第55話

 「まだ集まってるのか。」


 昨日の夜にも集まって来ていたアンデットモンスターを倒したのにも関わらず、朝起きたらまた教会の入り口や上空周りには聖なる結界に阻まれたアンデットモンスターがうようよしていた。


 「エリーゼ。結界の耐久力はどれくらい持つ?」


 『まだ持つわよ。大攻勢でも掛けられなければだけどね。』


 「それなら一応だけど耐久力の回復をして置いてから朝食にするか。」


 聖なる結界の要になっている地下室の聖具大十字架へと聖気を流して聖なる結界の補強を行なってから朝食を食べ始めた。


 朝食を食べながら俺はエリーゼと今日の探索をどうするのかを話し合う。


 「エリーゼは何処を探索した方が良いとかあるのか?」


 『中央の貴族街以外ね。そこが瘴気の発生源だと思うから。だから、今のうちに他の場所を周りましょう。』


 「なるほどね。」


 今日の探索をどうするのかを決めた。今日はまだ回っていない街の中の探索を行なおうと思う。


 でもその前に聖なる結界に集まって来ているアンデットモンスターたちを倒していかないといけない。


 幸いなことにレベル3が最高レベルのアンデットモンスターを倒し終わるのにそれほど時間は使わなかった。


 「それじゃあ出発だ。まずはこっちから行くぞ。」


 エリーゼの案内で一直線に教会に向かったせいで探していない場所の多い交易都市ナバーラ内の探索を行なっていく。


 遭遇するアンデットモンスターが今のところはレベル3以下のアンデットモンスターばかりで、聖気1つ分で生成された六発の聖気の弾丸を1発でも頭部に命中させれば一撃で倒せる。


 家の中まで探していくが、まだ付喪神系のアンデットモンスターとは遭遇しない。


 やはり貴族街の物品が瘴気に侵されて付喪神系のアンデットモンスターになってしまったのだろう。


 「おっ、この家にはアクセサリーがあるな。」


 『住民たちも含めてナバーラの者は逃げられなかった者が大勢いるようね。』


 ここまでの家の中の探索では金属製の物が錆びてたりもしているがそれなりの数が集まっており、その過程で金銀銅の硬貨も集まっていた。


 どの硬貨もお金として使える物だとエリーゼからお墨付きをもらったが、実際の町まで行って使ってみないと本当に使えるのかは分からないだろう。


 それにまだ一般の市民が暮らしている家や店しか回っていない。これからいずれ向かう貴族街や貴族や富豪が買い物をする店にはもっと希少な物があるかも知れない。


 そんな事を考えながら歩いていると、こちらに向かって来ているゾンビ系のアンデットモンスターを視認した。


 『レベル4のポイズンゾンビよ。』


 「ちょっとレベルが高いな。」


 身体から瘴気を放出しながら向かって来ているポイズンゾンビに向かって、俺は魔力銃の銃口を胴体に向けて引き金を引いた。


 回避しようとするポイズンゾンビの胴体に聖気の弾丸が命中する。これが一撃狙いなら外れていたかも知れないが、命中面積の多い胴体だからこそポイズンゾンビに聖気の弾丸が直撃する。


 ごっそりと体内の瘴気が聖気の弾丸を受けて浄化されたことで、ポイズンゾンビの動きが先ほどまでと比べて鈍くなった。


 身体を纏う瘴気の量も減っており、このまま動きが鈍くなったポイズンゾンビを倒すのに、俺はポイズンゾンビに向かって駆け出していく。


 今のポイズンゾンビからの攻撃なら受けることはないだろうと判断したからだ。


 ポイズンゾンビとの距離を詰めればポイズンゾンビが口を大きく開いて毒の息を吐き出した。


 「そこまでないか。」


 冷静に毒の息の効果範囲を見極めて距離を毒の息から取りながらもポイズンゾンビに接近していく。


 毒の息が見た目が毒だと分かりやすい毒々しい紫色をしていたからこその判断だ。


 そして、ある程度の距離まで接近した俺はポイズンゾンビの頭部に向けて銃口を向けて引き金を引くのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る