は、もちろん

「うん」

と言い、そこで会話は途切れた。女子たちのヒソヒソ話も、私の耳にははっきり聞こえる。私は、一日中1人で耳を塞ぐことしかできなかった。そして、学校も終わり、帰り道に蓮斗に呼ばれた。蓮斗と私の家は向かい同士。だから、ほとんど帰り道全部が蓮斗との会話。話は、女子たちのことだった。

「内野さん…。大丈夫そう?」

さっきと全く同じ言葉を言っている蓮斗の目には、光が少なかった。

「実は女子たちが図々しくて…、しつこいんだよね…。「私と仲良しになって」アピールが生理的に無理。」

そう淡々と語る蓮斗。私は、まじまじと蓮斗を見つめた。辺りは静かで、人がこの世に存在していなかったんじゃないかって思うくらいだ。

「そのせいで、内野さんが女子たちにヒソヒソ言われたり………。もう、うんざり。」

私は、蓮斗がなぜこの話を私にしているか分からなかった。私に話して何の意味があるのだろう。解決してほしいということ?

「こんな話でごめんね。」

蓮斗が言った後、家に着くまでずっと沈黙が続いた。家の中に入るときだけ、

「…じゃあね」

「うん」

と、言葉を交わしただけだった。私は、学校での女子たちのヒソヒソ話が頭から離れなかった。悪夢にも魘され、なかなか眠れない夜だった。

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