第7話 なのちゃんはストーカー?
朝の夜明けとともにまた新たな日が訪れる。私はあくびをしながら駅へと向かっている。学校との距離が結構離れているため朝にあまり余裕がない。そのため、早寝早起きを怠るとほぼ確実に寝坊して遅刻確定になってしまう。私としては別に問題はないが妹の桃が私よりも早く起きるようになってしまったのでそこだけが心配である。
私のこと気にしないで自分のしたいことをしたらいいのに。でも、そしたら私があらゆる意味で終わってしまう気がする。もちろん深い意味で。
嫌な予感はする。昨日のことが原因で桃が積極的になってしまうかもしれない。学校ではなのちゃんからの誘惑、家では桃からのアプローチ。想像しただけで甘すぎて胸焼けのような感覚に襲われる。
「私の心が耐える気がしない…大丈夫かな…?」
私はこれから起こりそうなことに悩みながらも駅へと向かっていった。
あれから一時間が経ち学校の最寄駅に着いた。階段を上り改札口の方へと歩いていく。朝の通学、通勤の時間ということもあり人混みで溢れている。そんな人混みの中を歩くのは慣れる気がしない。人混みの中にいると気分が悪くなってくる。匂いとかではなく単に雰囲気で気分が悪くなってしまう。
気分が悪くなりつつも改札口を抜け、学校の方向に向かって歩いていく。今日も今日とて一人で登校している。なのちゃんに会えればいいんだけど私が着く頃には既に教室の中にいるので難しいと思う。いっそのこと誘ってみればいいのかもしれないが私にはそんなことは出来ない。出来ていれば今頃友達が出来ているだろう。
友達がなのちゃん以外にいないことを気にしたってしょうがない。今はなのちゃんがいるからそこまで友達がほしいとは思わない。誘惑だってしてくるけどきっと一週間も経てば誘惑もなくなるだろう。なくなったらなくなったらで少し物足りないというか寂しい、そんなことを思うと思う。
桃とは違う良さというかそんなものがある。両者とも同じくらいの身長で私より少し低くて小さくて可愛い。桃は少しツンデレっぽさがあるが頭を撫でたりしたら幼児退行並に甘えてくるようになる。なのちゃんは小悪魔で、激甘ボイスで人を駄目にしてくるような子。かわいい。妹にしたいくらいかわいい。
「えへへ……なのちゃんかわいい…!」
「呼んだ?」
「えっ…?」
なのちゃんのこととかを考えているせいか後ろからなのちゃんの声が聞こえてくる。幻聴かと思ったが妙に現実味がある声質に私は思わず後ろに振り向く。
すると、そこにはいつもの小悪魔的な表情を浮かべたなのちゃんの姿があった。噂をすればなんとやらというものなのかもしれないがあまりにもタイミングがいい気がするのは何故なのだろうか。気がつけば姿を現し、目を閉じれば消えている。神出鬼没というかなんというか。
私ってストーキングされてたりするのかな。私をストーキングしたってあまり楽しいとは思えないけど。
「なのちゃんってストーカーだったりします…?」
「ちがうよ?偶然にもましろちゃんの姿が前にあったからだよ」
なのちゃんは小悪魔的な表情のままそう言葉を放つ。不自然な気がするのはきっと気のせいではないと思う。桃のことだってあったし現実は何が起こるのか不確定でわからない。だからこそ、なのちゃんの言葉をそのまんま信じてはいけないと思う。
「ほ、ほんとう…ですか……?」
「ホントだよ?……見てるだけだから…」
言葉の最後に何かボソッと呟いていた気がするがあまりにも小さくて聞き取ることが出来なかった。だけども、なのちゃんがストーカーじゃないということがわかっただけでも落ち着くことができる。人に見られてるかもしれないって思うだけで気が動転してしまうから。
「とりあえず一緒に学校行こっか」
「は、はい…!」
誰かと一緒に投稿できるなんて思いもしなかったから嬉しさのあまり声のボリュームが大きくなってしまう。なのちゃんは微笑んでいたけども私は羞恥心のあまり俯いてしまった。
いつもより学校に来るのが数分遅くなってはしまったものの一人で登校するよりかは何倍も楽しかったので気にしない。早く来たところでなにかするわけでもないしすることもない。なのちゃんと少しでも多く一緒にいられた方がいい。
私はそんなことを思いながら昨日と同様に手をニギニギとされている。ニギニギされるのに問題はないが少し変な気持ちになってしまう。まるで昨夜のあの気持ちと似ている。
一体どうしてしまったのだろうか私は。
色々と考えているとなのちゃんが私の耳元に近づいてくる。心臓の鼓動が今までに感じたことのないほどにドクンドクンとしている。昨日までは感じなかった異常に私は脳が麻痺ってしまうような感覚に襲われてしまう。
「……昨日はスゴかったね…?」
「……ん…!?そ、それってどういう意味…!?」
「……内緒♡」
なのちゃんの照れているような表情に私は羞恥心とともに岩のように固まってしまった。
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