誘惑

第4話 すごいこと

 休み時間が終わり授業が始まるがあれからなのちゃんの様子が少しおかしい。原因は私にあるがそれでも流石におかしい。もしかしたら今の状態が普通なのかもしれないけど。


 「なのちゃん今授業中です」


 「そうだね〜」


 なのちゃんは何故か私に視線を向けている。私の方見ないで授業に集中してほしいけど少なくとも今週中はずっと続くと思う。何せ今週はガイダンスだったり、来週からは二者面談だったりとあまり授業といった授業はない。


 だからといってずっと見つめてくるのはどうかと思うけど。


 私はなのちゃんの視線に耐えながらも前を向き授業に集中する。見られているということに少し羞恥心を感じる。


 「今はやめて」


 「わかった…後でもっとすごいことするね?」


 「……っ!」


 すごいことってなんだろう。それがとても気になってしまいとてもじゃないが授業に集中できる気がしない。


 なのちゃんの方を見てみるが私の言葉をきいたのか既に前を向いている。案外物わかりがいいことに驚いているが何よりあの言葉が離れない。一体何をされるのだろう。


 なのちゃんは私と同じくらいの身長なのに雰囲気がちがう。どこか年上らしさがあったり、また年下らしさがあったり。そんな彼女に囁かれ誘惑されたら誰もが一瞬で駄目にされてしまうだろう。


 だけど私は誘惑には決して負けない。何せ私は桃の唯一の姉なのだから。








 今日の授業が終わり教室から人がいなくなる。そんな中、座っている私の上にはなのちゃんが座っている。


 ただ私の上に座っている分には問題はなくはないが、その方がまだマシなのかもしれない。はたから見たら私たちは特段と仲の良い友達か恋人に見えると思う。


 「ましろちゃん顔赤いよ…?」


 「〜〜〜っ!」


 私となのちゃんはお互いに向き合っている。よく百合とかで見るようなそんな感じのあれ。今まで桃以外の子を上に座らせたことなんてなかったというか今のこの状態は別に私が座らせたわけじゃない。どちらかというと、なのちゃんが私の上に座ってきたのだ。




 授業が終わり休み時間が再び訪れる。私はてっきりなにかされると思って少し期待、いや別に期待なんてしていない。キスされるとか、押し倒されるとかそんなこと期待なんてしてない。嘘とかではなく本当に期待なんてしない。桃相手にそういったことを考えたことがないから絶対にありえない。


 そういえば朝起きたとき何故か裸になってるときがあるけどなんでなのだろうか。着ていた服は毎回丁寧に畳まれて横に置かれてるし。もしかして私が寝ぼけて服を脱いでしまったのかな。だとしても寝ぼけてるときに服なんて畳めないし。


 考えれば考えるほど終わりがない迷路を彷徨っているかのような感覚に陥る。考えたって仕方がないので考えるのをやめようとするがふと一つあることが思い浮かんでくる。


 もし裸になってる原因が私じゃなくて他の誰かにやられてるとしたら?


 そんな疑問が頭の中に浮かんでくる。仮にそうだとして一体誰が私のことを裸にするのだろうか。親は絶対にありえない。帰ってきた瞬間、ご飯も食べないですぐさま寝室に向かってしまうのだから。


 だとしたら桃が?いや、今はこれ以上深く考えるのはやめよう。直接本人に聞けばいいだけだし。


 私が考えている最中なのちゃんは一時間前と同じく私の手をニギニギとしている。それだけならまだしも手の甲に口づけをおとしながらニギニギしている。


 「なのちゃん…!な、なにして」


 「これくらい普通のことだよ〜?」


 なのちゃんは小悪魔的な表情でこちらを見つめてくる。こんなこと友達同士じゃ絶対は言いけれないけどほとんどしないことだと思う。ましては昨日初めてあったばかりの相手。本当に誘惑しているのだろう。


 だけど、私は決して誘惑には負けません。



 そんなこともあり私は今この状況が生まれている。簡単に言うと、私が流されただけです。いつの間にか手をニギニギされていたのと同じで、いつの間にかこの状態になっていました。ごめんね桃、流されやすいお姉ちゃんで。


 「ましろちゃんこっち向いて?」


 「ほ、ほんとうに恥ずかしいです…!」


 「ほ〜ら!」


 なのちゃんは背けていた私の顔を強引にを正面へと向けさせる。正面へと顔を向けさせられたので目の前にはなのちゃんの顔がある。私は背けたくてもなのちゃんがそれを許すわけもなく。


 「ねぇ、ましろちゃん。これから何されると思う…?」


 「な、なんで顔近づけてくるんですか…!?」


 「どうしてだと思う?」


 なのちゃんは徐々に顔を近づけてくる。言っていることを考えるとこれから私は無理やり初めてを奪われるのだろうか。


 鼓動がドクドクと鳴っている。気づけばお互いの吐息が交わるほどの距離になっていた。


 私はこの後されることを考えながら静かに目を閉じた。

 


 


 

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