第56話

 ポイズンゾンビの動かない亡骸を聖なる腕輪オルゴーの中に収納すると、俺はすぐにその場から立ち去った。


 それからの探索でもポイズンゾンビレベルのアンデットモンスターと遭遇することがそれなりに増え始めた頃、交易都市ナバーラのスラム街と呼べるような場所にたどり着く。


 「凄いいるな。」


 『ここはナバーラのスラム街だったかしら?アタシの生前の時に近寄らないように注意された記憶があるわね。』


 今にも朽ち果てそうな外観の石造りの家が立ち並んでいる。その中にはどうみても風通しの良い欠陥住宅のような家もチラホラと見受けられる。


 それにレベル2以下の低レベルアンデットモンスターが大量にいると魔力感知スキルで感じ取れてしまう。


 ここからは大量の聖気を使用して何度も聖気ブレスを使う必要がありそうだ。


 今現在の自分や聖なる腕輪オルゴーの魔力や魔導具の魔力の残量を確認してから、俺は大量のアンデットモンスターが潜んでいる交易都市ナバーラのスラム街の探索に動き出した。


 「もう来るか。頼んだぞ、エリーゼ。」


 『聖気は任せなさい。』


 エリーゼには聖なる腕輪オルゴーを使った魔力と聖気の変換を頼むと、俺はこちらに向かって来る大量のアンデットモンスターを迎え撃つ為に魔力ブレスの手甲を向けてこちらからも距離を詰めて行く。


 「1、2、3、ここだな。」


 タイミングを見計らって俺は聖気ブレスを弱いアンデットモンスターたちに向かって発動する。


 魔力ブレスの手甲から放たれる聖気の粒子が一気に前方へと向かって扇状に広範囲に広がっていく。


 瘴気が蔓延しているスラム街の影響もあって広範囲に広がっていく聖気ブレスの効力は落ちてしまうが、それでもかなりの数のアンデットモンスターが苦しみ悶えて動きを止めた。


 それでも中にはレベル3以上のアンデットモンスターもおり、自身の身体に纏っている瘴気もあったことで幾らかのダメージを受けているアンデットモンスターもいるが、それでも多くのアンデットモンスターは聖気ブレスを受ける前と同じくらいに動いて俺の方へと向かって来ている。


 そんな動けるアンデットモンスターたちを引き付けながら、俺はもう一回聖気ブレスをアンデットモンスター全体に向けて発動した。


 2度目の聖気ブレスは1度目の時に浄化された瘴気がないからか、より広範囲に威力を保ちながら多くのアンデットモンスターを浄化していく。


 1度目で苦しみ悶えて動けなくなっていた2レベル以下のアンデットモンスターは、2度目の聖気ブレスを受けて完全に全身を浄化されて魔石などのドロップアイテムへと姿を変えた。


 レベル3以上のアンデットモンスターでも完全に瘴気もない無防備な状態で受けた聖気ブレスに全身を浄化されて倒れるアンデットモンスターが続出する。


 これでもまだ生きているアンデットモンスターはいるが、それよりもスラム街の奥から次々に向かって来ているアンデットモンスターへの対処をする方が優先だろう。


 それに今の生きているアンデットモンスターももう一度聖気ブレスを浴びればそのまま動かなくなるはずだし。


 エリーゼが用意した聖気を魔力ブレスの手甲に送りながら、どのタイミングで聖気ブレスを発動したようかを考えながら手甲を構える。


 ここだと言うタイミングで聖気ブレスを浴びせかけると、俺は聖なる腕輪オルゴーの中からドロップアイテムの回収を行なう道具を取り出した。


 次に聖気ブレスを発動した時に回収道具を起動させる準備を行なうと、俺は聖気を魔力ブレスの手甲へと移動させていく。


 そうして移動させた聖気を使って発動した聖気ブレスが、まだ生き残っている低レベルのアンデットモンスターや瘴気を剥がされているアンデットモンスターに向けて放たれるのだった。

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